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第3話


 なるほど――火災の火と煙が上がる街の中でエンゼリカから話を聞いたベイクは肯く。


「……しかしヒドい有様だ」


 家々は軒並み潰されているか、燃えて崩壊している。

 街の人間は皆、既に逃げ出しているのだとエンゼリカが目を伏せながら言う。消えない火は、消す者が居ないから消えないのである。


「つまりおたくがあのデカいのにケンカふっかけたからこうなったってワケで、しかも危うくなった最後は人頼み……結構な話だ」


 事実。しかしてエンゼリカはそのような軟派な理由から戦いを挑んだわけでは無いとベイクの言葉に苛立ちを覚えた。

 だが口にしなかったのは、彼がそう言いつつも家だった物の、今は瓦礫の山へと歩み寄って行くからだった。


 そしてベイクは瓦礫の山へと手を伸ばし、一つ一つ退かしながら続ける。


「ま、気持ちは分かる。オレもそう言う気持ちで戦ったことがあるからな。それに、誰かを頼るってのも悪いワケじゃない。出来ないことをしようとしても、良い結果になるとは限らない。そして頼った結果、アンタは生きてる」


 何をしているのか、語るベイクの行動に困惑するエンゼリカであったが、やがて彼が瓦礫の下から男性を一人、引っ張り出してはっとする。

 同時にそれが、自らの行いが如何に浅はかであったかを見せ付けられたようで彼女は歯噛みした。


 もう大丈夫だ――ベイクは救出した男性へと声を掛けると、男性の傷の調子を確かめつつ、彼が楽になれる体勢を探し出して休ませる。


「大丈夫だが……スゴく痛いぞ」


 笑顔で言うベイク。

 男性はそんな彼の言葉に怪訝な表情を浮かべる。ベイクは彼のそんな顔を見て知りながらもやはり笑顔。そして男性の脇へと手を差し伸べた。


 行くぞと声を掛けたベイクの、男性の脇に添えた手のひらが碧く発光する。するとそれから少しして、男性が悲鳴を挙げ始め、その身を悶えさせ始める。


「ちょっと……何を……」


 思わず止めようと身を乗り出しかけるエンゼリカに、ベイクは表情を変えず男性を抑え込んだまま続けた。


「折れた骨をくっ付けてるんだ、痛くないわけないだろ。重傷も良いところだし、ただ治療しなきゃ痛みはもっと続く。だから、ガンバれ」


 そう言っている合間にも、ここまで痛みに悲鳴を挙げ抑えられてなお悶えていた男性が平静を取り戻し始めた。恐らく骨が正常に戻ったのであろう。エンゼリカは驚愕に表情を染める。


 治癒の魔導とは肉体活性の延長である。

 魔導により代謝を高め、自然治癒能力を高めるのがそうである。ベイクのように、瞬く間に骨折のような重傷を治してしまうようなものを彼女は見たことが無かった故だ。


 先の戦いといい、やはり召喚魔導は成功したのであろうか。エンゼリカを再びの疑問が襲う。


 ――もし成功であるならば、何故自分は生きている?


 男性が安定し、落ち着きを取り戻したところでベイクは彼の肩をポンと叩くと逃がしてやるのであった。そうして屈んでいたところ、立ち上がりざま振り返り言う。


「気に入らねえのは、ソレだ。自分の命を軽々しく投げ出すところだ」


 ドキリとエンゼリカの胸が内側から突き上げられた。その苦痛が一瞬、彼女の息を詰まらせる。


「どう、して……」


「そんな顔してたからだ」


 よもや心を読まれたのかと思うエンゼリカであったが、彼女の問い掛けにベイクは舌を出しながらあっけらかんと答えた。少女は悔しそうに歯噛みする。


 それを見たベイクは舌をしまい、すればまた頭を掻きつつ言う。


「でも、まぁ……そう言う《《魔法》》なら仕方ない」


 と言うことにしておいてやる――言って、彼は彼女へと笑い掛けるのであった。

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