第五話 筋肉式強化形態変身
ヘリ内部
全員変身を解除し、ボブはドロイドローンのサンプルの解析に勤しんでいた。
「・・・ん?ね、ねぇパンチョ?こ、これ・・・ま、まさか、ドロイドローンって・・・ナノマシン?」
そして、ボブは見つけた。ドロイドローンの正体を。
「そ、正確にはAI搭載ナノマシンってとこかね〜、向こうさんは秘術だの秘薬だの言ってるけど、この合衆国内の情報と照らし合わせたらそいつはナノマシン。ファンタジーな魔法なんかとは全然違うSF物質さ。
そいつを無機物に与えるとナノマシンが侵食、それが無機物の関節や骨となって動き出すって感じさ。それで、その戦闘データは常に帝国内のメインAIに収集、データを学んで新たに進化する。それがドロイドローンさ」
パンチョはただ帝国に捕まっていた訳じゃない。テルミナートルやフェロンの会話、そして様々なルートを通してこの真実に近づいていた。
「パンチョ、それならあのテルミナートルの異様な戦闘力の増加は何だあれ?」
アランが聞き返す。
「アレこそが俺たちにも応用が効くかもって話しだ。アレはテルミナートル自身にドロイドローンのナノマシンを塗り、そこからあの強化に繋がったんだよね〜。あの溶岩戦闘機、アレを吸収した感じかな。恐らくフェロンも似たような感じだと思う」
「ほー、てかテルミナートルの奴と言えばよぉ、あいつ、死の間際に皇帝はいねぇとか言ってなかったか?ありゃどう意味でぃ?」
ジャックが銃を弄りながらパンチョに聞く。
「その言葉の通りだよ、それが彼をこっちに寝返らせたきっかけなんだ。皇帝は存在しない。いや、存在しているのは皇帝と名乗るメインAIさ。皇帝は理想を見せる事が出来るのさ、自身に最も有意義な幻覚ってとこかな。それに魅せられ、帝国は皇帝に忠誠を誓う。その理想を見続ける為に皇帝の手足になるって訳だ。
けど、それを実際に作り出していたのはあのフェロンとか言う奴なんだよね〜。そしてフェロンは皇帝に成り変わり、ドロイドローンを進化させて何かをしたがってるみたいなんだけど、そこがイマイチわかんないんだよね〜」
パンチョはコンバットナイフを取り出して遊び出した。
一行は大統領官邸前に着陸した。無論、パンチョ以外もう一度変身してだ。
「では、我々はこれで失礼するよ」
アランは大統領に敬礼して去った。立場上パンチョは大統領の娘としての任務を続行する事となる。
アンデルセン合衆国にしばしの平和が訪れた。幹部をほとんど失ったバル・ヴェルデ帝国の攻撃はめっきり少なくなった。
ボブはドロイドローンの解析をしたいと1人部屋に篭っている。
「ふぃ〜・・・平和テトね〜・・・」
そして久しぶりの登場、ポテトは相変わらず呑気に近くのダイナーのフライドポテトをもそもそと食べている。
「もー、ぐーたらしすぎフラよ?いくら帝国が来なくなったからって、まだ女神様の以来は終わってないフラ?」
フライはまだメリハリのあるタイプだ。
そしてアランたちは再び筋トレに勤しんでいた。
「っしょぉぉ!!2000!!」
腕立て伏せ2000回、どちらが早くこなせるかの勝負。結果はアランの勝ちだった。
「くそぅ!!また負けちまったぜぃ!!」
「おいおいどうしたジャック、ちょいと実戦が減って、腕でも鈍ったか?」
「あん?そいつはどうかねぇ?なら腕相撲しようぜぃ?」
今度は腕相撲対決だ。アランとジャックはがっしり腕を掴んで力を込めた。しかし、早々に苦しい表情をし始めたのはジャックだ。
「おいどうした?もう降参か?」
「誰がてめぇにするかよ!」
ギリギリギリギリ・・・・そろそろ限界だ、そうなっていた時だった。
『バァン!』
「アランッッッ!!!フェロンが突然侵攻開始した!!」
突然、パンチョがアランたちのシェアハウスへとやって来た。
