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私が好きなのは……お兄ちゃんだけ。


 相手の事を知りたいって思う事が……恋の始まり。

 恋は知識欲の一つだ……相手の事をもっと知りたい、心も身体も、もっと知りたいって思ったら……それは恋。


 だから……幼なじみは恋に発展しにくい、知りすぎているから。

 そして…………私も……。


 幼い頃から一緒にいれば相手の良い所、そして悪い所なんて全部見えてしまう。

 人はより良い物を求める。生活、学校、会社、そして恋愛相手も。

 

 悪い所を知ってしまうと、より良い物があるんじゃ無いかと疑ってしまう。


 でも実際、次に出会う物が良い物とは限らない。


 雪乃さんもお兄ちゃんも、今はそう思っている。

 積み重ねた物を壊して、より良いものをそこに添える。そして相手を見返してやるって思うのは、本能だ。

 特にお兄ちゃんはそう思った筈……私がそう……思わせた。


 でも、一歩引いて考えてみよう、本当にその目の前にいた人は、自分にとって必要としていないのか? ってね。


 本当に全部知ってしまったのか? ってね。


 雪乃さんとお兄ちゃんは兄妹、家族の様に積み重ねてきた物があった。

 私以上に家族として積み上がってしまっていた。

 だから我儘を言う、だから嫌々ながらも付き合ってしまう。

 人は積み重ねてきた物、積み上げて来た物を壊したく無いから。


 だから一度壊した、壊させた。二人で積み上げて来た物を一度バラバラにした。

 すると生まれる、疑いや後悔、妬み苦しみ。

 でも、全部壊したわけではない、全部壊してしまったら、赤の他人と一緒になってしまう。ビハインドがなくなってしまう。

 そもそも全部壊そうとしても壊れるわけがない。

 雪乃さんとお兄ちゃんの関係は全部壊れはしない。それは確信していた。

 二人の土台は、基礎はしっかりしている、お互い心の奥底では信頼している。好きでいる。という土台だ。


 今まで積み上げていた物は既に限界が来ていた、あのまま積み上げようとしても、ガラガラと崩れてしまう。

 歪な関係、他人なのに家族という、歪な関係。


 幸いな事に、中学時代雪乃さんは自分の事に没頭していた。

 お兄ちゃんとの関係が一時期希薄になっていた。


 お兄ちゃんの中で雪乃さんの成長という知識が欠けていた。


 だから今回それを突く、雪乃さんの成長を、お兄ちゃんの知らない雪乃さんを見せつける。



 雪乃さんの家で今後の話をしていた私は、雪乃さんに提案する。

「よし! 雪乃さん明日空いてるよね! じゃあ水着で攻めよう」


「ええ?!」

 多くは語らない、雪乃さんは頭の良い人だから、私の言った事を鵜呑みにしない。

 だからヒントだけ出す。方向だけ示す。

 すると雪乃さんは自分で答えを導き出す。

 

 下準備は済んだ、明日から雪乃さんとお兄ちゃんの再構築を始める。


「水着姿を……涼ちゃんに見せるって事?」


「うん、雪乃さんの違う姿を見せるの」


「……違う……姿」


「そしてそのまま夜に、大人っぽい所も見せる……今までと違う雪乃さんをお兄ちゃんに見て貰おうよ」


「今までと……違う私…………うん……そうか……そうだね」

 雪乃さんは直ぐに理解してくれた。

 うん、やっぱりいい、そういう所、雪乃さんは最高だ。

 将来私の義理の姉になれる素材……素材だけだけど……ね。



◈◈◈


 

「上手く行った、後は雪乃さん次第かな……」

 お兄ちゃんと雪乃さんを二人きりにして、私はホテルを後にする。

 着替えがめんどくさいので、そのままの格好でタクシーを拾い自宅に向かう。


 あはは、お兄ちゃん……雪乃さんの水着姿にみとれてた……。

 雪乃さんもレストランでのお兄ちゃんの所作を見て、同じ様にお兄ちゃんの良さを再認識していた。

 

