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童話界最強決定戦  作者: 星本翔
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1 桃太郎(その1)

 空に輝く太陽は今日もやたらとニコニコした笑顔を振りまき、小鳥や蝶々は人の言葉でペチャクチャおしゃべりしてる。……はっきり言って、うざったい。

 ここは古今東西のメルヘンチックなものがごちゃ混ぜになった世界、『童話界』だ。

 分かるだろ? あっちの方には虹のかかる大理石の城があるかと思うと、こっちの方ではタヌキが神社で宴会してる。大抵の動物はしゃべれるし、木にも花にも太陽にも顔が付いてやがる。探せば天使とか龍もいるし、離れた所には鬼や悪魔も閉じこめられてる。そんな世界だ。


 俺の名前はヒコイサセリヒコ。……と言っても、残念ながらほぼ百パーセントのやつは、変な名前としか思わないだろう。なら別名はどうだ? 別名『キビツヒコ』だ。これならモノをよく知ってるやつはピンとくるかもしれない。

 ……ピンとこねえか……。仕方ねえ。ホントはこっちの名前は好きじゃねえんだが、今更だ。こう言えば分かるだろ? 俺の名前は、桃太郎だ。

 なーんだ、さっさとそう言えよ、って思ったか? 嫌だね。ホントの俺は桃から生まれてなんかいないし、桃となんの関係もない。当たり前だ。ガキくせえおとぎ話じゃあるまいし。

 そうさ、俺は本当は、おとぎ話の住人じゃあないんだからな。俺は本当は……、歴史上の、英雄なんだ……!

 フンッ。それも、戦国時代とか平安時代とか、そういうレベルじゃないぜ? 俺はもっと、ずっとずっと古代の英雄。聖徳太子より、もっと前。多分だけど、卑弥呼って女より少し前の時代の人間だ。

 俺はその時の天皇の息子だ。……もちろん、その時は天皇って言い方はなかったが……。で、今で言う岡山県の辺りを牛耳ってた『ウラ』って野郎を、俺は家臣や協力者と共に(犬や猿とじゃなく)、命をかけて戦って、倒したんだ。その後はウラに代わって、俺がそこを長いこと平和に治めた。

 岡山県は昔は『キビの国』と言った。だから俺は「キビの国のえらい男」という意味で、キビツヒコって呼ばれるようになった。だから本当は……、俺のことは、「キビツヒコ様」って呼ぶべきなんだ……!

 おい、俺はあんた(・・・)に向かって語ってるんだぞ? この世界はすべて、下界の人間のイメージでできてるんだ。だからあんたらの、俺に対するイメージさえマトモになれば、俺はもっと、本来あるべき姿の俺になれるんだ……! ガキの絵本のふわっとしたキャラなんかじゃなく、歴史上の英雄である、本当の俺に!



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