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勇者になりたくない主人コウ~故郷への帰還を夢見て~  作者: 時斗
第ニ部 大国、イーブルシュタインへ……
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第60話:リザルト

あけましておめでとう御座います。

本年最初の第60話、投稿致します。


「◇◆◇◆◇」マークの部分については例のごとく 性描写を匂わせている為、小説家になろうではそこの部分をカット致しました。


(カクヨム様では原文のまま投稿する予定ですので、ご興味がありましたらそちらをご覧頂ければと存じます)




 JB(ジョブ):侍

 JB Lv(ジョブ・レベル):15


 JB(ジョブ)変更可能:見習い戦士     Lv20(MAX)

       剣士        Lv30(MAX)

       ラッキーマン    Lv50(MAX)

       料理人       Lv20(MAX)     


 HP:243

 MP:187


 状態(コンディション)鋼の意思(アイアン・ウィル)、叡智の福音、詠唱破棄

 耐性(レジスト):病耐性(一部)、睡眠耐性、ストレス耐性


 力   :121

 敏捷性 :172

 身の守り:100

 賢さ  :206

 魔力  :125

 運のよさ:159

 魅力  :84




(レベル……じゃなかったね、ランクが上がったか。『73』ね……。ここに来て4ランクも上がるなんてなぁ……)


 ステイタスに変動があったと脳内に通知が入り、確認してみた結果、このような事になっていた。ここ最近、停滞したかのようにランクが上がらなかったというのに……。それだけあのカオスマンティスが規格外の経験値を持っていたという事なのだろうか。そして……、


 ―ー新たな資格系能力(ライセンススキル)を獲得、『不倒の相手を制せし者』……生きとし生ける者には勝利する事が極めて難しい災害級の相手を倒した者に与えられる称号。この資格系能力(ライセンススキル)を持つ者は同じ災害級の相手に対し特攻を得る事が出来る。


(……特攻、か。あの通常攻撃が1しか与えられない相手に対し、普通にダメージが与えられるようになるような感じかな……? コレ、皆も獲得できたのか……? それとも、トドメを刺した僕にだけ与えられたのかな……?)


 ……後でユイリにでも確認してみようかと思ったところ、


「――ンッ! うむっ……!」

「?! ユ、ユイリ!?」


 くぐもった声が聞こえ、振り返ってみると……、なんとユイリがロレインに対して縄で猿轡を噛ませて拘束しているところだった。


「ユイリ、一体何を……」

「何をも何も……、このままにしておける訳ないじゃない。この魔女はあの名家側の人間なのよ? ……拘束するのは当たり前でしょ?」


 何を言っているんだとばかりにサラッと答えるユイリ。


「いや、戦闘中にも軽く話したと思うけど……、彼女もあのダグラスに裏切られた被害者みたいなものなんだ。そこまでしなくとも……」

「……貴方は何を言ってるの? さっきは非常時だったから警戒するだけに留めたけど……、この魔女のせいで貴方が『地獄に繋がる墓所(ここ)』に送られる事になったのよ? 姫……彼女だって誘拐されかけたわ」


 そう言ってさらにロレインを後ろ手に縛ったところで、僕に振り返ると、


「改心したとか、騙されていたとか……そんな事は関係ないのよ。分かっているのは、貴方や彼女を危機に陥れたという事実だけ……。同情の余地はないわ」

「……君の言う事はわかるよ。でも、彼女の協力が無かったら、生きていなかった可能性もあった。それに……彼女にはもう、僕達に危害を加えるつもりは無い筈だよ。僕には……わかる」

「それはコイツだって死にたくなかったからじゃねえか?」


 そこにレンや一緒に転移してきた女戦士、クインティスさんも話に加わってきた。


「アンタは甘いよ。そりゃあ、あの化け物を倒した最大の貢献者である、アンタの意向に沿いたい気もするけど、それとこれとは話が別だ。今更立場を変えたといっても……、ソイツが罪人なのは変わらないんだからさ」

