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第八話

「面白いものがみられて、良かったね」

「うん。凄かった!」

「え、ねえ、幸ちゃん? あたしは超怖いし、その場にいなくて超良かったなあって思ったんだけど?」

「全面的に同じ感想」

「ですよね?!」

 夕食後のお茶の時間。幸広の淹れたハーブティーを飲みながら、浮草の話を聞いた鶺鴒は朗らかに笑った。浮草も、好きな映画俳優見たぐらいのハイテンション。一方の薔薇と幸広は、全力でドン引きしており、怯えて寄り添いあっている。そんな幽霊が何日もついてきてたの怖いし、そんな怪獣みたいな牛が地獄から来たのも怖い。みえる世界が違うと、感性も異なるから仕方ないとはいえ。

「えっとつまり、変な幽霊がいて、正体はマトリョーシカみたいな悪霊で、その一番外側があたしの中学に遠隔攻撃してて、浮草が通報した結果いかつい牛により地獄に強制送還された、で、あってる?」

「そう」

 薔薇が自分に理解できる言葉でまとめる。かなり正確だ。浮草はうなずいた。

「元々、地獄行きだったんだろうね。そうじゃなきゃ、浮草が出会した精霊牛は来ないから」

「いろんな種類の精霊牛がいるんですね」

 鶺鴒の補足に、幸広はとりあえず深く考えずに感想を述べるのみである。

「で、鶺鴒と浮草は、マトリョーシカ悪霊(仮)の中の人? 隠れてた生き霊? のことは分かったの? というか、学校はもう大丈夫になったの?」

 薔薇にとって重要なのは、学校に平和が戻るかどうかだ。幽霊のことは、分からないし、どうしようもできない。

「ごめん、わかんない」

「わからないね」

「えー…」

 即答されて、薔薇は心底落胆した。なにしろ、鶺鴒と浮草は、超弩級の「みえるひと」だ。実際浮草は、世間話をしただけで地獄からの使者を呼びつけたようなものなのだから。

「じゃあ、明日もまた変なこと起こるの?」

「それも、わかんない」

「うん? どういうことだ?」

 げんなりな薔薇に、浮草は申し訳なさそうに首を横にふる。幸広が小首をかしげた。説明を促すように「みえるひと」二人に視線を送る。

「オレは、みてないからなんとも」

「おれは、そのー、一瞬だったから」

「ぬう、じゃあ分からなくてもしゃーないか」

 曖昧な二人に、あっさり納得する薔薇。幸広は少し考えてから、言葉を選びながら状況をまとめる。

「とりあえず、本体というかラスボスの生き霊が、何をしたいのか分からない。そもそも死霊が生き霊を隠していたのも、分からない。つまり、なんにも分からないまま?」

「そういうことだね」

 鶺鴒の黒い視線と、幸広の灰色の視線が交錯した。幸広は、ため息をついて、特に意味はないが天井を見上げる。

「それじゃあ結局相手の出方次第か…後手に回るの嫌ですけど、仕方ないですね」

「やっぱ先制攻撃が一番だよねえ。せめて、後の先をとれたらだけど…どっちにしろ物理で殴れないもの、あたしには無理だからなー」

「あ、そうだ、先制攻撃といえばさ。薔薇、今日の昼間、リバースシティーマジシャンズで突発レイドイベントあったの気付いてないだろ」

「は???」

 リバースシティーマジシャンズは、薔薇と幸広も遊んでいるスマホゲームだ。現在二周年記念のイベント中である。世界観の核心に迫るストーリーが、ステージクリアごとに解禁されており、世界中から魔法使いたちが参戦し、一日に2ステージくらいずつ撃破されている。

「13時半ぐらいだったんだけど」

「絶賛、眠気と数学の飽和攻撃くらってた!」

「一応ちゃんとパーティ組んで挑んだけど、全滅して、オレ重傷になっちゃって」

「嘘お?!」

「参戦したプレイヤーが純粋に少なくてってのはあると思うけど、レイドボスの範囲攻撃がエグくてさ。タンクとヒーラーが防戦一方に追い込まれて、アタッカーから落とされていって、って感じだったんじゃないかな」

「学生魔法使いと社会人魔法使いが参戦できない時間帯に攻めてくるとか、運営…じゃねえ妖魔どもヒデエことしやがる!」

「今週のイベント、プレイヤーの侵攻速度が想定外に速くて、週末までに全ステージクリアされて負けそうだからじゃない?」

「ズルイ!! ちょっと暴れてくる!!」

「薔薇のキャラはタンクなんだから、最低でもバディは組めよ」

「Yuuさんにメッセージ送っ…来てるわ! いってきます!」

「Yuuさんの回復とバフがあればタンクの薔薇でも暴れられるし、安心だな」

「Yuuさんめっちゃ頼れるから…たぶんシゴデキな社会人魔法使いだよ」

 幸広がゲームの話をして、薔薇の意識をやや強引にそらしてくれたことに、鶺鴒は心の底から感謝した。浮草が、上目使いに見てくる。

 霊は、基本的に薔薇に影響を与えられない。生き霊とて、それは同じ。だから、薔薇が安全なのは変わらない。

 けれど、鶺鴒も浮草も、そして「みえない」幸広も、生き霊の目的を察した。

 死霊を隠れ蓑にして、薔薇の関心を惹こうとした。運悪く連日悪夢を見ていたことで、薔薇は「あっち」を意識していた。


 「深淵を覗くとき、深淵もまたこちらを見ている」


 「みて」くれれば、普段は鉄壁の薔薇も防御も打ち破れる。影響を与えられる。


 呪うことが、できる。


 生き霊の正体は分からない。

 けれど、狙いは、薔薇だ。

作中のスマホゲームは、若かりし日に魔法少女が流行ったときに設定だけ考えた現代ファンタジーを元ネタにしています

いつか書いてあげたいです…だいぶ違う話になるとは思いますが

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