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花鉢 "カランコエ" と ふみちゃん

作者: 92コ

もし お花とおしゃべり出来たらどうかしら?

「おはよう」 誰もいないのに そんな声がして ふみちゃんはびっくりしました。

「ふみちゃん、おはよう」

 あら私の名前知っているわと さらに驚きました。


「ワタシよ、カランコエよ。」 と 声の主が言います。


 先週ママが買ってきてくれて 部屋に置いてある小さな鉢植えのカランコエでした。

「驚いた?  ごめんね。 昨日の夜流れ星があってね。 その時にお願いをしたの。

『 ふみちゃんとお話ができますように。』って。 そしたら今朝から私の声がふみちゃんに届くようになったの。」

 突然言われても鉢植えのカランコエがなぜ話せるようになったのか、 ふみちゃんには分かりませんでした。

 でもさらに声が言います。

「何のご用かと言うとね。 私カランコエは、そんなに毎日水をもらわなくて良いのよ。 少し乾いている方が好きなの 。 今度からお水が欲しくなったらふみちゃんを呼ぶからしばらくかけないでね 」


 ふみちゃんはまだなんだか夢の中にいる ような気がしてほっぺをつねってみました。

「 痛い!」


 夢ではないようです。そして今朝はカランコエに水をやらなくていいのが分かりました。


 しばらくぼんやりカランコエを見ていました。


「どうしたの学校に遅れちゃうよ。」と言われてふみちゃんは我に返り

「どうしてお水がいらないの?」と聞いてみました。

「私たちカランコエはね、葉っぱが少し厚く出来ているでしょ、だから少しだけ水分が貯められるの。分かる?」と教えてくれました。


「水筒持ってるの?」と聞くとカランコエはカラカラと笑い出しました。

 そして台所からママが呼ぶ声がしたのでふみちゃんは、

「学校から帰ってきたらまたお話しましょうね。」

 と言ってそこを離れました。


 キッチンに行くとママが

「何独り言を言ってたの?」と聞くのでにっこり笑って

「ご飯いただきます。」と言ってカランコエの話はしませんでした。


 ふみちゃんはカランコエと二人だけの秘密にしておきたかったのです。そしてママに話をしても信じてもらえそうもなかったからです。


 ふみちゃんが学校に着くと仲良しのひろちゃんが机の上に綺麗なハンカチを広げていましたそのハンカチは大きなピンクの薔薇の絵が書かれていました。

「きれいね。ひろちゃん。」

「綺麗でしょ。この間お手伝いを一生懸命したから、パパが買ってきてくれたの。」

 と話してくれました。ふみちゃんは少し羨ましくなり今朝の話をしてみたくなりました。

「あのね内緒だけどね。朝ね、私の部屋にあるカランコエがおしゃべりをしたんだよ。『お水はいらないよ』って。」

「どうして、どうして、お花が話せるの?」

「うん、分からないけどね。昨夜カランコエが流れ星にお願いしたんだって、それで話せるようになったんだって。」


 その時、二人の間にいたずらの手が割り込んだかと思うとさっとその綺麗なハンカチを奪い取って行きました。二人が、追いかけて行ったのですが、そのいたずらの手は、水道の所に持っていくと水をジャージャーかけてしまいました。


それを見ただけでひろちゃんは、泣き出しました。

「しょう君、何するのよ❢ ひろちゃんがかわいそうでしょ。泣いているじゃない。」

と言うとハンカチを置いて逃げていきました。その場に置かれたハンカチを綺麗に洗い教室の窓の外に干しておくと授業中綺麗なバラが咲いたような気持ちになりました。


ふみちゃんは家に帰りランドセルを置くとすぐにカランコエに声をかけました。

「ただいまお水欲しくない?」

「おかえり、ふみちゃん。今日はいい天気だから少し乾いたわ。でも明日でいいわ。」


「そんなに少しでいいの?」

「そうよ」と言われてフミちゃんは土の様子を見ました確かに朝より乾いています。


「あのね。いつも土が濡れているとなんだか 腐ってしまうような気がするの。」

とカランコエ が言うので 今日学校であったお話をしました。

「今日ね。ひろちゃんのハンカチをしょう君がいたずらして、取り上げて水に濡らしてしまったの。 そして ひろちゃんが泣いてね 。いつも しょう君はすぐにひろちゃんのものを取って 泣かしてしまうんだよ。」