「……勿論、彼女もそれは自覚してるよ。ダグラスに身代わりにされて、このまま死にたいと言っていた彼女だ。……正直、霊薬(エリクシール)が無かったら助からなかっただろうし……」

「エ、霊薬(エリクシール)ですって……!? 貴方、そんな貴重な物を……! ハァ……、ま、貴方にしてみたら驚く事でもないわね。それで? 霊薬(エリクシール)を使ってまで助けたから、このように扱うのはよせ……って事?」


 少し呆れた様な表情でそのように話すユイリに、


「……彼女が罪人なのは事実だと僕も思ってる。だけど、罪を償うと了承したんだ。彼女ならダグラスの罪も暴いてくれる……。だから……出来れば丁重に扱ってあげて欲しい……。それでも信じられないようなら……、ユイリは確か真贋の巻物(スクロール)を持っていたろう? それを使って確かめたらいい」

「………………貴方がそこまで言うのなら。でも、彼女の意向も伺ってからよ? 連れ去られそうになった彼女がいいと言うのなら……私はもう何も言わないわ」

「それでしたら……、わたくしは構いませんよ。コウ様がそのように仰っているのですもの。反対する理由はありませんわ」


 すぐに了承してくれたシェリルに従い、ユイリはひとつ溜息を吐いて、ロレインの猿轡を解く。


「どうせロープに詠唱を阻害する機能なんか無いし……、その気になれば魔法は使えるのでしょう? だから、両手だけは自由に出来ない。これだけは譲れないわ。貴女も妙な真似をしたら……殺すわよ?」

「……好きにすればいい。その時は首元を狙って。魔女は、そうしなければ殺せないから。若しくは……聖なる炎で焼き尽くすなりすればいいわ」


 ……やっぱりこの2人、相性が悪いみたいだ。ロレイン自身、抵抗するつもりもないようだし、取り敢えずは上手く纏まった、か……? そう思っていた矢先、


「まどろっこしいねえ……。どうせならこの際、処女だけでも奪っちまったらどうだい? そうしたら聖女と一緒で、その魔女も力を失う筈だよ? それならもう警戒する必要もないし……、男としたらこんな上玉を抱けて満足だろう? ほら、ウィンウィンじゃないか?」

「あ、姉さん……! 流石に、それは……!」

「そ、そうですよ! 姉御は知らないでしょうけど……、彼女のお陰で俺達、死なずに済んだところもあるんすよ! 強力な魔女の力で、命拾いした事もあるんで……!」

「何だい、アンタ達。魔女なんてそう抱く機会はないんだよ? ま、別に嫌ならいいよ。他にも男はいるんだしね……」


 ……おいおい、この人とんでもない事言い出したぞ……。セカム達にそんな事を言い出す女戦士に対し、ロレインは、


「……別にそうしたければすればいいわ。今更抵抗する気はないし……」

「ほら? 本人もそう言ってるじゃないか? えーと、誰かいないか……、500秒とか言っていたから早くしないとね。なら最大の功労者で、その子を助けたアンタが抱いてやりなよ?」

「いや……、大体、僕はそんな事をするつもりは……」

「……うむ、今はそんな事をしている場合ではなかろう……。ここから出た後の事を考えるべきで……」


 そんな中ウォートルまでやって来て、盛り上がってるクインティスさんを止めようとするが……、


「遠慮する事はないよ。このコ……、結構いいカラダしてるよ。なんならアタイが愉しみたいくらいだ……!」

「……っ」


 なんと、クインティスさんはロレインの後ろからその豊満な胸元を鷲掴みにし、僕らの目の前で揉みしだき始めてしまった。


「ちょ、ちょっと止めろっ! 何をしているのだアンタは!?」

「全く、いいところで……。まあいい、それならアンタが責任を持ってこのコを見ときな。……本来なら確実に殺しておくのがベストなんだ。実際、ここに来る前にクローシス家の連中は皆殺しにしてきた。万が一にもカートンの身に何かあっちゃ拙いからね……。まぁ、アンタも充分に貢献したからね。アンタのその特殊な能力(スキル)が無かったら……、多分ここに立っていられる人間はもっと少なかった筈だよ」


