第1話 目を覚ますと目の前に美少女は異世界モノの決まり
初めて小説を書いたので至らない点が多くあると思いますが、優しく見守ってあげてください
かつて見たことがないほどの綺麗な光だった。真っ暗な世界で生きてきた少年にとってその光はとても神秘的であり、また希望でもあった。その少年はもちろんその光の方に歩いていった。光に近づくにつれて意識が朦朧としていき。ついには意識を無くしてしまった。しばらくして意識を取り戻し目をあけるとそこには今まで見たことがない世界が広がっていた───
「っていうような異世界召喚がよかったんだよ~!」
「そんな事言われても、僕にはどうしようもならないよ!」
順を追って説明しよう。まず、この異世界に召喚された少年は清水智也。トモヤは十六歳の高校一年生だ。学校から帰っている途中に曲がり角である老人とぶつかったら、なんか文句言われたあげく、この異世界にとばされた。トモヤは別に真っ暗な世界で育ったわけではない。裕福な家庭に生まれ、スポーツも勉強もまあまあ出来る。容姿も別に悪くはなく、友達もたくさんいた。ただ一つ欠点を挙げるとすれば、トモヤが異世界モノマニアというとこだけだろう。先述したが、トモヤは裕福な家庭で育ったため、これまでにいろいろなものにふれることが出来た。もちろん小説もたくさん読んできた。最初は恋愛モノや推理モノをいっぱい読んできたが、ある時書店で買ったある異世界モノとの出会いがトモヤの人生を大きく変えた。その日から書店にある異世界モノを片っ端から読破していき、異世界モノのアニメがあれば一日中自分の部屋に籠もって視聴し続けた。そんなトモヤの友達は次第にトモヤから離れていった──などということはなかった。トモヤの友達はみんな心優しく、トモヤの異世界モノが大好きというところを彼のステータスの一つと考え今まで通り接していた。てなわけでトモヤは別に真っ暗な世界で育ったわけではなく、むしろ明るい人生を送っていたのだ。そんな彼が異世界にとばされ、目を覚ますと目の前には中性的な容姿をしたトモヤより少し若いくらいの少年がいた。そうして現在に至るわけだ。
「分かる!?老人とぶつかってこの世界に召喚されたんだよ!?全然異世界モノっぽくないじゃん!?」
「だーかーら!文句はその老人に言ってよ!」
「そういうところも違う!普通は『異世界ってなに?召喚ってどういう意味?』みたいなことを超絶美少女が俺に向かって言ってくるんだよ!」
「悪かったね!超絶美少女じゃなくて!けど君、そんなたいした容姿してないくせに、よくそんな事言えるね(笑)」
「お前いま笑ったな!?異世界モノっていうのは俺みたいな上の下みたいな容姿をした男が突如わけもわからず異世界に飛ばされて、超絶美少女と出会い、仲を深めていくと昔から決まってるんだよ!」
「うわ…自分で容姿が上の下とか言っちゃうんだ…正直引くわ~」
「お前調子にのってると痛い目みるぞ」
そう言うと目の前の少年は大きくこう叫んだ。
「わーー!へんな男に襲われるよー!」
アノコカワイソー
チョットダレカタスケテアゲタラ
周りの道行く人たちがこっちに冷たい目線を浴びせてくる。俺は目の前の少年の手を引っ張り、路地裏に連れて行った。
「えーー。僕のこと襲うつもり~?確かに男の娘みたいってよく言われるけど、一応男だからね。」
「俺は男の娘に興味はねえよ。そんな事よりこの世界について説明しろ。」
「見返りは求めるからね?」
「わかったからとっとと説明しろ。」
「この世界の名は”フッラディー”四人の神によって創造された世界さ。」
「四人?」
「うん。火を司る”レクサス” 水を司る”アノープス 風を司る”フーリュ” 土を司る”グラノス” これらの四人の神がこの世界を創造したんだ。四人の神はこの世界をちょうど四つの大陸に分けてそれぞれ統治をはじめたのさ。これが約千年前の話。ちなみにここは水の神アノープスが造り出した大陸だよ。」
「そうか。いろいろ事情を教えてくれてありがとう!じゃあ俺はこれで行くよ。」
「待って!見返りを求めるって言ったよね?それに君一人でどうやって生きていくつもり?」
「そうだった……何をしてほしいんだ?」
「僕と一緒にきてよ。いいもの見せてあげるよ。それに同じ”地球”から召喚された者同士、わかりあえると思うんだけどな~」
「今、なんて言った!?」
「だーかーら!同じ地球から召喚されたもの同士わかりあえると思うって言ったんだよ!」
