表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

77/91

離さない離したくない


「ふえええええええぇぇ」

 俺の胸で綾波が奇声をあげている。

 綾波の頭を抱き締め俺の胸に顔を押し付ける。

 走ったせいか綾波の汗の匂いが仄かにする。

 綾波の甘酸っぱい汗の香りが俺の鼻腔を刺激する。

 なぜこんなに甘い匂いがするのだろうか? 雪乃もそうだったけど……綾波はそれよりも、もっともっといい匂いがする。


「ごめん……泣かせて……ごめんね」

 俺がそう言うと綾波は僅かに首を振った。


「……は、離して……」


「……嫌だ」


「ふええええ」

 このまま永遠に抱き締めていたい。とりあえず後5分でいい、いや、3分でいい……もう少しこのままで……いさせて下さい。


「あ、あの……あの……逃げないから……そろそろ……」

 周囲からの目線を感じたのか? 綾波が恥ずかしそうに懇願してくる。

 俺はゆっくりと綾波を離すと、やはり見られたく無いのか綾波は前髪をささっと直していつもの様にうつ向き顔を隠した。

 俺は芝生に落ちている眼鏡を拾うと綾波に渡す。


「あ、ありがと……」


「壊れて無い?」


「……うん、大丈夫……」

 そう言って眼鏡を装着し、いつもの綾波になる。


「ちょっと話したいんだけど……良いかな?」


「あ、うん……」


「じゃあ……そこのベンチに……」

 そう言って綾波をベンチに誘う。

 とりあえず綾波をベンチに座らせ、逃げないのを確認すると、俺は近くにあった自販機で冷たいお茶を二本買い綾波に渡すと少し間を開けて隣に座った。


 とりあえず……どうするか? 泣かせてしまった事はさっき謝った。

 これ以上謝る……事ではない気がする。


 ただ、原因はわかっている……俺は綾波を綾波とは思わなかった。俺は綾波を綾とあやぽんと思ってしまった。

 いや、あやぽんには間違いないんだ、俺は綾波のお姉さん、本当のあやぽんよりも、綾波のあやぽんの方が好きなんだ。

 

 そしてそれはなんとなく気付いていた。本当に、なんとなくだけど、あやぽんの違いに……。

 

 そして、結果それは綾波だった。


 だから……俺は今の綾波に出会う前から、綾波に会っていたんだ。

 そして救って貰っていたんだ。


 この奇跡の出会いを俺は神様の思し召し、綾波様の思し召し、あやぽんの思し召しだと思ってしまった。


 あやぽんは俺にとって神様と同等、つまり綾波は俺にとって神様の様な人だって……そう思ってしまった……。

 だから綾波は泣いたんだ……そんな情けない俺に対して……自分の友達がそんな情けない事を思っていると……俺が……可哀想だと……。


 じゃあどうすればいい? 俺は綾波に対して何を言えばいい?

 わからない……謝る事じゃ解決しない……じゃあどうすれば……。


 ああ、もう……言え、考えて答えがでなければ、本能で、反射神経で言うしかない!

 俺はお茶を持って悲しそうにうつ向いている綾波の手を強く握った。

 

「ふえ?!」

 綾波が握った手と俺を交互に見る。

 そんな綾波に構わず俺は言った。


「綾波……俺と……友達を止めて欲しい」


「……え?」


「俺との……友達関係を解消してくれ……」


「──そ、そん……な…………うん……だよね…………私なんかとじゃ……涼……くん……恥ずかしい……よね……泣くし、可愛くないし……ご、ごめんね」

 そう言うと綾波は立ち上がり再び逃げようとするが、俺はこうなる事を予想し先に手を握っていたのだ。

 立ち上がろうとした綾波の手をさらに強く握り、腕を軽く引いて再びベンチに座らせる。


「違う……最後まで聞いて、聞くって……逃げないって言ったろ」


「だ、だって……辛いし……悲しいし、また……また涙があああぁ……」


「最後まで聞いて! いや聞け! いい? 俺は、俺は……綾波が好きなんだ! だから……もう友達は嫌だ……だから……俺と……俺と付き合ってくれ!」


「…………へ?」


「……くっ……へ? は無いだろ? へ? は……」


「……だ、だって……へ?」


「……ああ、また! だーーーーかーーーーらーーーー! 俺と付き合えって言ってるの! わかった! わかったら返事は?!」


「は、はい! あ、あああああああ!」


「よし! 言ったからな! 聞いたからな! 取り消さないからな!」

 もう照れ臭く、そして断られる恐怖から強引に了解させる。

 でも言った……綾波は確かにはいって、よし、これで俺達は友達から恋人にランクアップ……。


「で、でもでも……あの……草刈さんは?」


「──え? 雪乃が何?」


「あの……一応二人は付き合っている事になっているんじゃ? それなのに私とって、あの……色々問題が……起こりそうな……」


「い、いや、でも振りだし」


「で、でも約束は約束……だから……口約束も契約だから」

 さすが仕事しているだけの事はある……そういう事に詳しい綾波。


「あ、ああ、だよね、あははは、じゃ、じゃあとりあえず雪乃に許可を貰ってから……なら……良いのかな?」

 確か雪乃は、他に付き合いたい人が出来たらいつでも言ってねって言っていたよな?


「…………う、うん……」

 綾波は真っ赤な顔でコクリと頷いた。

 

 よし! まずは雪乃と話をして、恋人の振り契約を解消して貰わなければ……。


 そうすれば俺は綾波様……おっと、綾波と付き合える……あやぽんと付き合えるって事だ。


 いやっほおおおおい!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
     新作!         
  娘の様な義理の妹に恋なんてするわけが無い。          
  宜しくお願いします。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