 そう言ってクインティスさんはウォートルに彼女を押し付ける。……何とか丸く収まったか。何処まで本気だったのかはわからないけど、まあこの人の言う事は間違っても居ない。……随分過激な事をと思わなくもないけど、状況を考えると不安要素を消すのは当然の事だ。何はともあれ、話を元に戻そう。ここから脱出した後の事を話し合わないといけない。ロレインを受け止め真っ赤になってしまったウォートルを尻目に僕がそのように考えていると、成り行きを見守っていたレンが何やらを僕に差し出す。


「……レン。これは……」

「ここに出現した宝箱から回収したモンだ。……お前が持っておけ」


 渡されたのは何やら雰囲気のある鎌で……、鑑定の為に『評定判断魔法(ステートスカウター)』を掛けてみると……、




魂狩り(ソウルスライサー)

形状:武器<鎌>

価値:SS

効果:傷付けた相手の魂を直接揺さぶり、激しく生命力を消耗させる魔力を秘めた鎌。日緋色金(ヒヒイロカネ)と呼ばれる伝説の金属で作られている。




(……なに、これ? ヒヒイロカネなんて金属、聞いた事も無いぞ……? オリハルコンだったら漫画やゲームとかで知っているけど、同じようなものかな……? どっちにしても、凄い武器だ……)


 ただ生憎、僕は鎌なんて武器は使えそうにない。どうやって使うかもイメージが湧かない。……誰か鎌を使っている人っていたかな……。


「レン、確かハリードさんって大きな斧を使っていたよね? この大鎌も同じように使えないかな?」

「……使えるにしても奴は受け取らねえだろうよ。いいからお前が持っておけ。トドメを刺したのもお前だ。冒険者としての暗黙の了解を、お前は無視すんのか……?」

「……わかったよ。まぁ、何かに使えるかもしれないしね。……最悪、素材にする事もあるかもしれないし。ヒヒイロカネにどれくらいの価値があるかはわからないけど……」

「ヒヒイロカネ……!? その武器の素材、ヒヒイロカネなのかい!? これはまた……とんでもない金属が出てきたねえ……。金剛石(ダイヤモンド)よりも硬く、決してさびる事もない……、神々の産み出した金属とされてる代物だよ? ……売り払ったら一財産築く事も出来るとも言われてるというのに……。いいかい? それを誰かにタダで渡そうなんて、そんなとんでもない事言うもんじゃないよ……!」


 ……なんか怒られてしまった。……先程とんでもない事を言ってきて、かき乱してきた人には言われたくないんだけどな。それに……道具ならまだしも武器は使ってこそ活きるものだ、と僕は思う。『評定判断魔法(ステートスカウター)』で鑑定したところ物凄く強そうだし……使わずに眠らせておくには余りに勿体ない気も……。かといって売り払うのもなぁ……。

 まぁ、ここまで言われた以上しょうがない。この武器の事は後で考える事としよう……。そのように結論付けた時、クインティスさんは一転真面目な表情を浮かべ……こう切り出した。


「さて……と、セカムにシクリット。アンタ達が無事なのはわかったが……、フレイはどうしたんだい?」











(何はともあれ……、コウ様達が御無事で良かったですわ……)


 この『地獄に繋がる墓所』へと転移させられた皆さま全員が無事とはいかなかったみたいですけれど……、と私は胸を撫でおろしていた。……冷たいかもしれないが、こんな恐ろしい場所に転移させられて、よく生きてくれていたと思う。生きてくれていた人の中に自分の大切な人がいたのだから、これ以上望むべくもない。……逆に他の全員が生き残っていても、彼だけが死んでしまった等という事にでもなっていたら……。そのように考えただけでもゾッとしてしまう。尤も、フォルナさんはあの男に攫われてしまったようですが……、今ならまだ助け出せるでしょう。いえ……、必ず取り戻してみせます。


