第8話
四
向かう先はこの狂気の始まりの地であるアルフレイが故郷、大陸オモサダス。
ベイクとセキレイはもちろん、案内人としてアルフレイの三人がそこへと向け発つ。
「――だから既に話した通り、レア。お前にはオレの家を見ていてもらいたい。飼ってる鳥どもにも世話が必要だしな」
此処にはベイクの自宅と繋がるポータルが存在している。
壁の中に埋めて隠されていたものがそれだった。
七百年間もの間、開くことの無かったポータルはベイクの再来と共にその機能を取り戻した。と言うことで、戦いには既に向かない理由が《《幾つかある》》レアはベイクらの旅には同行しない運びとなった。
「家の片付けまではしてあげないけど、鳥に罪は無いしね。仕方無いから頼まれてあげる。卵とかは好きにして良いんでしょう?」
「売ろうが捌いて食おうが好きにしな。帰ってこれる保証もねえし、な」
場所は店内、溜まり場となったカウンター。
五人はそこに立って話していた。
街を襲った怪異の事件から一月ほど、ベイクたちはここに残り復興や火事場泥棒と言うわけではないがやって来る“ろくでなし”たちからの防衛に助力していた。
その一月の内にも彼の者、つまり勇者ベイクの帰還と言う一大事は大陸を風のように渡り歩き、危機を実感しない者は己の腕試しや見物に街を訪れ、時には別件への助力として彼を尋ねる使者などもすぐに現れた。
しかしベイクはそれらを突っぱねこうしている。
世界の危機を片付けるのが自らの役目だとして、それ以外は今は手を貸せないとそう言って。
そして今日、彼らは街を発つ。
街の復興も、人々は落ち着きを取り戻そうとしていたし、レアや彼女の放出品目当てにやってきた魔法使いの幾らかも街の防衛に力を貸すこととなっていたからだ。その中にはベイクが捻った腕自慢たちも混じっている。
その旅立ちの挨拶をば、とのことであったのだが、ベイクのその発言にレアはふと鼻を鳴らし呆れたように笑うと、ツカツカと踵を鳴らしエプロンの裾を揺らしながら彼に歩み寄る。
そうした後、左手をベイクへと差し伸べたレア。彼女はその手で彼の襟口を掴むと、ずっと高い所にある彼の頭を引き寄せた。
そして何か期待していそうなベイクの何食わぬ顔を笑顔のまま、レアは右手で思い切りビンタした。




