第7話夜のモノローグ追記版
音に、言葉はいらなかった。
ひとつの笛の音が、心と心を結び、夢の種を芽吹かせる。
まだ幼いその想いが、いつか世界を照らす光になる――。
夜。
孤児院の小さな部屋のベッドに横たわりながら、俺はぼんやりと天井を見つめていた。
昼間の出来事を、ひとつずつ思い返す。
また……勝手に“手”が動いた。
草笛を作って、音を鳴らして、みんなと遊んで……懐かしいような、不思議な気持ちになった。
なんで俺は、あの草を見ただけで「作れる」って思ったんだろう。頭じゃなくて、手が知っていたみたいだった。
それでも、今日もまたひとり――トモとも仲良くなれた。
俺の作った楽器を、あいつはすごく気に入ってくれた。
レトも一緒に楽しんでくれて、みんなで笑って、なんだかあったかい時間だった。
でも、トモは途中から急に真剣な顔になって……。
俺に「魔法のステージを作って」って言ってきたんだ。
悪い気持ちじゃない。
むしろ、嬉しかった。
レトのときと同じように――
トモの夢も、見届けたいと思った。支えたいと思った。
魔法のステージ、かぁ……。
どうせ作るなら、ただのステージじゃなくて、世界で一番楽しい“最高の舞台”を作ってあげたいな。
魔法じゃなくても、俺には手がある。だからきっと、できる。
……その時、俺の“魔法”も見つかってるかもしれない。
魔法の世界の住人、魔法が使えず、今これ。
今回は昼のエピソードに加え、夜のひとり語りも加筆。
アキラが“ものづくり”という無意識の力と向き合い始め、仲間の夢に心を動かされていく様子を描きました。
小さな願いと静かな決意が、少しずつ彼を変えていきます。
次回もまた、誰かとの絆が生まれる――そんな予感を胸に。