表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/117

第5話《手が覚えていたこと》

誰かの夢に触れたとき、

自分の“空白”が、少しだけ動き出した気がした。

心に残った言葉と、あの手の感覚――。


夜の部屋で、俺はひとりベッドに寝転んでいた。

 この世界に来てから、初めて落ち着いた時間が流れている気がする。


 目を閉じると、今日のことがゆっくりと浮かんできた。

 レトの笑顔、回るコマの音、手に残る木の感触。


 あのとき――。


 気づけば体が動いていた。木の欠けた部分を見て、ちょうどいい枝を選んで、ナイフで削って、形を整えて――。


 「なんで、俺……あんなふうに直せたんだ?」


 まるで、もともとそのコマの構造を知っていたみたいに。

 考えるより前に、手が先に動いていた。


 でも、答えはわからない。


 思い出そうとしても、まだ名前以外の記憶は戻ってこない。

 でも、ひとつだけ確かなのは――あの“手の感覚”は、昔からのものだということ。



 レトのことも、思い出す。


 「僕はね、16歳になったら魔法が使えるようになるでしょ? だから冒険者になるのが夢!」


 真っ直ぐなその目。未来をまっすぐ語れるって、あんなにもまぶしい。


 羨ましいな、って思った。

 それに、応援したい。できることなら、見届けたい。



 「アキラが大きくなったら、“おもちゃの魔法工場”つくればいいじゃん!」


 あの言葉が、ふっと胸に灯る。


 “魔法工場”――子どもらしい夢だけど、どこか心に刺さった。


 俺に合う魔法って――なんなんだろう。

 まだわからない。でも、探してみたくなった。

 だって、俺の“手”は、まだ動く。


 魔法の世界の住人、魔法が使えず、今これ。


今回は、静かに心を見つめる“夜のひととき”でした。

レトとの出会いが、アキラに「自分の得意なこと」や「これから」を考えさせるきっかけとなっています。


“ものづくりの手”と“心の空白”が、少しずつつながっていく。

ここから物語は、また次の子どもとの関わりへと進んでいきます。


次回も、どうぞお楽しみに。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