「…………あら?」


 ふと、何やら言い争う様な気配を感じ、そちらを見てみると……、


「ダ、ダメだよ! きみはまだ、かいふくできてないんだから!」

「ヴィーッ! イブイブ~!!」


 1羽の小さな兎をスライムであるボヨよんちゃんが慌てて抑えつけるようにしていた。プルプルと躰を震わせつつ、それでも必死にコウ達の所へ向かおうとする。なんとかその場に留めようとするボヨよんちゃんが私に気付き、


「……あっ、シェリルッ! シェリルからもいってあげてよ! コウからこのコをやすませるようにいわれているのに、いうことをきかないんだ……!」

「ブイ……! ブイ、ブイ―!!」


 何か訴えかけたい事でもあるかのように暴れる兎に私は呼び掛けた。


「あなたは……野生の動物ではないのですね? もしかしたら……兎耳(バニーレイス)族なのですか?」

「イブッ!?」


 ハッとしたかのように自分の方に振り向くそのコに、私はそう確信すると、


「……ボヨよんちゃん、その子はわたくしが引き受けますわ。……こちらにいらっしゃい?」

「…………ヴィー……」


 私の言葉に従い、ボヨよんから解放された兎は恐る恐るといった感じで此方を窺うようにやって来る。そうして私の下に来たそのコを怖がらせないようにゆっくりと抱き上げ、


「わたくしはシェリルと申しますわ。あなたのお名前は何と仰るのですか? わたくし、動物の言葉もある程度はわかりますから、教えて下さいな?」

「ブイッ! ヴィー……、ブイブイッ!!」


 その子は自分の名前を答えると同時に色々な事を私に伝えてきた。……自分は兎耳(バニーレイス)族であり、ここに転移させられた影響か無意識に『(ラビット)化』してしまい、何故か元の姿に戻れない事。コウ達と一緒にいる者に自分の仲間がいる事、何とか気付いて貰おうとしていたところに自分の話が始まったので、そこに行こうとしていた事などを話してくれる。そんな時……、


「…………そうかい。じゃあ、あの子は……死んだんだね」

「ピッ!!??」


 恐らくこのコの仲間であろう、クインティスという名の熟練の戦士がそう結論付けるのを見て、驚きと共に固まってしまう。腕の中でブルッと大きく震えると同時に目を見開いたこのコを尻目に、彼女たちは話を続ける。


(あね)さんっ!」

「だってそうだろう? 消えたのはアンタ達と……フレイだ。ここにあの子がいないって事は……そういう事だろう?」

「……俺らがここで気付いた時にはあの子はいなかったんだ。姉御達が向こうで見落としただけかもしれないじゃないか?」


 それを聞いて大きく溜息を吐いた後、彼女は言い聞かせるように、


「……有り得ないね。向こうでは魔物はおろか、例のクローシスの連中に囲まれてたんだ。見落としどころか逃げる場所も隠れられる所も見られなかったよ。アタイだけじゃない、カートンだって探したんだ。……それでも見つからなかったから、恐らくはアンタ達と共に転移に巻き込まれたというのがアタイ達の結論だった」

「だけどよ姉さん……、俺達だって彼女を見てねえんだぜ……? 万が一、あの化け物にやられたとしても……、それらしい悲鳴も聞いてねえし、俺達が気付かない訳が……」

「悲鳴を上げる間もなく即死だったんじゃないかい? そうなったら……もうわからないさね。死体は……すぐにダンジョンに吸い込まれるように消えちまうんだし……。第一、あの鈍くさいあの子が隠れるなんて器用な事が出来ると思うのかい?」


 その言葉に沈黙が下りる一同……。私はこの兎の事を話すか逡巡するも、


「何時かこうなる事が分かっていたから、アタイは追い出そうとしたんだけどねえ……。あの子は誰がどう見ても足手纏いだった。……ま、カートンの足を引っ張らずに最期を迎えたのは……不幸中の幸いってところさね」

「「あねさんっ!(姉御っ)!」」

「……ふん、事実じゃないか。荷物持ち(ポーター)としても一人前とは言い難いし、さっき言った通り、本当に俊敏で知られる兎耳(バニーレイス)族かと思うくらい鈍くさい。当然囮も務まらない……、カートンの意思を尊重してなかったら、とっくに追放してたよ」