「パンチョ?」
「ん?あ〜れま、おいおいテレビとか付けておいてよね〜。ここスマホは無いんだから通知なんて来ないよ〜?ほれ」
パンチョはおもむろにテレビのスイッチを入れた。
『こちら!アンダーストリートより中継!!帝国兵器、ドロ=ドロイドの大群が街を襲っています!!ギルドメンバーが討伐に向かっていますが!!この数は異常です!!』
テレビ中継、その景色は割と近所で大乱闘が巻き起こっていた。
「おー、ドンパチ賑やかにやってんな」
アランは結構呑気だ。
「おいボブ、敵襲だぜ。出てこーい」
マイクがボブの部屋をノックする。
「く、くひひひ!!も、もうすぐ!!もうすぐ出来る!!だ、だから先に!!先に行ってて!!くけけけけけ!!うけっけ!!」
マイクは部屋から聞こえる気持ち悪い笑い声にドン引きして戻ってきた。
「ボブは不参加だ、残りで行くぞ」
「あいつ何やってんでぃ?」
「さぁな。ま、事態が事態だ。変身して一気に終わらせるぜ?すぅ・・・プリティスト!!アイルビーバァァックッッッ!!」
アランたちはパンチョ含めて一斉に変身した。
街中
「うらぁぁぁ!!!くそ!!何だこの数は!!プリティストたちはまだ来ないのか!?」
街ではギルドメンバーが頑張ってた。しかし、剣とか盾ではあまり効果がない。
『ズドドドドドッッッ!!!』
「戻ったぞ!!!」
そこへコマンダーがマシンガンを乱射しながらやって来た。
『全員退いてろ!!チェーンガン掃射!!』
空からはヘリがチェーンガンをぶっ放す。
「なんでぃ、俺のガトリングが必要ねぇてか?んじゃ、暇だから格闘戦でやらせてもらうぜぃ!!」
ガンナーは名前の割に格闘ばっかりだ。
「みんな派手好きだねぇ〜、じゃ、俺は騎士らしくレイピアで行こうかな?」
セクスィーは華麗なる剣術で他を圧倒していく。
「こ、これが伝説の戦士・・・」
戦場は一気にアランたちプリティストに傾いてきた。しかし。
「成る程、更に成長を遂げた訳だな、プリティスト共・・・」
『ズドォォォォン!!!!』
空から何かが降ってきて、辺りに粉塵が舞う。
「ん?お前は・・・」
「久しぶりだな」
「フェロンか」
そこに現れたのはフェロンだった。
「今更何のようだ?」
コマンダーが少し笑いながらフェロンに問いかけた。
「時は来たのだ、お前たちのおかげで俺の予定はかなり早まった。礼を言いに来たんだよ、プリティスト」
「あぁ、それはどうも。しかしだな、結局お前の目的は何なんだ?俺は何に対して感謝されたのか分からんな」
「ふっ、とぼけた事を・・・貴様らがサンプルを持って行った時点で察しは付いてるだろ。皇帝は存在しない、作ったのは俺だ。そう、ドロイドローンは俺がこの世界を支配するための道具なのさ」
「わ〜、シンプルイズベスト」
セクスィーが薄く笑いながら拍手を送った。
「世界征服は誰もが抱く野望だろ?」
「そうだけど、今時そんな奴がいるとはね〜」
「ふっ、何とでも言えば良い。誰が何を言おうと俺がこの力に到達したのは事実。あのポンコツ女神がお前たちをこの世界で転生させたお陰だ。もう必要なくなった、このドロ=ドロイドも・・・」
パチン!!フェロンが指を鳴らすとドロ=ドロイドが突然消えた。
「ドロイドローンもな・・・必要なのはこれ1つ。この1つだけで全てが変わる!!」
フェロンは突然ドロイドローンの液体をその身に浴びた。するとみるみるうちにフェロンの姿が変化を始めた。歪な金属の鱗のような鎧を纏い始める。
「ぐおおおおおおっ!!」
そして金属の鱗は顔面を覆い、奇妙なマスクを纏った。
「・・・なんと、醜い姿なんだ・・・」
コマンダーの率直な感想、それは決して美しいとは到底思えない醜い姿にフェロンは姿を変えた。
