ダンジョン発見
「体や服を一瞬で綺麗にする魔法はあるけど、やっぱり川の方がいいな。何となく。」
「ん。」
まぁ、クロのは最上級装備だからすぐ乾くけど。ん?俺?クロ程じゃないけどすぐ乾くよ。布装備って軽くていいよね。
乾いたので装備を付け直す。そうしていたらクロがクイッと裾を引っ張った。可愛い。
「あっち、なんか、ある。」
「…なんか?」
「ん。」
クロが指さした方には森が広がっている。何かがあるようには見えないが…。
「いこ。」
「分かった。」
即答した。クロ以上に優先すべきことがあろうか。いや、ない。
「おまえ、ほんといい子だな。」
「ありがと…」
いつもの無表情に見える。しかし、俺には分かるのだ。これ、照れてる…!可愛い…
「あった。あれ、なに?」
「…ダンジョンじゃねぇか。」
森の中を30分程歩いたか。ダンジョンの入り口であろう洞窟を発見した。
「ダンジョン?」
「あー。ダンジョンっていうのはな。」
ダンジョンとはダンジョンコアという宝石が自らを守るために製作した城のようなものだ。大抵は最深部にダンジョンコアがある。さらにダンジョンには魔物が大量にいて、ダンジョンコアを守っている。とにかく、ダンジョンコアが破壊されないようになっているのだ。
「ダンジョンコア、破壊、すると?」
「ダンジョンは消える。」
「…生き物、みたい。」
ダンジョン(ダンジョンコア)生き物説もあるらしいが俺は専門外だ。それに先程言ったダンジョンについての説明も、最も有力な説だというだけで正しいかどうかは分からない。神のみぞ知る、というやつだ。
「なるほど?」
「まぁ、その辺は分からなくても特に問題は無いぞ。ただ、ダンジョンで魔物を倒すと、素材を残して消える。」
「なんで?」
「それを考えるのは俺らの仕事じゃないさ。今日は遅いし、ここらで野宿だな。」
そう言うと、クロはとてとてと歩いて薪となる枝を集めていく。ついでに香辛料になる草も集める。超有能だ。ただ、たまに魔物を狩ってくるだけで。
もう夕方。無理して進む必要はないだろう。
「アル。オークがいい。」
「うん。分かった。」
道中で(クロが)狩ったオーク肉をその辺の枝を加工して作った串にぶっ刺し、焚き火で焼く。パチパチと火が爆ぜた。
「…アル。ダンジョン、行きたい。」
「明日な。」
「ん。」
この子は無愛想に見えるが感情が表に出ないだけで素直だし、色んなものに好奇心を向ける。それが愛おしい。
美味しくオークをいただくとクロはうとうとしだした。
「眠いか?」
「…ん。」
『何人たりとも宝に触れることは許されぬ。其が力は慈しむために。護るために。』
さて、寝るか。結界も張ったし。クロの睡眠の邪魔はさせん。
能力の無駄遣い?知るか。