拘束されるカイル
ドラゴンを呼び出したハンローゼさん。
そのあとに「……???」
ハンローゼとドラゴンが同じように首を傾げる。
多分これは
「ハンローゼ、このまま帰ってもらえばいいと思うよ」
人間とまともにコミュニケーション取れないハンローゼだが、それは魔法で使役する動物に対してもそうなのである。
呼び出しました。でもなにか出来るわけではない。
『使役魔法』は遣い手の記録が少ない。
伝えられている伝説は大げさなものが多いとされている。
ドラゴンを使役というのも伝説にあった。それはハンローゼが実演したけれど、そのドラゴンを使い国を滅ぼしたと。
でもハンローゼ、呼び出すことはできても他ができない。
大抵において呼び出すだけ呼び出したら、鳥さんたちはその場で糞をして帰っていく。
これは呼び出すことしかできないというよりも、命令がうまく伝わらないんだと思う。
割と「それどうすんの?」みたいな能力ではある。そしてそれは能力がいたらないのではなく、コミュニケーション能力のせいだと思う。
「かえって、かえって」
口と身振りでドラゴンに呼びかけるハンローゼ。
でも、ドラゴンは首を傾げたままどっしりと座り込んでしまう。
これ呼び出した鳥さんたちもそうで、よく教師から「もう返しなさい」と言われても困った顔で鳥さんの頭をペシペシ叩いてるときがよくある。
でもドラゴンはなにかを悟ったらしく、すぐに立ち上がって飛び去っていった。
「褒められた、褒められた」
僕の部屋に来て踊るハンローゼ。
いや、もう遅い時間なんですけど。
「ハンローゼ。帰るのは明日で朝早く出るんでしょ? 早く寝なよ?」
僕の問いかけに首を傾げながら
「ふたりきり。寮じゃない」
二人きりで寮じゃない。つまり?
「……え?」
いや、思考が飛んでる気がするんだけど。もしかしてハンローゼが言いたい事って
「いっしょ。いっしょにねよー♪」
いやいや。
「ハンローゼ。そういうのはね。ちゃんと色々考えてから……」
王族の娘と一晩明かした=それは当然既成事実になるわけで
「みんな、喜んでくれた。だから、いっしょ」
ぎゅーーー。
うーん。
「ハンローゼ。僕はここに招かれて、とてもちゃんと良くされたから。他の国も見てみるけど、なにもなければハンローゼにお世話になるから。ちゃんとしよう」
僕の言葉に頬を膨らませ
「他の女だめ。特にイレフルードとルーフェはだめ!!!」
怒ってる。
「多分だけど、あの二人ここまでちゃんと出来てないと思うよ……」
多分なんだけど。
この完璧に近い段取りは
「ハンローゼはまともに意志疎通できない」
という前提で動いてるからだと思う。
僕もドラゴンとお見合いしてるハンローゼに声かけた理由もそれ。
周りが色々考えるから、ここまで上手くいくんじゃないか。
逆を言えば
「わかんないと思えば、割と通じるもんだしね」
学園に戻るなり囲まれました。
『どっち!?』
イレフルードとルーフェが同時に叫ぶ。
次はどっちの国? という話だと思いますが
「ルーフェごめんね。ルーフェの後にグラドニア行くから、先にイレフルードでいい?」
ルーフェのエネビット公国と、ロミスニアとラウバイのグラドニア公国は隣国。
一気に行けるのだ。
「……まあ、ロミスニアより先ならね」
「歓迎するわ、カイル。行きましょう」
とりあえず各国回ってから決めようとしたわけなのだが。
このイレフルードのメタ公国でその考えが間違いだと思い知らされた。
牢獄なう。
「なんでー」
転移するなり兵士に囲まれて即連行。
イレフルードが叫んでいたが、待ち構えたようにグルグル巻きにされて牢獄にぶち込まれています。
「なにをしたっていうのだー」
でもなんとなく気付くことがありまして。
「無理矢理拘束して、道具みたいに使う気?」
よく考えたら国から見たら他国の下民なんてそんな気分だろーしなー。
ハンローゼとビネスト公国が特殊すぎたのだ。
となれば脱出しましょう。そうしましょう。
「どーしよーかなー」
その地下牢に突然
「いくらなんでも迂闊すぎでしょう。師匠が心配しています。帰りますよ?」
僕の魔法媒体を見つけ出した人達の一人が現れた。




