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第1話

「チッ……しぶてえな、ボケが。この闇のせいか」


 燃える拳(ベイクリングセスタス)を潜り込んだロイツォーンの懐からそれの顎に向け、下方から自らごと上昇しつつ打ち込むベイクが秘技、燃ゆる昇竜ベイクリングライジングドラゴン。


 ロイツォーンはメガセリオン状態(フォーム)にあって凄まじい勢いを伴うベイクのその一撃を受け、大きくその頭部を跳ね上げる結果となるものの、その体躯は仰け反りつつも倒れることなくあまつさえ頭部を振り下ろし反撃へと転じさえする。


 如何な強化形態とは言え怪異の元凶が顎に捕らわれては危うく、十二柱の噴炎により加速し弾けそれを回避したベイクは忌々しげに空を睨む。夜空ではない、闇ばかりが広がる空を。


 ベイクにより痛めつけられ、挙げ句彼の熱により眷属のことごとくを失い、そして剥き出しとなった鱗をも焼かれて爛れた皮膚をぶら下げているロイツォーンは瀕死である。少なくとも外観からはそう見て取れる。


 しかしその動きは止まること無く、力強さも衰えない。

 傷すらも癒え始めている箇所が見受けられた。


 その原因をベイクは一帯を支配する、この世の理たる四大属性に無い闇の力に見出した。


 その闇はロイツォーンに活力を与えるだけに留まらず、ベイク

にもたらされているはずの世界からの加護、つまり女神フォルトゥナの光を遮りさえしている。


「同じ属性同士じゃ、ラチが明かねえか」


 ムカつくぜ――上昇し、ロイツォーンを見下ろしながらベイクは吐き捨てるように言った。


 それぞれの属性に有利不利というものは存在しない。

 一見すると火は水に劣るようにも思えるが、火は熱であり時にそれは水を干上がらせる。それぞれは相対するものでは無く、互いに共存し合うものなのである。


 土は水と並びあらゆる生命に取って必要不可欠。風はそれらに生命を運び広め、火は水と土と共に生命を育む。そうして世界は成り立っているのだ。


 だがそれらに関さない“力”そのものが闇という属性であり、それは唯一四大に対し上回る。


 そしてベイクが“力”もまた闇であった。

 故に彼はこの世のあらゆるものに対して優位性を得る事が出来るが、こと同じ闇に関しては拮抗してしまうのである。現在のように。


 特別、此度の相手は半ば闇そのもの。

 闇に対し唯一対抗し、上回ることも時に可能であるフォルトゥナの光も遮られてしまっているときては、状況はベイクにあまり都合の良いものとは言えない。


「――アレをやるしかねえか」


 とは言え実力であればベイクはロイツォーンにも劣っていない。こうなれば最大の一撃を以て屠るしかないと、気の進まない表情をしつつベイクはここまで封印していたドラゴントゥースを召喚すべく、右腕を掲げる。


 そしてそこから己が得物を呼び出そうと彼がした刹那、雷鳴が響き渡り、そして彼の眼前に青い稲妻が落雷する。


 それが生み出す衝撃は凄まじく、ベイクは背中の噴炎の出力を上げざるを得ず、ロイツォーンは衝撃もさることながらまるでその稲光自体を拒絶するように身を怯ませる。


 僅かに逸らした顔を戻しつつ、ベイクは口の中で呟く。


 どうしてこう、美味しいところを知ってるかな――満更でもない調子の、表情こそ異形と化した今の彼には無いが、あればほくそ笑みもしているであろう。


 焼け焦げて黒ずんだ建造物の、床のみ残るそこに落ちた雷は次第にその形を整えて行き、やがて人となる。現れたのはそう、セキレイであった。


 彼女は眩く煌々と輝く金色の双眸でそびえ立つ闇の怪異を見上げながら言った。


「――ぶっ潰してやる」

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