ブロンドヘアの魔女③
母親の泣き叫ぶ姿を目の当たりにして、居ても立ってもいられず、すかさず前へ出て女の子の傍で腰を下ろす。
「失礼します!」
一分一秒を争う危険な状況に、後先のことを考えてる暇などなかった。
両手を女の子に向けて翳し、回復魔法を唱える。
「guarigione!」
女の子の周りに白い光がキラキラと広がり、身体を包み込む。
傷口から流れ出ていた血も止まり、女の子の目がゆっくりと開いた。
「ママ…?」
「ミーナ!よかった…本当によかった…ありがとうございます」
あなたのお陰で娘の命が助かりました、なんとお礼をしたらよいか…と涙でグショグショになった顔で何度もお礼を言われた。
すげぇ!
魔術師様だ!
目の前でこんなの見たの初めてだぞ!
よかったねぇ!
と、拍手とともに沢山の歓喜の声が飛び交った。
魔法を使って喜ばれるのは初めてだったからとてつもなく嬉しい。
「お礼なんていいです。無事で良かった。ミーナちゃん、これからは気を付けるんだよ?」
ミーナに向かって言うと、ごめんなさい、とミーナが謝って。
「おねえさん、おなまえ、おしえて?」
「名前…?」
そこでハッとする。
今はフードを深く被っていて口元しか見えないけど、ただでさえ目立ったことをしているのに顔と名前が知られたら不味いのでは…?
「名乗るほどの者ではないので!」
そう言って焦って立ち上がると同時に突風が吹いてくる。
パサ、とフードが外れ長いブロンドヘアが風に靡いた。
「わわわっ」
見られる!と直ぐ様フードを被り直していると。
「騎士様だー!」
黒い騎士服に包まれた騎士団員達がぞろぞろとこちらに向かって歩いて来た。
今のうちに逃げるしかない!
またね、と告げて無我夢中で走った。
背後から、
今度お礼させてください!
またねー!おねえさんありがとー!
と二人の声が聞こえてきた。
人の温かさが身に沁みて、自然と涙が溢れてきた。
小さな命が助かって本当に良かった。
魔法が使えても辛いことばかりで、なんで自分が?としか思えないことのほうが多かったけど、魔法が使えて良かったと思えたのは初めてかもしれない。
街の端まで来て、ベンチに腰を下ろして息を落ち着かせる。
回復薬を買い取ってもらってはいるけど、他にも何か人の役に立つことがしたい。
もしかしたら何かできるかもしれない。
目を閉じ、ゆっくりと深呼吸を繰り返す。
「………」
…?
ふと視線を感じ顔を上げると、肩までかかる、赤みがかった茶色の髪と、新緑のようなペリドットの色の眼をもつ男性がこちらを見ていた。




