試される
今日は早番の日。
「おはようございます。え〜と、ミザエルさん、ですね。来都のご用件は、あぁ、カルダルトへ行かれるのですね。」
「えぇ、そうです。」
「お一人ですね。いくつか確認させていただきたいことがあるので、事務所までよろしいですか?お時間取らせませんので。」
「え?何か、書類に不備でもありましたか?」
「はい、申し訳ないです。」
「なんです?」
(この人、ミゼルさんだよね?なんで、幻影なんかで別人に化けているの?)
「あの〜、何が問題なんでしょうか?」
「え〜っとですね、非常に申し上げにくいのですが、」
といって、周りに人影のないことを確認して、
「ミゼルさん、ですよね?なぜ、幻影で別人に化けているのか教えていただけますか?何か事情があるのかもしれませんが。」
とハルが言い終わらないうちに、攻撃を仕掛けてきた。だがハルもすぐに抵抗した。
「色々と事情がありまして、察していただけませんか?」
攻撃は続く。
「と言われましても、この場合、“はい、そうですか“というわけにもいきませんので。」
抵抗する。
「そこをなんとか、お願いします。」
「申し訳ありません。」
ミゼルは、女性でありながら、門兵で、ハルとはチームは異なるが、チームリーダーという地位にいる。門兵の中では、かなりの実力者、と評判の“女門兵“である。
そして、現状のミゼルとハル。第三者が見ると、普通のやり取りに見えるが、当事者間では、ギリギリのせめぎ合いをしている。挙句、ミゼルは、ハルの“魔気“を吸い取ろうとし始めた。ハルも負けじと、ミゼルの“魔気“を吸い取り始めた。
(何が目的だ?ミゼルさん。)
しばらくすると、突然、攻撃が終わった。
「はい、合格。」
「え?」
「なんでもないわ。ごめんなさいね、ちょっと試させてもらったのよ。フィオレッティから面白い子がいる、って聞いたものだから。」
「えっと、どういう?」
「まぁ、いいじゃないの。それと、この入都は無かったことにしておいてね。じゃ、私は行くわね。」
と言って、幻影をとき、ミゼルの姿に戻って、何事もなかったように、事務所を出て王都内に消えていった。
「えっと、どうすればいいのでしょう、僕は。」
ハルが途方に暮れていると、
「いいんじゃぁないの?何もなかったことにしちゃってさ。本人があぁいうんだからさ。」
突然背後から声がかかり、振り返ると、
「センパイ⁉︎」
フィオレッティがいた。
「僕は、何を試されたのでしょうか?」
「さぁね。あの人、元々、何考えているのかさっぱりわからんお人だから。」
「でも、センパイの名前出してましたよ?」
「えぇ?俺の名前を?参ったなぁ。まぁ、気にすんなって。さぁ、仕事に戻ろう、戻ろう。」
「はぁ。」
(何か、イヤな予感がするんだけどなぁ。)
「どうでしたか?ミゼル。」
「合格ね。あの子、私と張り合ったの。あんなヘラヘラしてる割には、歯応えがあっていいわね。」
「なら、確定ですね。」
「で、私の班になるのよね?」
「いいえ、あなたには、別のことをお願いしたいので、フィオレッティとハルは別の班にします。」
「何?嫌な予感がするんだけど?」
「まぁまぁ、そう構えないでください。実は・・・。」
「ふぅ〜、なるほど。わかりました。それなら、確かに、別の方がいいわね。」
「では、よろしくお願いしますね。」




