0-H話 悲劇と共に鳴る緋色のような
コードネーム『緋鳴』潜在記憶譚
ブォォンブォォォォォン!と、競艇場から溢れ出る
いまだ少し聞き慣れないモーターの音を、今でも鮮明に覚えている。
私、成宮 雛乃の父である「成宮 源治」は、プロのボートレーサーだった。
ボートレースは、私の一種の楽しみでもあり、一つの”夢”、そうでありたかった。
今日は久々に父さんのバイクに乗って、首都高をツーリングしてた。
高速道路だとはいえ、かなり車やトラックなどの通りが多くて、よくトラックに描かれてる絵や痛車に目を向けていた。
風は激しかったけれど、次第に気持ち良くなっていって、少し飛ばされそうにもなる。
……まあ、たまにはこういうのも悪くはないな……
そう思っていたせいか、私はかなり油断していたようだ。
ドォォォン!ガチャガチャ……
唐突に、私たちの前を走行していたワンボックスカーが何かに止められたかのように少し跳ね、そのまま停止した。
その時だった。
「受け身の準備をして!!」
危険を察知した、父の声が聞こえた。
私は咄嗟にバイクから身を投げ出し、目を閉じながらサイコロかのように転がる。
動きが止まったと思い、目を開いてみる。
その眼に映ってしまったのは。
チュドォォッ……
バイクとワンボックスカーに挟まれている、父、そして……
テレビで見たような、赤い炎だった。
玉突き事故が、起きていた。
見開いた眼を恐る恐る動かす。
左には、一台のトラックとさっきのワンボックスカー
右には、急ブレーキをかけ停車した大量の乗用車。
真っすぐには、炎に包まれかけている、父。
「と、父さん…!!」
身体を動かそうとするが、思うように動かない。
どうして。なんで。
足掻いてる間も無く、父に炎が近寄っていく。
やだ。やめて……やめろ。
いやだ!!!!
そこで、私は虚ろになってしまった。
気がつくと、私の目には知らない天井が映っていた。
「ここは……」
白衣を着た男性がこちらへ向かってくる。
「起きましたか。痛いところなどはない?」
…医者だ。ここは間違いなく”病院”だと確信した。
私は質問にうなづく。そうすると、医者はこう言った。
「君のお父さんは、現在進行形でオペをしている。かなりの重症だったから結構長引いちゃってるけれど、きっと助かるはずだよ。」
父が今手術をしていることと、まだ生きていることを知った。
私は思わず、涙が零れ溢れてしまう。
”父のボートレースをまた見れる”と、思っていた。
……その希望は、薄れかけてしまった。
無事にオペが終わり、父は病室にしばらく居ることとなった。
そして私は、玉突き事故でついていた怪我が完治したため、一時的に保護施設で暮らすこととなった。
ある日、私は父にお見舞いをしようと病室へ立ち寄った。
父は病室のベッドで仰向けとなっていた。
しかし、なにやら様子がおかしい。
首の下に、2つくらいの大きな腫れがあった。
医者がこれを見つけると、すぐさま他の医師たちを呼び出し、検査を行った。
結果は最悪なもの、それだった。
_悪性リンパ腫です。
悪性リンパ腫とは、血液のがん、つまり……
本当に最悪なタイミングで、父に癌が発現した。
少し遅れて理解する。
膝から崩れ落ちる。
あり得ないほどの涙が溢れ、零れていた。
もうしばらくも、この保護施設で暮らすことになるそうだ。
だが、父のことがとても心配で、毎晩縁起のない妄想をしてしまっていた。
〜1年後〜
私はいつものように、父の病室へ行き、何気無い雑談をしていた。
少しでも、気を紛らわせればいい。そう思っていた矢先。
ドオォォォォォン!
突然、下の階から爆発音がした。
院内に鳴り響くサイレンの音に悲鳴が交じりうるさい。
私は、父の腕を掴んで怯えている。
そして。”そいつら”は来た。
黒いスーツを着て、サングラスをつけた集団が、病室に入ってきた。
「おいおい。二人だけかぁ…?」
私はふと頭に思い浮かぶ。
「しゃーねぇ。他の奴らと大して変わんねぇ。」
この人達は。
「ころせ。」
”下層部”の人達だ。
私は何を思ったのか、その黒スーツの一人に殴りかかった。
しかし、あっさりと反撃される。
「父さんに手を出さないで……!!」
そう言いながら、めげずに立ち向かう。
しかし。呆気なく、私は床に倒れ込む。
意識が段々と遠のいていく。
朦朧としていくうちに、標的が父に変わった。
しかし、父は……
「私達をころすくらいなら、下層部に…
そこからは、記憶にない。
恐らく、意識を失ってしまったのだろう。
そして目を覚ますと…
「復讐、したいか?」
見知らぬ男性が、いた。
復讐……黒スーツの集団に対してのことだろうか。
……私は迷わず、「はい」と頷いた。
そこから私は、その下層部にて”殺し屋として”暮らすこととなり、1年ほどのトレーニングや研究で、日常を費やした。
そして、14歳の時から現在まで、ずっと。
ずーっと。
ずーーーっと。
殺し屋をしながらも、父さんを探している。
潜在記憶譚 緋鳴 -完-
初めまして、姫村柊斗と申します。
ほとんど初めてこういった小説を書いてみたのですが、結構大変だなぁ、と、心身ともに思っております。
基本的には、ほぼ不定期に更新していきますので、何卒宜しくお願い致します。




