天啓の儀
パンズール王国では、5歳になる年の最初の日に、名付けの教会にて“天啓“として職業と属性が授けられる“天啓の儀“が行われる。そして、その“天啓の儀“が今日なのである。
「ハルくん、いよいよね。」
「うん、僕も剣士になれるかなぁ。」
「そうだなぁ、俺やフィレスが剣士だから、ハルもきっと剣士になれるよ。」
「うん、お姉ちゃんと同じがいい。」
「大丈夫、きっと私と同じよ。」
教会には、ハルを含めて、10人の子供が集まっていた。一人ずつ名前が呼ばれ、壇上に上がる。壇上には、司教がいて、司教の前で片膝をついて、顔の前で両手を組み、祈りを捧げる。司教が詔を唱え、子供の頭に手をかざすと、その手が輝き、“天啓“が降る。“天啓“を司教が代弁することで、その子供の属性と職業が知らされる。
いよいよハルの名前が呼ばれた。他の子供と同じように、壇上に上がり、司教の前で祈りを捧げる。そして、“天啓“が降る。
果たして、ハルに降された“天啓“は、
職業:魔術師
属性:闇、雷
であった。
職業が“魔術師“だったことは、ハルにとっては、“母と同じ職業“ということで、“よかった“という感想。しかし、属性については、少し違った。属性については、父や母、姉からも、「絶対に避けたいよね」と言われていたものだったのだ。でも、なぜかハルは、“イヤ“という思いはなく、むしろ“嬉しい“という感情があった。この世界において、“ハズレ属性“と言われる属性であるにも関わらず、だ。理由はわからないが、嬉しかったのだ。儀式が終わり、家族で家路につく時、
「まさか、闇と雷、とはなぁ。属性が2つというのはいいことなんだが。でもまぁ、なんとかなるさ、ハルなら、ね。」
と、父から言われ、母からも、
「おかあさんと同じ魔術師なんだし、おかあさんが色々教えてあげるから、ねっ?元気出して!」
と励まされた。挙げ句の果てには、
「ハルに何か言ってくる奴がいたら、お姉ちゃんがやっつけてやるから。ハルのことは、お姉ちゃんが守ってあげる!」
なんてことを姉からも言われた。
「ありがとう、とうさん、かあさん、お姉ちゃん。でも、僕、なぜかわからないんだけど、嬉しいんだよね。なんでだろう。闇と雷、って聞いた時、“よかったぁ“って思ったんだ。今も、嬉しんだよ。なんでだろう?」
「ハルくん、強がってない?」
「うん、全然。もしかしたら、誰とも違う属性だから、なのかなぁ。」
「もし、そうだとしたら、ハル、お前、すごい人間になるかもな。」
「ほんと?」
「あぁ、だって、普通ならがっかりすると思うんだよ、それを嬉しいって思えるんだから。」
「そうか、僕、頑張る。」
「でも、お姉ちゃんが、ハルを守ってあげるんだからね。」
「うん、ありがとう、お姉ちゃん。」
その日の夜。
「旦那様、奥様、皆揃いました。」
「すまないな、こんな時間に集まってもらって。ゼノン、アキ、ヒロ、イズ。」
「いいえ、とんでもございません。本日は坊っちゃんの“天啓の儀“ですから。」
「あぁ、それで、結果なんだがな、“魔術師“で“闇“と“雷“、だったよ。」
「なんと。」
普通であれば、“鎮痛“な雰囲気になりがちな結果なのだが、ここに集った6人はいずれも、“笑み“が広がっていた。それも、“黒い笑み“ではなく、心の底から“嬉しい“という想いが伝わる“明るい笑み“だった。
「旦那様、奥様、なんと喜ばしい結果でしょう。」
「そうなんだよ。よかったよ。」
「おめでとうございます、奥様。」
「ありがとう、アキ。」
「これからは、ハルに対して、“闇持ち“の“先輩“として、色々と指導してやってくれ。もちろん、厳しくな。」
「かしこまりました。私たちも、嬉しゅうございます。」
この世界では、闇属性を持つ者は、“闇持ち“として、いい意味でも悪い意味でも、一目置かれる存在であった。そして、ラズベール家に仕える使用人は、4人とも、その“闇持ち“であり、アルとハースがS級冒険者として活躍していた時から、“陰“として二人を支えているのである。
さっそく次の日から、“闇持ち魔術師“としての手解きが、始まった。それは、厳しくも愛のある手解きであった。
「イズ姉、強いよ、もっと手加減してぇ〜。」
「ダメですよ、坊っちゃま、この程度で根を上げていては。それに、これ以上の手加減はできませんよ。」
「えぇ〜、そんなぁ。」
ラズベール家使用人
執事
ゼノンワルド Lv83 剣使い 闇、土
メイド長
アキ Lv79 剣使い 闇、風
メイド
ヒロ Lv74 弓使い 闇、炎
メイド
イズ Lv71 鋼糸使い 闇、雷
ちなみに、執事のゼノンワルドは、みんなから“ゼノン“と呼ばれているが、ハルからは“ゼノ爺“と呼ばれている。
ゼノンは、そのことを非常に嬉しく思っている。また、メイドの3人も、ハルから、アキ姉、ヒロ姉、イズ姉と呼ばれていることを非常に嬉しく思っている。