 作戦通り、二人は意識し始めている。

 お互い崩れた物を組み立て始めた。


 ただ……お兄ちゃんの視線がチラチラと私に向いていた。

 私の悩殺水着に気を取られていた……のでなければ。


 多分疑っていたのだろう……私と雪乃さんの関係を、これは何か仕組まれたのでは無いかと……。


「まあ、仕組んだんだけどねえ、ふふふ」


「は?」

 運転手さんがチラチラバックミラーで私を見ている。


「いえ……何でもないです~~」

 私は視線を反らして窓の外を眺める。

 きらびやかなネオン、街の灯りが流れて行く。

 

 私はまた雪乃さんとお兄ちゃんの事に意識を戻す。


 あの二人はこのままほっとけば、じわじわ再構築を始める筈。いずれ付き合うだろう。


 ただ問題はあいつだ。


 あのゴスロリ女と芸能人の二人。

 あの二人が気になる。お兄ちゃんとの関係が気になる。

 ただのファンじゃない、ただのクラスメイトじゃない。


 でも……ふふふ。


「ま、いっか」

 お兄ちゃんと付き合うのは大変だ。

 特に雪乃さんみたいな負けず嫌いの秀才タイプだと苦労する。

 何でもそつなくこなしてしまうお兄ちゃん、中学までならまだいい、普通の学校ならまだ大丈夫だった。

 普通の学校でそつなくこなすのと、今の様なトップクラスの学校でそつなくこなすのとでは、天と地くらいの差がある。

 多分お兄ちゃんならば、ボーッと授業を聞いてるだけで、それなりの大学に行けてしまう。

 雪乃さんはそれに気が付いている。

 それでもお兄ちゃんに拘る。


 でもお兄ちゃんとまともに付き合えるのって、多分私みたいな人? 天才肌の様な人じゃないと苦労する。


 普通の人じゃあ無理……。

「雪乃さんは……苦労するだろうなあ……」


「はい?」

 また運転手さんが私の方を見る。


「何でも無いです、あ、この辺で良いです」


 とりあえずのんびりしてたら鳶に油揚げって事になりかねない、私はタクシーから降りると、家に入りリビングに向かった。

 そのままのソファーにスカートが捲れるのも気にせずドスンと座り込む。

 そして徐にスマホを取り出すと、さっきそっと撮ったお兄ちゃんと雪乃さんの写真を画面に出した。

「ちょっと掻き回して探ってみるか……」

 私はメッセージソフトを立ち上げると、その写真を添付してメッセージを送る。

「動くかな? 動くよね?」

 あの芸能人と会うってのをどこで知ったのか知らないが、それだけで後を着ける様な奴だ、これを送ればきっとお兄ちゃんに会おうとする筈。


 あのゴスロリ女がどんな奴か探ってみないとね。


 仮に……もし雪乃さんとお兄ちゃんが上手く行かず、お兄ちゃんが雪乃さんを選ばずに、あの芸能人かあのゴスロリ女と付き合う事になれば、そうなったら……まあ、そっちを取り込むだけ。

 

 雪乃さんとお兄ちゃんが付き合えば私が入り込むのが楽ってだけ。



 別に私は雪乃さんの事を好きなわけじゃない……。


 

 私が好きなのはお兄ちゃんだけだから……。

 

 私は妹……お兄ちゃんの妹……。

 お兄ちゃんは私とだけは……一生……離れられないのだから。



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     新作!         
  娘の様な義理の妹に恋なんてするわけが無い。          
  宜しくお願いします。(੭ु´・ω・`)੭ु⁾⁾
― 新着の感想 ―
[一言] 本命 雪乃 対抗 明日菜 穴  綾 大穴 楓 と言う所でしょうか 4連単は流石にむずかしい。 雪乃が先頭,独走状態です。明日菜、日菜は2人身遅れ。、おおっと楓が鞭を使った。 楓びる伸びる。…
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