門兵の仕事(2)
そもそも、門兵の仕事は、3交代制である。
早番:朝5時〜昼2時
中番:昼1時〜夜10時
遅番:夜9時〜6時
労働時間は8時間、休憩1時間で拘束時間は9時間になる。7名で1チーム、早番→中番→遅番でローテーションを組んでいる。6日勤務、1日休暇が基本だが、遅番→早番の時だけ、時差調整のため、2日休暇が入る。
ちなみに、王都の門は、2種類ある。一般の民が出入りする“一般門“と呼ばれる門。この門は、北門と南門の2ヶ所ある。そして、商人が出入りする“商門“と呼ばれる門。この門も北門と南門の2ヶ所ある。“一般門“と“商門“は少し離れて設置されていて、それぞれで、“入都者(王都に入る者)“と“出都者(王都から出ていく者)“をチェックしている。
早番の時は、それぞれの門を朝6時に開けて、出入りのチェックを開始する。中番の時は、夜7時で出入りのチェックを終了し、それぞれの門を閉める。その日1日の出入りを早番の分と合わせて集計し、管理部署に報告する。そして、遅番の時は、王都の周りを囲っている壁“都壁“にそって、巡回し、巡回報告をまとめて、同じく管理部門に報告する。門兵による“出入りチェック“は、昼夜を問わず行われている。
今日もハルは、中番で“商門“での“出都者チェック“を行なっている。
「あれ、ミーシャさん。こんにちわ。お出かけですか?」
「やぁ、ハル。カスリアルトまで“前塩“の買い付けにな。」
「カスリアルトですか。遠いですね。そういえば、お仕事、慣れましたか?」
と話しながら、“出都“に必要な書類を受け取り、目を通す。
「あぁ、だいぶ慣れてきたよ。ほんと、ハルには、いい仕事を紹介してもらったよ、ありがとうな。それにしても、あの先生様、だいぶ変わっているな?腕の方は確かなようなんだけどさ・・・。」
「大変そうですね。」
「私は楽しくやっているがな。まぁ、私より、“お嬢“の方が大変だと思うぞ?」
「ヒナミですか?いやぁ、彼女も彼女なりに楽しんでいるんじゃないですかねぇ。」
「そうかぁ?まぁ、そうかもしれんね。」
ミーシャは、お嬢ことヒナミの日々の行動を思い返し、“クスリ“と笑った。
「はい、書類の方は問題ないですね。では、道中お気をつけて。」
「あぁ、ありがとうな。じゃ、行ってくるわ。」
ヒナミというのは、ハルと同郷、ラベンドアール辺境伯領での幼馴染で、一緒に“天啓の儀“を受けている。以前、ヒナミから仕事が忙しいだの、大変だのと聞いていたので、それなら、ということで、あることがきっかけで知り合った、“一画“を根城にしていたミーシャを紹介したところ、ヒナミと“先生様“ことフリージア薬士に気に入られ、フリージア薬士が営む薬店で働くことになったのである。多少、出自が怪しかったが、幸いにも錬金の術があったのが良かったらしい。ヒナミはミーシャから“お嬢“呼ばわりされるのに抵抗があるらしいが、ミーシャはそこも楽しんでいるようで、ヒナミのことは気にせず“お嬢“と読んでいるらしい。それに乗っかったのか、フリージア薬士も“お嬢”と呼ぶようになったとか。ヒナミはいつの間にか、お客からも“お嬢“と呼ばれ、看板娘になったようで、薬店も繁盛しているようだった。
「良かったね、ヒナミ。ミーシャさん。」
ミーシャの後ろ姿を見送りながら、そう呟く。それに気付いたのかどうかは定かではないが、ミーシャが右腕を上げた。
「さぁ、仕事、仕事っと。はい、次の方、お待たせしました。どちらに・・・」




