グラドニアからの拒絶
抱いていい。
「私が部屋にいるのに交尾されても困るんですけど」
ミガサさんからの突っ込み。
「出て行ってください」
ルーフェ
「じゃあ事前に別の部屋用意して起きなさいよ」
「予定外なんです!」
まあ当日にお断りされるとは思ってなかったと思うんだけど。
「カイルみたいな奴がきっぱりはっきり、『この国でお世話になるのはなしだなー』と思うぐらいの対応しか出来なかったんだから諦めなさいよ」
「……で、でも! 貴族よ! この国で貴族って凄いの!!! それが分からないんでしょ!!!」
「私はビネスト公国行ってないから知らないけど、少なくともメタ公国は王様出てきて歓迎してたわよ」
まあ、あれは詫びだと思うんですけど
王様が出てきた、に顔が引きつるルーフェ。
「イレフルードも歓迎パーティーとか開いてたし。そら、あれに比べたら微妙だなーにもなるでしょ」
まあそれはそうなんですけど。
「……だ! だったら! 私を抱いても……」「なんかイレフルードとかいう女は、取り巻きの女巻き込んで乱交オッケーにしてたよ」
いや、そんなことまでは言われてはいませんで。
でもミガサさんの言葉でなんかルーフェは納得したみたいに頷き
「……あの、クソビッチ……なにが、男には興味ないよ、嘘つき女」
「あれよりもビネスト公国がいい、とか言うなら実際よっぽどよくされたんでしょ? 諦めなさいよ」
「……あ、あんなチンチクリン女のどこがいいのよ!!!」
チンチクリン。
ミガサさんが不思議そうな顔してこっちを見る。
「……まあ、ハンローゼは……」
性的魅力は殆どない。だからこそ
「付き合いやすいなーって」
いや、一方的に誘われてるんですけど、正直そんな男女の仲になるほど親しいわけでもなく。
特に学園に入るなり、いろんな女の子に誘われた僕には、一人の子とゆっくりと仲を進展させるなんてなかった。
だからこそ
「ハンローゼは意志の疎通には時間がかかるけど、そういうところから始めてみたいなって」
ハンローゼの意志疎通の難しさはむしろ、これからの関係構築という意味では望ましい。
「……うー! うー! でも!!! 一緒にいてほしいの!!! 宮廷魔導士になれそうなのよ!!! カイルがいれば!!! 私も家も! 出世できるの!!!」
「ここまで清々しいほど『お前は出世の踏み台』と断言出来るのも凄いわね
「ルーフェは貴族で、僕は下民ですからねー」
身分差は絶対的なもの。これが普通なんだよねー。
貴族にしてくれる、となれば下民は泣いて喜んで当たり前。
それが普通だとは思うんだけど。
「それでもハンローゼが出した条件がいいかなって」
結局「王族の娘が正妻になり、身分は高級貴族となる」というハンローゼの提案には勝てないよね? ということでルーフェはうなだれながら納得した。
「グラドニアもとっとと終わらせましょうよ」
ミガサさんは言いながら僕を引きずって歩く。
「いや、あの歩けますから」
「歩くのが遅いのよ」
実際ミガサさんは歩くの速い。多分魔法使ってるんだろうけど。
「あなたの魔法媒体は凄いわね。全然疲労しないんだけど」
手は握られているんですが、魔法媒体が発動してるのは気付かなかった。
「凄い能力ですね。僕にはよく分かんないです」
「それが悲劇なんでしょうね。師匠が言ってましたよ。決して人を幸福にはしない能力だと」
少し同情するような顔をして
「ちゃんと決断させなさい、と師匠も言っています。自発的に決断したんです。もうそれで決まりでいいでしょ? どうせグラドニアにもロクな男いないでしょうし」
グラドニア公国。
ロミスニアとラウバイが転移先で待っていました。
「……そ、その」
暗い顔をするロミスニア。
およ、これは?
後ろに立っていたラウバイが
「本当に申し訳ないけど。回れ右してどうぞ。残念ながらうちの国はまともな待遇は用意出来ません」
「……ぅぅぅうううっっっ!!! なんでよ!!! 国の馬鹿!!! エネビットも! メタも! ビネストも貴族の座を用意したんでしょ!? なんでうちはそれも用意出来ないのよ!!!」
おお。なにか言う前に結論が出されていました。
「ごめんね。僕もハンローゼのビネスト公国にお世話になろうかと思って」
「それがいいわ。お元気で」
にこやかに手を振るラウバイ。
「ラウバイ! 勝手に決めないで!!!」
「諦めが肝心よ。うちの国は無理でした。それだけの話だから。じゃあねー」
結局グラドニアには転移しただけ。
そのままビネスト公国に移動した。
「カイル! カイルー!」
嬉しそうに抱きついてくるハンローゼに
「うん、ハンローゼ。お世話になるから。よろしくね」