「これを理解できないとは、愚かなる者だ。この姿は全てを超越している。今、帝国の全てがこの姿になったのだ!!そして!!俺はもうフェロンではない!!我が名はドロローサ!!あらゆる者を支配する存在だ!!」
「っ!?」
コマンダーは咄嗟に気がついて避けた。そこの地面には突然銃撃を受けたような跡が残っていた。
「何処から撃った?しかもこの弾丸は・・・7.62x39mm弾、AKなんか何処に・・・」
「それだけではないぞ?7.62x54mm R弾の連射はどうだ!!」
『ドガガガガッッッ!!!!』
「うおっ!?なんでぃ!?何処からともなく弾丸が降ってきやがる!!」
あちこちから銃弾の嵐が巻き起こる。
「ちっ、何もない空間から銃弾だけを発射しているのか!!」
パイロットが弾丸の出所を突き止めた。銃弾は何も無い、虚無空間から発射されていたのだ。
「よく見抜いた。が、それが攻略に繋がるか!?今の俺は戦艦、いや、それ以上の火力を秘めているのだ!!さぁ、次だ!カノン砲を喰らうがいい!!」
『ドゴォォォォォッッッ!!』
「あぶねっ!?」
地面に巨大な穴が空いた。
「う〜ん、あんまりこれ以上やられるのは良くないなぁ〜。アラン?さっさと終わらせようぜ〜」
「了解だパンチョ!!スティンガーミサイル!!」
コマンダーはロケットランチャーを取り出してドロローサに撃ち込んだ。
「ふん!!貴様らのそれは姿は違えどもこれまでの浄化技と何ら変わりはない!!そしてこの身体は!!その浄化技なぞ全て無効にする!!」
「おいおい、まじか」
ドロローサはロケットランチャーを素手で止めた。
「ふふっ、ふはははは!!!素晴らしいぞ!!この力!!無敵!!最強!!完全無欠!!ふふ、この俺にはもう貴様らは勝てん!!こいつらでとどめを指すとしよう!!ドロ=ドロイドをベースに作り上げた、強化型!!ヴィア・ドロローサ!!」
地面から泥のようなものが噴き出す。そしてそれは形になる。ここまではドロ=ドロイドと変わらないが、その形が以前とは異なっていた。手足や顔部分、胴体などにさまざまな銃の砲身が付いていた。
ヴィア・ドロローサは、ドロローサが作り出した移動式砲台だ。
「これはっ!?」
『ズドォォォォン!!ズドドドドド!!ズガガガァンッッッ!!』
ヴィア・ドロローサから一斉射撃をコマンダーたちは喰らった。
「ぐっ・・・くそ」
変身したこの身体ならば銃弾はある程度なら防ぐ事が出来る。しかし、食らい続ければ流石にダメージを負ってしまう。
「ちくしょぉぉ!!!」
ガンナーがガトリングガンをぶっ放す。
「くたばれくそったれぇぇぇっ!!!!」
けど、程なくしてガンナーの弾丸が尽きて砲身が空回りをする。
「ふっ、これで勝ったな。さらばだプリティースター。貴様らの功績は俺に最強の力を与えたと、歴史に残してやろう」
「ぐっ!待て!!」
ドロローサは他の配下を残して姿を消してしまった。
「くそ!!数が多すぎやしないかっ!?」
パイロットが再びサブマシンガンを取り出して応戦する。
「ここに来て弱点見つけたな。この姿、取り出せる銃はハンドガン、サブマシンガンなら二丁、他のアサルトライフルやロケットランチャーは一丁までしか出せない、つまり両手の分しか使えない。さて、この状況どうしたもんかな」
コマンダーはそれでも冷静だった。まだ秘策は残されている、それに賭ける事にしたのだ。しかし、その為にはまだ戦わなければならない。
「で、出来たぁぁっ!!!」
そこへボブがポテトとフライを連れて走って来た。
「やーっと出て来てくれたテトー!!」
「もー!ずっと何やってたフラー!?」
「ご、ごめーん。け、けど・・・こ、これなら。あ、アラン!こ、これを使って!!」
