1、勇者召喚
書けました〜♡
というかツイッターで上げたら思った以上にリツイートなどを貰えたので嬉しいやらなんとやら…
これを礎に頑張らせて頂きます!
広大といっても良いほどの図書館、その一室。
そこにはいくつもの本を脇に積み重ね、一冊の本をがむしゃらに目でなぞっていく黒髪の男がいた。
黒髪の男、夕凪 白幻が読んでいる本は途轍もなく太く、その文字もまた細かい。少なからず日頃から小説を読まないような人間ならば一瞬で殺到するような代物だ。
その上、この本は小説のような娯楽物でもない。魔法に関して記してある一種の論文のようなものだ。…極一部の人々は喜んで読みそうな代物でもある。
ちなみに白幻はその極一部には入る。しかし今はそんな酔狂で読んでいるわけではない。
あくまでも必要に迫られているためだ。
そのため彼は本に穴が空くほどに凝視していき、知識を貪る。
難しそうな顔をしながら呻き声を上げ、それでも必死に本に縋り付く。
何故白幻はそんなものを読んでいるのか。それにはいくつかの理由がある。
だが簡潔に記すにはこの一言が最適解であるだろう。
それは即ちーーー
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〜数日前
白幻は目の前の事実にパニックに陥っていた。
それも無理はない。
何故ならば彼の目に映る光景が先ほどまでいた教室とは全く違っていたからだ。
教室の木製の床は青い野原に。
蛍光灯がついた簡素な天井は果てしない蒼穹へと。
びっしり数式の並ぶ黒板や窓は十二の白い柱と森林。
そして野原には魔法陣のようなものが描かれていた。
また白幻の側には教室で席の近いクラスメイトが。
そして周りを見ると全クラスメイトが尻餅をつくなりして、白幻と同様に驚愕していた。
中にはパニックのあまりか顔を青くする者、空を仰ぐ者、取って代わってはしゃぐ者、奇声を上げる者。種類こそ幾重にもあるがどれにせよ全員平常心ではなかった。
だがこのクラスのリーダーたる男は冷静に全員に届くよう声を張り上げる。
「みんな、落ち着いてくれ! 何が起きてるのか分からないのはみんな一緒だ! とりあえず今の状況を確認しよう!」
そうキラキラオーラ全開でみんなに語りかけるようにクラスを纏めていくこの男は天野 真。
白幻の親友にして自慢の幼地味。
眉目秀麗、品行方正、英俊豪傑…そんなチートスペックであるにも関わらず、誰にも嫌われていないのは彼の人柄であったりもする。
そんな感じのキラキラオーラ男には誰も抵抗できず(女子は顔を赤らめながら)状況を確認していく。
ちなみにこの間、男子は真に対して素晴らしくいい笑顔を向けていた。…ただし手はギリギリと握り締められているが。
最初に真が話し始めた内容は白幻の記憶とほぼ変わらず、授業が終わってからダラダラしていると教室からこんな自然の真ん中にいつのまにかいました、と言ったものだった。
その後も似たような証言が続き、話し始める人が増える度に可笑しな記憶は紛れも無い事実へと変わっていく。
するとある一人がこんなことを言い始めた。
「もしかしてこれって異世界召喚ってやつだったりしてな。なーんて、ハハハ…」
「「「………」」」
普段であればただのふざけたジョークなのだが、今このような状況ではその言葉は異様な現実味を帯びていた。
結果、その場は静まり帰ってしまった。
コソコソと「もしかしたら…」「正直そんな感じもしなくもない様な…」といった言葉も聞こえて来る。
そして状況は更に追い討ちを白幻達にかける。
ーーーーガチャン、ガチャン、ガチャン、ガチャン
規則化された音が鳴り響く。
その音は本来ならば地球にはほぼ無縁の音のはずだ。
よってさらに冷静さを失っていくクラスメイト。
「これって…甲冑の音?」
「マジかよ…ってことはマジでここって…」
「地球じゃ、ないのかな?」
そして森の奥側から現れるのは騒然たる騎士の数々。彼らは余すことなく鎧で身を覆い、行進して行く。
彼らは二列に割れると白幻達を囲い込み、跪いた。
さらにその人垣の奥から偉そうな男の人が現れた。彼は王笏の様なものを持ち、頭には王冠のようなものを被っていた。
こうもなると流石に白幻達全員が「まさか!?」という心境になる。
そしてその偉そうな男の人は言った。
「使徒の皆様方よ、どうか貴方方のお力を貸していただきたい」
そう言った。
それに対する白幻達の台詞は至極単純なもので…
「「「………うそ〜ん」」」
桐丘高校二年一組二学期、彼らは摩訶不思議な経験を積むこととなる。
すなわち、「異世界転移しちゃった♡」というものだった。