「ひろちゃんは、すぐに泣くの。」

と聞かれふみちゃんが頷くと

「しょう君は、ひろちゃんが好きなんだね。」

とカランコエが言いました。ふみちゃんは何だかさっぱり分かりませんでした。

[

ひろちゃんに

自分の方を向いて欲しいから翔くんはいたずらするんだよ

そんなことをしたらひろちゃんが困るし嫌いになっちゃうのにね男の子ってわかんないわね。」


翌朝ふみちゃんは、

「おはよう。」

 と言ってからお水をカランコエにあげました。

「おはよう。お水ありがとう。今日も良いお天気になりそうよ。いってらっしゃい。」

 毎朝ふみちゃんは、カランコエに挨拶をして学校へ行きました。


 数週間経ったある朝、お花が一つになっていました。そしてカランコエの声がとても小さく弱々しかったので

「どうしたの、眠たいの。」

 と聞いても返事がありませんでした。心配して何回か声をかけると

 「何日か眠りにつくから心配しないで。そして夕方には暗いところに移して、ふみちゃんが学校に行く前にまたこの場所に戻してね。」

 と言われました。ふみちゃんはその日から夕方は自分の部屋の隅に入れ、よく明日はまた窓辺に出すということを忘れずにやりました。


 ある日、クラスのふみちゃんのグループで壁新聞を作ることになりました。ふみちゃんは、家に持ち帰り、続きを書いていました。絵の得意なふみちゃんは夕飯の後、絵の具を出してきて書き始めました。少し始めたところでカランコエが小さな声で呼びました。

「どうしたの?」

「眩しいのよ。何かをかぶせて暗くしてくれる?」

言われるままに大きな箱をかぶせてあげました。

「どうかしら?」

と聞くと

「ありがとう。これならゆっくり眠れるわ。

 私、あと一か月ぐらいこうして眠るの。そして眠っているうちにつぼみを作るからね。

できたらまたずっとお日様の当たるところにおいてね。

 夜、ふみちゃんの部屋で眠らなくても大丈夫になるからね。じゃあふみちゃん壁新聞頑張ってね。」


 「そうだったの。楽しみにしているね 。」

それから ふみちゃんは、鼻歌 混じりで絵を書きました。


 数日後、そのふみちゃんのグループの壁新聞は学年で特賞を取り、 市のコンクールに出品する事になりました。嬉しくて大急ぎで 帰り カランコエにまず 報告をしました。

 「すごいでしょ。」

 「 ふみちゃん頑張って 丁寧に書いたものね。

 よかったね、おめでとう私のつぼみももうすぐできるよ。

 そしたら 夜、しまわなくて大丈夫だからね。」

 「 でも夜は寒いからしまった方がいいんじゃない?」

 「 大丈夫よ 寒さに当たると 花の色が綺麗になるのよ。霜が降らなければ大丈夫よ。」

 「えっ、そうなの。」 

 「 もう少しで綺麗なお花を咲かすから待っててね。」

 「 咲いたらひろちゃん とお花見しよう。」


それから数日後、 カランコ エのつぼみが小さく見えてきました 。

 「おはよう 小さい つぼみができたね。」

 「 おはよう 見えてきたでしょう。

 今日は少し あったかいからふみちゃんが 学校へ行っている間に うんと大きくなるわよ。」

少し自信有りげなカランコエ でした。


それから毎日毎日ふみちゃんは、カランコエを覗き込みおしゃべりをしていました。

そして 綺麗に咲いた日

 「ねぇ、ひろちゃんだけじゃなくてクラスのみんなに見せてあげるね 。

 綺麗な包み紙をお洋服にして、リボンを付けて、

 私と一緒に明日学校に行こうね。」

とふみちゃんが提案すると

「嬉しい じゃあ、下の方の 黄色くなった葉っぱを取ってくれる?」

 「 痛くないの 。」

 「全然痛くないわよ。

 ふみちゃんが髪の毛切るのと同じよ 。」


 そして ふみちゃんは黄色い葉っぱを切り ママにもらった綺麗な紙をカランコエのお洋服にして赤いリボンをつけてあげました 。


 翌朝 ふみちゃんは、少し早く家を出て学校に行きました。

 

 お揃いの赤いリボンをしたふみちゃんとカランコエ は楽しそうに 一緒に歌を歌いました。


♪♪ 咲いた咲いた カランコエの花が♪♪並んだ 並んだカランコエの花が〜♪♪



 ☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆~~~☆


お読みいただきありがとうございました。

初めての投稿です。

花に携わる仕事をしているので花鉢の育て方を交えながらのお話にしました。

次の作品は、また違うジャンルのお話にチャレンジ予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] とっても、可愛らしいお話しですね^ ^
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