ボブはコマンダーにある物を投げた。コマンダーはそれを受け取る。
「口紅?」
それは口紅のようなアイテムだった。
「あ!?ボブ!?もしかしてそれって!!伝説の中の伝説と言われるプリティーボリュームアップリップテト!?」
「えっ!?女神様が昔言ってたプリティストをとーっても強く出来るアイテムの事フラ!?」
「2匹とも、な、何言ってるのかわ、分からないけど、よ、要するにき、強化アイテムは変わらないよ」
「・・・それよりも、どうやって使うんだこれ、俺は化粧は知らないぜ?」
コマンダーことアランは化粧なんてものにはこれっぽっちも経験がない。
「化粧なんて感覚でしょうが!!早くそれ使ってこいつらをぶちのめすテト!!」
「お前なんか口悪くなったか?」
「う〜ん、要するに適当に使えば良いんだよね〜、アラン、俺たちだって化粧しない事はない事ないでしょ〜?」
セクスィーが適当にアドバイスを送った。
「成る程、分かったぜ!!あーやって使うんだな!!」
コマンダーはリップの蓋を外して、下の部分を回す。すると中から赤いリップが出て来た。
そしてコマンダーはそれを口元に・・・持って行く事は無く、おもむろに顔面に向かって走らせた。
「ふぁっ!?何やってるテト!?」
「け、化粧しないと言っても!!何処に使うかはわかるフラよね!?」
「う〜ん、2人とも落ち着いてよね。要するにアレは塗る事に意味があるんでしょ?あいにく俺たちにはアレを使ってより可愛く、魅力的になんて使い方は出来ない。出来るのは己の鼓舞くらいだ。見てみなよ・・・」
パンチョはポテトとフライを抱き抱え、見届けさせた。
「うおおおおお!!」
『ガシャ!!ガシャン!!ガッション!!』
コマンダーは顔に、身体に全身にそのリップを走らせる。それはまるで迷彩を施しているようだ。そして塗る度にコマンダーの身体に武器が増えて行く。
片手にマシンガン、ショットガン、腰には無数のグレネード、背中にロケットランチャー、そしてあちこちに弾倉を装備していく。
『デェェェェェェェェンッッッ!!!』
こうして完全武装、プリティスト・コマンダーが完成した。
「さぁ、お前たちを抹殺する!!」
完全武装コマンダーはおもむろにスイッチを取り出してそれを押す。するとあちこちで爆発が起こった。
「どあああああ!!」
「ア゛ア゛ーウ゛!」
『ドゴォォォォォ!!ドガンッドガンッ!!ドドドドドドドドドドドドドッッッ!!!』
聞こえるのは銃声と爆発、そしてドロ=ドロイドの断末魔だ。
「あーあ、俺たちの出番無くてたいちょーに任せりゃいいか〜」
セクスィーは呑気だ。それもその筈、今のコマンダーは、フェロンを戦艦と例えるなら、最早これは一個連隊の戦力が1人で無双してる状況だ。
『バシュウウウウウッ!!!ドガァァァァァン!!!ボオンッッ!!ボオンッッ!!』
みるみるうちにフェロンのヴィア・ドロローサは倒れていった。
そして、たった1人でこのピンチであった戦況を覆し、敵のヴィア・ドロローサは全滅した。
「プリティスト・・・流石だ」
その様子を見ていたモブたちはポカンと固まっている。
「なぁあんた」
「は、はいっ!?」
コマンダーはモブに質問した。
「ドロローサは何処に行ったか分かるか?」
「え、そりゃ帝国に行ったんじゃないですか?あの様子じゃ、玉座にふんぞり返りそうな感じでしたし」
「ま、それしかないよな・・・パイロット、ガンナー、ギーク、そしてセクスィー・・・行くぞ」
「え、何を始めるんです?」
モブが質問を返すと、コマンダーは振り向きざまに言い放った。
「第三次大戦だ」
こうして、最終決戦の火蓋が切って落とされた!!敵はドロローサ!!これまでに続くこの世界のプリティストと帝国の因縁!!この脳筋!火力パワーを持って全てを終わらせろ!!