 どうやら……あの女戦士の言葉に大きなショックを受けてしまったようだ。ガーンという文字が見えるかのように落ち込んでしまい、見開かれた瞳からは涙が溢れだしている。……そっと私が兎を胸に抱くと、そのまま声を上げずに泣き出してしまった。


(……あの方も不器用ですわね。恐らくは本心では無く……、やりきれなさを吐露しているだけなのでしょうけど……。まさか兎の姿になって聞かれているとは思ってもいないのでしょうね……)


 やがて自分の胸に抱えられながら泣きつかれて眠ってしまった兎を見て、私は小さく息を吐くと(コウ)の下へと赴く。


「ああ、シェリル……。うん? その腕に抱いているのは……」

「先程コウ様から伺った兎さんですわ……。色々あって疲れたのでしょう。今は眠っておりますわ」

「……そうなんだ。その兎、ボヨよんに任せていたんだ。……総崩れになりそうだった僕達を、その子が切り開いてくれた。命の恩人だよ、本当に……」


 コウはそう言って眠る兎に優し気な表情を見せながら、労わる様に撫でる……。その様子を見て、私は彼に提案することを決めた。


「コウ様……、この子兎を暫くわたくし達でお預かりさせて頂いても宜しいでしょうか? どうも此度の事がトラウマになってしまっているようで……せめて心の傷が癒えるまでは……」

「それは構わないけど……、一応その兎が誰かが飼っているものでは無いとわかった後になるね。ここに居る人たちは見覚えがないみたいだけど……」

「それなら大丈夫ですわ。このコに話を伺いましたから……」


 心無い言葉で傷付いてしまったようですけれど、と心の中で続けると私は『趣味部屋休憩処コレクションレストスペース』の発動をお願いする。快く了承し『趣味部屋休憩処コレクションレストスペース』を展開する傍らで、


「……そうだ、それなら名前を付けてあげないとね。何時までも兎じゃ可哀想だし……。そうだな、ぴょんぴょんとか……」

「…………コウ様、折角ですけれど……このコには既に名前があるようですわ」


 彼の独特なネーミングセンスが付けられる前に、先程あのコから直接聞いた名前をコウに伝える。…………フレイ、と……。











 そろそろ500秒になる……。情報交換を済ませ、ここより帰投した際に待ち受けているであろうダグラス達への対応に関しても一通り確認し終えると、コウがポツリと呟く。


「それにしても、さっきのアナウンスといい……、ここは一体何だったんだ……? あの化け物(カオスマンティス)も魔物というには妙なところもあったし、まるでシステムというか……」

「……コウ、それは後で考えましょう? ここから生きて戻り、脅威を排除した後でね……」


 余程気になっているのか、さっきから何度も口にしているコウ。……何やら不思議な能力(スキル)を手に入れたみたいだけど、流石に今のこの状況で話し合う事でもない。それに、ダンジョン内の伝説とも語られている『地獄に繋がる墓所』やらの超常的現象なんて、大方『神』や『魔神』が関わっているのだと相場が決まっている。


(まぁ、そういった存在が遣わせたとしか思えないカオスマンティスを討伐した時点で、コウの特殊性を証明したようなものなんだけど、ね……。ただ、仮に勇者であっても、神の眷族を倒せるかと言われても、肯定するのは難しいけれど……)


 過去の歴史や伝説を紐解くと、超常的現象を解決に導いたとか、カオスマンティスのような存在を倒したみたいな話も残ってはいるが……、何処までが実際の出来事なのかまではわからない。

 だけど、一つだけわかっている事は……、コウがいなければ『強制終焉魔法(バッドエンディング)』とやらで全滅していた事だけは確かだ。


「……ごめん、ユイリ。確かに今考える事じゃなかったね。あの名家の連中を何とかするまでは……」

「謝る必要はないわ。責めている訳ではないし……、貴方がいなければこうして今後の事を考える事も出来なかったでしょうしね」

「全くだね、途中参戦のアタイでも……まだ死への恐怖は抜けきっていないんだ。セカム達に関しては致死毒も抜けきっていない状況だし……、アンタにどんな加護や能力(スキル)があるのかは知らないけど、アタイにとってはそっちの方が不思議だよ。勿論、あの必殺魔法を防いだ事も驚きだけどね」


