表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

手を上げろ!さもなくば

作者: 一日一説

 睨み合う二人の男。空気清浄機の音だけが狭い室内を漂う。

「手を上げろ!」男の剣幕には切れ味があった。

「嫌だと言ったら?」対する男には余裕がある。

「上げたほうが身のためだぜ?」男の指に力がこもる。

「違うね。お前のためだろ?」男の表情には涼しげさすらある。

「後悔するぞ!」男はほとんど叫んでいた。

「さあ、どうだかな」口元に微笑をたたえたまま男は自分の足元を見つめている。


 力強く握られた拳を解いて、観念したように男は背を向けた。

「本当に後悔しても知らねえぞ。そいつは手を上げることでしか学習できないんだ。痛み以外の感覚も、感情も、ない。お前はいつの日か手を上げるだろう。そのときにはもう俺はいない。助ける者はない。一人でどうにかするんだな」男はそれだけ言うと扉の向こうへと去っていった。

 男には直感でわかった。もう彼と会うことはないだろうと。

「大丈夫だ。俺は何があってもお前に手を上げたりはしない。そのために例え10年、20年、30年が費やされようともそれは本望なんだよ。愛した女のために捧げる時間なんだから」

 男は物言わぬ女を包むように抱きしめた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