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最終話

ほぼ蛇足の最終話

 飯島みり愛一家の結末を世間が知るのは、それから三日後。欠席の連絡が全くなく、電話も通じないので担任教師が自宅へ赴いたのだ。そこから、大人たちは上へ下への大騒ぎ。警察も入り、家族内で何が起きたのかは解明されたはずだ。だが、公表されるようなことはなかった。多くの人にもたらされたのは、家族三人の不幸な事故死というストーリー。少しだけ病苦による心中ではないかなどの噂も流れたが、すぐに消えた。まさか、家族同士で殺しあい、生き残ったひとりは呪い返しで死にましたなんて事実にたどり着ける一般人がいるはずもない。

 ただちょっとだけ。

 薔薇は校舎裏に呼び出しをくらい、正直に分かることを白夜に説明するも「わけがわからねえ! 浮草に電話しろ!」と叱られ、浮草は電凸されるという、ゲリラ豪雨みたいな事と。

 送り火が炊かれ始めると、浮草のもとに大量の精霊牛がやってきて、困ってることはないか、すぐに教えなさいみんなでくるから、次は牛頭様も連れてくるからと、めっちゃ囲まれたので、鶺鴒が間に入って仕事に戻ってもらったりとか。

 でもそれは、よくある日常で、平和の証だった。


「天災みたいな、奇跡的な人災だったね」

 昨日の雨すごかったね、みたいな穏やかに微笑む鶺鴒。

 不遇と不運と、少しの悪意が溜まって絡まりあって、なんでか薔薇の頭に降ってきた。

「ポジティブに考えて、当たりを引いたのが、あたしで良かったってことにする」

「オレだったら死んだかもなあ」

 夕飯のビーフストロガノフを腹一杯食べて、満足そうにソファに寝転がる薔薇に、食後のお茶とお菓子を出す幸広。当然、食後のおやつは別腹である。

「幸ちゃんになんかあったら、あんなあっさりおしまいにはしないよ」

「……ほーら、食べたがってた白桃のコンポートだぞー。初めて作ったけど」

 ライオンを見つけたハイエナのような不穏な光が薔薇の焦げ茶色の目に宿るのを見てとって、幸広は話題を断ち切った。ガラスの器にきれいに盛られたこったデザートに、野生を瞬で忘れた薔薇が年相応の少女に戻る。

「なにこれすげー!! いただきまーす!」

 猛獣を見事にあやす、ベテラン飼育員を横目に、鶺鴒と浮草は店を開けに行く。

「本当は、浮草ひとりでアレを壊すつもりだったのか?」

「うーん、まあ。でも、危ないことすると、助かってもみんなにめっちゃ怒られて余計に怖い思いするから…」

「あっははははは」

 捻れた禍々しい生き霊よりも、保護者のお説教の方が怖いとは、ある意味子どもらしい。

 実際、警察の「この手の事案」に通じる者から、警察で「この手の事案」を担当している隼に話が伝わってしまい、コワイ量の着信履歴が薔薇と浮草のスマホにきており、二人は震え上がった。しかし、二人の関与は微塵も取沙汰されておらず、鶺鴒が宥めてくれたので、お説教は受けずに済んだ。優しくて怖いおせっかいは、白夜で間に合っている。

「まあね、他人を傷つけたり、殺したりするのは当然よくないことなんだけど、時と場合によるからね」

 急病で昏倒し、誰かを巻き込んで転ばせてしまい怪我をさせたら、悪だろうか?

 殺されそうになって反撃し、相手が死んだら、悪だろうか?

「でもね、いやがらせするとか、呪いの道具を作るとか、ついうっかりやることじゃない。絶対に。自分の意思と決断で行うことには、一定の責任が伴うから」

 人を呪う道具も商品として置いてある店のドアプレートをOpenにひっくり返して、鶺鴒は穏やかに微笑む。


「人を呪わば穴二つ」


「やっぱり、自分のこぶしで殴り込みに行かないとね」

「聞いてた? ダメだよ。絶対ダメ」




END

夏のホラー企画に参加しようと、十年ぶりに気合いをいれて筆を取ったら、楽しくなってしまい、長々としたブツができてしまいました

久しぶりにお話が書けて、自分はとても満足です

浮草、薔薇、幸広を主軸としたお話をのんびり書いている途中の脱線事故でしたが……戻って、書き始めようと思います


ここまで読んでいただき、ありがとうございました

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