 女戦士クインティスの言葉に、コウは苦笑した表情を浮かべつつ肩を竦める。

 ……生命力や魔力、疲労は魔法や道具(アイテム)で回復する事が出来るけど、精神的に負った現象やダメージはそのまま残ってしまう……。シェリル様が長期間、奴隷商人たちに囚われの身となっていた恐怖が漸く和らいできた事のように、強い衝撃的な恐怖は時間が解決してくれるのを待つか、唯一それらの事に干渉できる聖女に『心的外傷収去の奇跡(トラウマアウト)』や『克服補助の奇跡(メンタルコンプレス)』等の神聖魔法を掛けて貰うくらいしかない。まして、今回の様に死の恐怖とセットで経験値を得てしまっている場合には、忘れるという手段を取る事も難しいのだ。


(コウ自身、今までにも死線を潜ってきた事はあるけれど、未だに恐怖や恐慌状態までに至っていないのは恐らく……彼の能力(スキル)である『自然体』、勇者の力によるものの筈……。彼は勇者である事自体も隠しておきたいみたいだけど、今回ばかりは……)


 その事を完全に秘匿するのは難しいだろう。実際、私の報告によって王女殿下はイーブルシュタインに強く働きかけている筈だ。……『地獄に繋がる墓所』に送られたなどと報告したら……、どんな反応を示すかも目に見えるようである。その際……、私が付いていながらどうしてそんな事態となったのかも絞られそうだけど、ね……。


「まあ、いいじゃねえか。一先ずコイツについての詮索は置いておいてくれ。ようは本調子ではねえが、待ち構えてるだろうあの馬鹿どもを抑えれりゃいいって訳だ。『沈鬱の洞窟』に付いてきた程度の連中だけなら問題はねえだろうが……、そう上手くはいかねえだろうな」

「……何せこの国に住む人間なら知らない者はいない、天下のクローシス家だからねえ……。セカムやシクリットはおろか、初めから此処に転移した連中は満足には戦えないだろうし、ここは時間稼ぎに徹するしかないさね」


 レン達の掛け合いを聞きつつ、私はあの女の様子を探ると、今のところは監視するウォートルの下で大人しくしている様だった。……彼女が戦力に数えられれば良いのだけど、コウのように信じる事はとても出来そうにない。仮に真実を話し、本当に降伏しているのだとしても……、コウやシェリル様を危機に陥れた事に違いはないからだ。この状況でクローシスに戻られたりしたら、誇張ではなく此方が危うくなってしまう。

 そんな中で……、新たにアナウンスが何処からか流れる。……どうやら時間のようだ。


「大体こんなところかしらね。警戒を緩めず、援軍が到着するまで時を稼ぐのよ。後はコウ……、貴方はあまり前に出ないでね? 彼女と一緒に……、万が一危険が迫ったら貴方と、彼女の事だけを考えて……!」

「……わかったよ。確かにアイツらがまだどんな手を残しているかもわからないしね。……シェリルの事だけは守ってみせるよ」

「……大丈夫ですわ、コウ様。通常生きて戻れぬ場所へと送られて……こうして生き延びる事が出来ております。このような危機など、きっと乗り越えられる筈です……」


 その言葉と共にシェリル様がコウに寄り添ったところで、この部屋からの転移が始まる……。彼女の言葉ではないけど、こんなところで躓いて貰う訳にもいかない。世界の救世主たる勇者『界答者(ファーレル・セイバー)』に、失われし文明を現在に伝えるという『伝承の系統者レジェンド・クオリファイダー』……。この二人だけは何に代えても守り抜いてみせる……! そう密かに決意して、私達はこの場を後にするのだった……。






 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇




次話ですが、もしかしたら2話にわけるかもしれません……。

あまり時間を開けずに投稿出来れば……と思っております。

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