氷魔法使い、イレフルード
しばらく隔日で投稿予定です
グリモアの学園では食堂がある。
生徒はそこで自由に食事をすることができる。
ご飯は無料で、時間にも縛られない。
なぜならばこの学園は集団授業がそこまで多くないから。
補習や個別指導が多く、同じ時間に休みが取れない。
みんな好きな時間に食べることになる。
「カイル、お前一人? めずらしーな?」
男の子。
この学園にも男はいる。でも割合的には女の子の方が多く3:7か2:8ぐらい。
これは魔法の素質が男女で偏っているわけではなく、男の場合は本業を継ぐケースが多く、数年間拘束されるグリモアの学園なんかには来ないのである。
長男で、経済に余裕があれば家に魔法使いを招いて教育してもらえればいいのだ。
僕みたいに次男以降か、貧困出身で一発逆転狙いで送り込まれるか。
目の前のアンディは僕と同じ、実家はそこそこな家で、五男なので学園に出された。
因みにお金は学園持ち。
その代わり卒業した魔法使いは例外なく魔法ギルドに配属され、そこから学費が引かれていくことになる。
魔法使いの依頼は必ず魔法ギルドを通すので、踏み倒したり、所属しない選択肢もない。
まあそれはともかく、このアンディは僕と似たような立場で、比較的仲もいい。
割と貴族の美少女に言い寄られてる僕は男子に嫌われたりするのだが、アンディはそんなことない。なぜならばこいつは顔で女を惹きつけるからである。
既にセフレが10人いるそうで、寮で女の子連れ込んでやってるところを寮長に怒られたりしている。
そんなアンディが一人と言うのも珍しい。
「アンディも珍しいねー」
アンディは食堂の蕎麦を持ったまま横に座る。
「毎日じゃ身体もたねーよ。今日は休養日。魔法の練習もしねーと退学になるしなー」
グリモアの学園は割と厳しい。試験に落ちたら退学になる。
「大変だねー」
なお僕には試験はない。何故ならば『魔法媒体』は、僕の努力で変わったりするものではないからだ。
学園からは「とりあえず三年はいるように」と言われている。
僕に課せられた課題は
「『魔法媒体の能力解明への協力』と『授業への参加』」だけである。
そしてこの魔法媒体能力解明は、学園に着くなりすぐに終わった。
僕の『魔法媒体』を見つけたミラーさんと、ミガサさんが学園に来て
「とりあえず私なりの考察です」
と冊子を持って先生に渡した。
過去にいた『魔法媒体』の持ち主の効果と、実際に僕が発現した『魔法媒体』の近似性の考察。
「あなたはこの三年の間に、自分で決断することが大事だと思います」
そう言って去った。
なにを為すべきか。この三年で決めなさいと。
「お前は今日も魔法の練習? 女にモテるって言ってもお前に付きまとってるの、やべー女しかいねーしな。抱かせてももらってないんだろ?」
抱く。
昼間にする話ではないが
「……誰かにそれやったら、強制的に連れてかれるよ」
僕の言葉に笑うアンディ。
「まあ、頑張れよ。学園もお前に期待してるみたいだしさ」
普通に応援してくれて、特に魔法の練習にも誘わないアンディ。
ああ、君が女の子なら良かったのに。
「さあ、練習するわよ」
目の前でイレフルードが微笑む。
イレフルードは氷魔法の使い手。
水と氷が使えるわけなんですが、部屋で発動されても困る。
なので寮の部屋ではなく、水や氷を思う存分出せる場所。
寮の水浴び場。
水浴び場の使用時間は男女で厳格に決められていて、勝手には使えない。
何しろ職員の水魔法使いがいないと水浴びできないし。
逆を言えば、時間外なんで場所だけ貸してください、と許可を取れば使える。
なので職員に許可を取り、二人で入っているのだが、イレフルードは半裸。
水を大量に使うから、なんだけど美少女が布一枚というのはものすごいドキドキする。
「本当にそういうところは男の子ね、カイル」
イレフルードは僕が顔を赤くしているのを楽しそうに見る。
イレフルード自体は女の子が好きだと思うんだけど。僕にはこうやってからかってくる。
男の子、と言われても。僕はこうやって構われるけど、アンディと違って付き合ったり抱き合ったり、キスしたりはしてない。ほっぺにとかはされるけど。
普段のイレフルードの水魔法も見ているが、全然効果範囲が違う。
今のイレフルードは、水浴び場全部に届く範囲で水を操る。
おかげで僕の服はびしょ濡れです。
「魔法媒体の能力は十倍じゃ効かないわね。ありがとうカイル」
イレフルードも当たり前のように水びたし。
そうなると……、まあ胸がね。目がいってしまう。
「ふふふ♪ みたいの? 私の奴隷になるならいくらでもどうぞ?」
奴隷は嫌です。
でも貴族から見た平民なんてそんなもんだろうしなぁ。
「身体は期待してるみたいだけど?」
そう言って股間を見られる。
慌てて隠す。
そんな棒立ちの僕を抱きかかえてくるイレフルード。
「わっ!」
水びたしで、濡れたイレフルードの密着。
冷たいけど熱い。
顔がどんどん熱くなる。
「いくらでも抱いてあげるわよ? よく考えてね?」
耳元で囁かれて、気絶しそうになった。