表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/25

魔法媒体とはなにか

 女の子にモテたら嬉しいですか?→はい

 勝手に未来を決められたら嬉しいですか?→いいえ


 それだけである。

 なのだが、その違いが分からない人達が多い。


「カイル、付き合って」

 長身の女性。


 この娘も学園生。

 真面目で美形で、同性の女の子達からモテモテ。


 魔法使いは女性が多いからこの学園も女の子の方が多い。だからそういう女性同士の付き合いもよくは見るけど、このイレフルードも女の子同士で付き合ったりしている。


 男にはあんまり興味がなく、僕のことは単に魔法媒体が便利だからぐらいの関係……のはずなのだが


「イル様、こんなのに話しかける必要はありません。私が代わりにやります!」

 いつもイレフルードと一緒の取り巻き、ファーミルが張り切って喋る。


「そこのカレー! イル様のお手を煩わせる前に黙ってやりなさい!!!」


 このファーミル、本当に面倒くさい性格をしていて。ファーミルを無視してとりあえず僕はイレフルードに手を差し出す。


 魔法媒体の能力は基本的に密着して発動するからだ。最低でも手は繋がないと意味がない。


 なんだけど。

「あーーーー!!! イル様の御手を触ろうとするなんて!!!」

 これである。


 それも毎回これなんだもん。


「ファーミル、うるさい」

 イレフルードの言葉に黙るファーミル。


「今日は遠隔の氷魔法に挑戦するから」

 そう言うなり僕を包み込むように抱きしめてくる。


 女性にしては長身、僕は背が高くないから、少し彼女の方が大きい。

 香水のいい匂いにクラクラしていると、いつものように、そう、彼女はこれをやるとき、いつも小声で囁いてくる。


「わたしのものになりなさい。わたしの奴隷になりなさい。そうしたらきもちいいことしてあげる。下民のあなたに抱かせてあげるわ。他の女も使ってもいいわよ。だから私に従いなさい」


 洗脳をするようにずっと囁くのだ。本当に怖い。またいい匂いに包まれながら、汗の匂いも混ざってくるからクラクラしてくる。


 長身でも柔らかい身体。

 本当に流されそうになるが


「いつまでくっついてるんだーーー!!!」

 ファーミルが騒いで終了。


 毎回これ。


「……ルーフェみたいな、クソビッチに靡いてはだめよ。またね」


 そう言って、耳にキスされた。



『魔法媒体』という能力とはなんなのか。

 触れるだけで魔法量が倍増する。というのは簡易的な説明で、実際はかなり複雑な話になる。


「そもそも『魔法量』とはなにか」

 グリモアの学園に入りたてで、まだ僕には知識がない。


 そんな僕の為に個別で授業が組まれたりしている。


「物事を知るためには、用語をしっかり抑える事です。よく混同されますが、『魔力』と『魔法量』は別のものを指しています」

 僕は先生から渡された巻物を見ながら話を聞いていた。


「魔力というのは実は二つの要素があります。憶えていますか?」

「……え、ええっと。魔法量と、瞬発力……です」

 巻物に書いてあったのでそのまま読み上げる。


「そうです。魔力と呼ばれるものは、魔法量と瞬発力の総合的な評価を言います。この『瞬発力』というのは同じ魔法でも、瞬発力が違う人が使うと、威力が変わります。同じ氷魔法でも範囲が違うなどです」

 一回習ったんだけど、ここらへんの話は難しい。


「ところがです。氷の魔法だけでも魔法の種類は100種類を超えます。また、最近は合成魔法というものまで開発されており、『瞬発力』が低いなら低いで、他の魔法で挽回できてしまうのです」


 威力は低くても、他の魔法を使えば挽回できると。それは確かに分かる話。


「次に魔法量。これがあなたに関わる話です。大抵の魔法使いの言う『魔力』とはこれを指します。魔法は魔力を使う。こういう表現があふれているのは、魔力=魔法量を指しているからですね」


「ふむふむ」

 そこらへんの話は何回か聞いてはいるんだけど、こんがらがる。


 僕の『魔法媒体』は『魔法量』を倍増させる能力なのに『魔力』を倍増ってよく言われる。


「この魔法量というものについて。これは魔法を使えば使うほど無くなっていきます。

 そして先程の『瞬発力』にも関わる話なのですが、強力な魔法を使うと一気に空になり気絶してしまう」


 そう。ここはよく言われる。魔法量が少ないと使える魔法に制限が出ると。


「この魔法量が倍化するメリット……実際は倍どころじゃないんですが、これが魔法使いにとって重要すぎるのです。魔法量が多くあれば、基礎魔法を大量に使うこともできるし、強力な魔法も使用することも出来るようになる。魔法使いには様々な仕事がありますが、魔法量が関係ない職業は殆どありません」


 それで、僕みたいなのが重宝されると。


「特にあなたを狙っている魔法使いは皆貴族です。宮廷魔導士に採用されればその未来は約束されます。流されることなく、自分の意志で未来を掴み取れ。そう、ミラーさんから言われています」


 ミラーさん。

 この人が僕の『魔法媒体』を見つけてくれた。

 僕は大きく頷いて、決意していた。



 授業が終わると、ひとりの女の子が待っていた。

「一緒にかえろー♪」


 僕を取り合ってる女の子は5人いる。その中の一人ロミスニア。


 他の女の子達がいる時は来ない。僕が一人になると唐突に来るのである。


 どうも僕の行動パターンを追跡魔法で抑えてるらしいんだけど。


「帰りながら練習するからねー♪」



 ロミスニアは僕の腕に抱きつきながらずっと魔法を唱えている。


 魔法量が増えている状態に慣れると、実際に魔法量が底上げされる。

 だからこういう風になるんだけど。


 そんなロミスニア。

 僕にまとわりつく女の子達はどっか壊れてる娘が多いんだけど、特にロミスニアは


「カイルはなにされたいの? なんでもしてあげる。お金欲しい?」

 こんな感じ。


 前もいきなり金貨持ってきて、顔面にぶつけてきたのだ。


「あんまり、そういうのはー」

「ここは頭おかしい女多いから、早く出て行った方がいいよ。私の故郷グラドニアに行こう」


 結局これ。


 みんな誘ってくる。

 理由は能力。


(……本当にちゃんとしなきゃ)

 僕は寮に帰りながら色々考えていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