俺の目の前にいる少年は思いがけないことを言った。この異世界はとんでもなく異世界モノっぽくないと思っていたが、決してそういうわけではなかった。自分が召喚されて初めて出会った少年が同じ地球から召喚されたという展開は、異世界モノマニアの俺の心を大きく揺さぶった。
「同じ地球から召喚されたって言ったけど、それは何年前の話なんだ?」
「僕が十一歳の時の話だから、三年前くらいかな。」
「じゃあ今は十四歳なわけか…………てか生活はどうしてんだよ!?身寄りがあるのか!?」
「地球から召喚された人が何人かいるんだよ。六十歳の老人もいれば、五歳の少女もいる。そうやって地球から召喚された人たちの集まりがあるんだ。君を今からそこに連れて行こうと思う。」
「そんな簡単に連れて行っていいのか?」
「一カ月に一人くらい地球から召喚されてくる人がいるんだけど、僕たちはその人たちを保護するようにリーダーに言われているんだ。僕は君みたいな変態を連れて行きたくないけどね。」
「俺は変態じゃねー!」
「大きな声ださないでよー」
「とりあえずそこに連れて行ってくれるんだな?」
「いやいやだけどね。とりあえず僕について来て。あと、後ろから襲ってきたら容赦なくぶん殴るからね。」
「だから俺は男の娘に興味ないって……」
少年は路地裏を出て歩き始めた。見渡して見ると、まるで異世界みたいな街並みが広がっていた。地球のように技術は発展していないが、木やレンガで出来た家が建ち並び、果物や野菜みたいな物を売っている人もいれば、なにかの肉を売っている人もいる。人の容姿もこちらの世界のヒトとの差は見当たらず、地球から召喚されたと言われても疑わないくらいである。そうして市場みたいなところの中心部にきた辺りでまた路地裏に入り、少し進んだところで少年は立ち止まった。
「ここだよ。」
少年の目線の先には、少し大きい古びた木造の家が建っていた。
「今日はトオルさんいたっけなー?」
そういいながら少年はドアの横のベルを鳴らした。それからすぐにドアが勢いよくあき、小学一年生くらいの女の子が少年に飛びついてきた。
「お兄ちゃんお帰りー!どこ行ってたのー!?」
「市場でぶらぶらしてたんだよ。」
「ところでそのお兄さんだれ?」
「召喚されてきた人だよ。変態だから気をつけてね。」
「お兄さん変態なのー?」
「お兄さんは変態じゃないよー。騙されないでねー。」
「ところで今トオルさんいる?」
「うん!いつもみたいに書斎で本を読んでるよ。」
「あの人本当に本が大好きだなー。ありがとうサキ。」
そう言って少年は奥にある階段を上がり始めた。
「何ぼーっとしてんの、ついて来て。」
そう言われて階段を上がると二階には食堂みたいなところがあって、一人の女の人がごはんを食べていた。
「リサ姉!新人連れてきたよー!新人の………そういえば名前まだ聞いてなかったね。自分で自己紹介しなよ。」
「地球から召喚されてきた清水智也です!十六歳です!」
少しの間を置いて、その女の人が口を開いた。
「私の名前は青木理沙。リサ姉って呼んで。」
その人はとても美人だった。茶色の長い髪の毛はとても美しく、露出が多い服を着ていて、俺の目はその人に釘付けだった。
「リサ姉気をつけて、そいつ変態だから。どうせ今もリサ姉の胸に夢中だよ。」
「見てないです!それに変態じゃないです!」
「トモヤ君のエッチ~。」
「いや本当に変態じゃないんで!変態キャラを確立させないでください!」
「ところでトモヤ君はどこ出身?好きな食べ物は何?」
「リサ姉、悪いけど今からトモヤをトオルさんのところ連れて行くからそういう話はあとにしてー。」
「わかったわよー。トモヤ君、後でいっぱい話を聞かせてね。」
「じゃあトモヤついて来てー。」
そして俺はまた階段を上がり始めた。
「そういえば俺、まだ君の名前聞いてないんだけど……。」
「そういえばまだだったね。僕の名前は佐藤優希。気軽にユウキとでも呼んでよ。」
「ユウキ、今から会うトオルさんってどんな人なんだ?」
「とても頼りがいがある人だよ。この世界に長くいるおかげでこの世界のこともよく知ってる。それだけじゃなく、僕たちと家族のように接してくれる。トオルさんがいなきゃ僕たちやっていけないよ。」
「へー……そうなんだ。」
そんな感じで話をしながら階段を上がっていくと、大きい古びた扉の前に来た。
「トオルさ~ん!新人連れてきたよ~!」
