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第4話


 男の名前はアルフレイと言うらしい。愛称はフレイ。

 アルもアルフも既に居たと言うことでフレイになったらしい。


「もっと、お年を召してるのかと……」


「期待に沿えず悪いな、オレの体はだいたい二十後半で成長が止まるようになってる。劣化は無い。それじゃ世界は救えないからな」


「……つくづく化け物みたいだな、シショー」


 テーブルでアルフレイと向かい合ったベイク、そしてアルフレイには水、ベイクには酒瓶をそれぞれ渡すセキレイ。


 ベイクのことを彼の勇者であり英雄だと知ったアルフレイの反応に慣れたものだと言わんばかりの尊大な態度で返すベイク。そしてそれを聞いたセキレイの言葉に対して彼は「化け物以上だ。でなきゃ世界は救えねえ」と皮肉っぽく言うのであった。


「――で、どうやってこの場所を? 誰かに教えたつもりは無いんだが……」


 椅子の背もたれにのし掛かりその体重で椅子に悲鳴を挙げさせながら、うつむいているアルフレイを見下ろすベイクが訊ねる。


 そして彼は己の隣へと腰掛けたセキレイへも、そのもの言いたげな視線を向ける。それに気付いたセキレイは慌ててかぶりを振った。


 その様子を見たアルフレイが言う。


「ボクの故郷には星詠みと呼ばれる者が居て、星から様々なものを授かることが出来るんです。知識や予言とか」


 それを聞いた二人は共に天井を見上げる。無論、そこには染みしか無い。


「確かに、星の目からは逃れられねえ、か……」


「……だな。高いところにあるし、沢山あるし」


 天井を眺めたまま言う二人を困惑しながら見ていたアルフレイであったが、顔を戻したベイクが肩を竦めながら「じゃ、行くか」と言うと、目を丸くしたアルフレイは「――え?」と声を溢す。ベイクは続けた。


「オレの所に来たって事は助けがほしいんだろ」


「あ……えっと」


 ベイクの言葉は当たっている。隣のセキレイは直感的にそれを悟った。そしてアルフレイはそれにすぐに答えることは無い。


 これはきっと彼の望みが危険を伴うからで、優しい彼はベイクを巻き込むことを躊躇っている。恐らくはそんなところであろうとセキレイは考えつつ、ベイクをちらと尻目に見た。


 そこでは横着していた姿勢を正し、真っ直ぐにアルフレイを見るベイクが居て、セキレイはそれに勇者、英雄としての姿を見る。彼が言った。


「……良いんだ。逆説的にオレはお前の力になるため、七百年にも及んだ旅から帰ってきたんだろうからな」


 言ってベイクが立ち上がる。そしてセキレイもまた立ち上がると、いそいそと二階へと駆け上がって行く。


「オレの役目は世界と、人々を救うことだ。今更遠慮なんか要らねえし、求めもしねえ。人には生まれた理由があると言うが、本当ならオレが生まれてきた理由はそれだ。剣や、“銃”と同じ。それらは戦うために生み出されてモンで、そのことに文句は言わん。服は着られるため。酒は飲まれるため……オレは救うため」


 難しい事は何も無い。ただ剣を振るように、服を着るように、酒を飲むように、ただ救いを求めれば良い――ベイクは歩み寄った棚の上に置かれていた鈍色のブレスレットを手に取り左手首に通しながら言う。


「でも、貴方は剣でも無ければ服でも無い。……人だ」


 振り返り、アルフレイが告げる。ベイクに向けられた彼の目には哀れみがあった。


 それを見ながらも、ベイクはしかし鼻を鳴らす。


「……少なくとも、オレはお前らとは違う。だから、良いんだ」


 気にするな――優しすぎるアルフレイに笑い掛け、彼に近寄りその頭をくしゃくしゃに撫でる。


 すると、バタバタと騒々しく足音を立てながら二階に上がっていたセキレイが降りて来る。


「――それも私が勇者になるまでの間、だけどな」


 言いながら「じゃんっ」と両腕を広げたセキレイ。彼女はその格好をこれまでのカジュアルなものから一転、白地に黒をあしらったレザーコートとスカートに替えていた。コートには魔法による加護が編み込まれており、袈裟懸けしたポーチが幾つも付いたベルトなど含めてベイクの手製である。


「はっ……気が早えぞ、ひよっこが。そう言うことはな、手前の装備くらい手前で揃えられるようになってから言えってんだよ」


「はん、そー言うシショーは準備しなくて良いのか?」


 セキレイは壁に掛けてある自分専用――これもベイクが作成したものである――の片刃の剣を手に取ると、それを背に担ぎつつベイクと同じように鼻を鳴らしながら口答えする。


 そんな彼女に向き直りながら、ベイクは得意そうな笑みを浮かべると左手首を振るい、そこに掛けられたブレスレットを鳴らした。


 直後そのブレスレットが変形を始め、セキレイとアルフレイが瞬きを終える時にはもう、彼の全身は鎧に包まれていた。山羊のような湾曲した角を携えた、鈍色の鎧。


「お初にお目に掛ける、これが彼の大魔王の片割れたるルシファーが手掛けた芸術作品――反吐が出る。デビルズスケイルだ」


 兜が細かく分かれ、収納されるとそこからしたり顔をしたベイクが現れた。

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