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プロローグ

 



 ──……ワン……と、低い犬の声がした。


 苦々しい響きなのに、どこかしょんぼりとしたふうの声に、娘は一瞬、え? と、目をまるくする。

 いや……声と言ってもそれはどちらかというと“鳴き声”というべきか……

 音だけ聞けば、それは単なる犬の鳴き声のようなのだが……

 その声が、はっきりと今、目の前の存在から発せられたのを目撃した娘は……唖然としてしまう。


 大きく見開かれた娘の青い玉のような瞳の先には──狼族の獣人騎士が一人。


 立派な騎士団の衣を身に纏い、襟元には団長の徽章をつけている。

 彼はひと鳴きしたあとは、それきり。苦悶の表情を浮かべたまま、恥入ったように何も言おうとはしなかった。


「…………」


 コニーはぽかんと口を開けた。

 頭の中で、問題の『……ワン』が、何度も何度も反芻され続けている。


(……スタンレー様が……『ワン』……?)


 唖然とした娘の気配が伝わったのか、スタンレーは気まずげで彼女を見ようともしない。

 先ほどの鳴き声を恥じているのだとは、もちろんすぐに分かる。


 ──ただ。コニーが目を瞠っていたのは……

 多くの騎士たちを束ねる団長たる彼が、彼女の目の前で、落ち込んだ犬のような鳴き声を出したのが滑稽だったから──などではもちろんない。

 鍛えられた大きな身体に見事な毛並みのスタンレー。炎のような赤毛の中にある凛々しい金の双眸は、しかし今はしょんぼりと暗い。おまけに頭の上の三角の耳はしゅんと下に垂れ下がっていて……

 そんな獣人騎士団長の様子を見たコニーは動揺する。


(こ、これは……)


 心臓が──ギュンッと何かに鷲掴みにされたような衝撃を受けていた。


 ──騎士団長スタンレーが、あまりにも……

 ──かわいくて。


(ひっ……)


 そう思った瞬間、カッと頭に血が上って、全身にじんわりと汗が噴き出て来た。

 心なしかスタンレーの巨体がキラキラと輝いて見える。


(な、なんなのこれは……)


 そんな己の状態に、コニーはうろたえて身をこわばらせる。しかしなぜだかスタンレーからは、どうしても視線を外すことができなかった。

 動悸はどんどん早くなっていく。

 しゅんと身を縮めている巨体の狼獣人がかわいくて……かわいそうで……

 今すぐ駆けより、抱きしめて、慰めたい衝動に駆られる。──相手はそんなことを気安くできる存在ではないというのに。


(う……つら……かわ……)


 かわいくて──つらい。

 そんな複雑な堪らなさに囚われて。

 コニーはブルブル震えながら、真っ赤な顔でうめいている。

 

 






お読みいただきありがとうございます。

…思い切り趣味に走ったお話を書き始めてしまいました。

ちなみに…お分かりになる方はほとんどいらっしゃらないでしょうが…

スタンレー=ギズルフな気持ちです、ほとんど。笑

プロットの感じでは、中編くらいになるかなと思います。ほのぼのお読みいただきたいので、ほのぼの書いて行こうと思います。おつきあい頂けると嬉しいです。


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