「それは本当か!?今すぐ部屋に入ってこい!」
ユウキがドアを開けると、そこにはとても大きな書斎が広がっていた。本は千冊以上あると思う。多くの本に囲まれてテーブルと椅子が置いてあり、その椅子に一人の男が座っていた。その男はこちらを見るや否や口を開いた。
「ユウキよくやった!」
「市場歩いてたら、端のほうに気絶してるこいつがいたから、もしかしてと思って起こしてみたらビンゴでした。」
「新人は久しぶりだなー。三ヶ月ぶりくらいか?」
「そうですねー。最近はやつらに新人を結構連れていかれてますからねー。」
「とりあえず自己紹介をさせてもらおう。私の名は華新羅透。年齢は四十五歳だ。この世界に召喚されてもう二十年にもなる。この世界に関しては熟知しているつもりだ。」
トオルさんはその年齢よりは若く見える。伸長はおよそ百八十センチメートルくらいの、がたいのいい人だった。どこか大人のカッコよさを感じられる。
「俺の名前は清水智也。16歳です。ほんの数時間前に召喚されたばっかりでこの世界について全くわからないのでいろいろと教えてくれたらうれしいです。」
「ユウキにどれくらい説明してもらったんだ?」
「確か約千年前に四人の神によってこのフラッディーが創り出されたというところまで聞きました。」
「じゃあ私が続きを説明しよう。この世界が出来てからしばらくは四人の神がそれぞれ大陸を統治し始めていたんだ。しかし約七百年前に神たちはそれぞれの大陸から、統治者を選び出した。なぜだと思う?」
「統治に飽きたとかですか?」
「いいや違う。全知全能と人々から崇められていた神にも寿命があったのさ。神は自分らが死ぬ前に急いで統治者を選び抜いた。そうでもしなきゃこの世界が乱れてしまうからね。そうして神は統治者を選んで死んでいった。その後は平和な日々が続いたかと言われるとそうではない。それぞれの大陸の統治者は勢力を伸ばしたいがために他の大陸に進出し始めたのさ。神は人の欲望までを見抜けてはいなかった。この後は激しい戦いがつづいた。何年も何年も人々は争い続け、長い年月が経った。約三百年前のある日、あることが起きた。唯一神である''シド''の降臨だよ。戦争に疲れはてた人々の思いからかはわからないが、その神は生まれたのさ。シドはすぐに世界を治めた。シドは四つの大陸の真ん中にもう一つの大陸を作った。その大陸はどこの国にも属さない、皆が平等に扱われる大陸だった。その大陸を作った後も四つの大陸をそれぞれの統治者が統治することに変わりはないが、戦争はなくなった。だが各国間での緊張状態は続いている。そうして現代にいたるのさ。」
「そんな歴史があったんですか。」
「ああ。この世界の歴史はとても複雑だ。先程も言った通り、シドが現れなかったらこの世界は今も戦争が続いていたよ。しかしそのシドの余命も残り少ないとされてる。」
「それってヤバくないですか?」
「ああ。また戦争が始まるだろうな。私達はそれを食い止めたいのさ。私達がいるこの水の大陸は他の大陸に比べていい人ばかりだ。そんな人たちを殺されるわけにはいかない。私達''アーティクル''の目的は地球から召喚された人たちで、来るべきその日に備えることだ。私達がなんとしてでも戦争を食い止める!」
そのあともトオルさんにこの世界について色々と教えてもらった。その中でも特に気になったのはアーティクルに敵対する組織についてのことだ。どうやらこの世界にはアーティクルのメンバー以外にも地球から召喚された人間が多くいるそうで、その多くが個人として活動していたり、少人数で情報を共有したりして行動しているらしい。しかし一部の人間がこの世界でアーティクル並の組織を結成し悪さをしているという話を聞いた。結成当初は盗みなどに留まっていたものの、数年前を境に殺人などの比較的残虐な行為を行い始めたという。トオルさんは彼らのことをとても危険視していて、近々大規模な編成を組むらしい。とりあえずそのような話を長い間聞き続け、話が終わる頃には夜も更けていた。
「よし!話は一通り終わったな。じゃあトモヤこれで君もこのアーティクルの一員だ。」
「トモヤ僕たちの足引っ張らないでよね~」
「わかってるよ!」
「改めて言おう、アーティクルへようこそ!」
俺の心にはいろいろな感情が入り交じっていた。不安もあるが、そんなことよりもこれからの生活に対するワクワクの方がはるかに上回っていた。俺が召喚された異世界は想像以上に異世界モノだった。