第6話 学園での新城拓哉
学園編突入します
俺は今2年Bクラスの新城拓哉の席に座っているわけなのだが…
「新城君!先週休んでたけど大丈夫だった?」
「心配したよ」
「体調治ったみたいだね」
「昨日のニュース見たよ!」
「あ!私も観た」
「あれだよね!街中で出現した魔物を倒したんだよね」
「政府の殲滅隊が来る前に倒しちゃうんなんて凄いね!」
「さすが新城君だね!」
新城はどうやら先週体調不良で欠席という事になっていたらしい。
そして、昨日のスライム倒した事がどうやらニュースになっていたらしく、クラスメイトの女子たちが新城拓哉、もとい俺の机の周りでずっと話しかけてくる。
まさかこんな状況になるとは思わなかった。昨日の出来事がテレビで放送されているとも思わなかったな。でも話し掛けられる事は、新城拓哉が有名になってから良くあった事なので、別に動揺も何もしないんだけど…新城拓哉としてどう対応すればいいのかが分からん…学園での新城拓哉がどう言う奴だったのか、桜や永瀬先生から聞いておけば良かった。
「体調は治ったよ。それと、昨日の魔物はそんなに強くなかったから凄い事じゃないよ」
俺はとりあえず謙遜と云う無難な返事をした。すると、周りの女子たちが眼を見開き疑うな眼差しを向けて全員黙ってしまった。
えっ?もしかして俺、返答間違えた…ヤバイ、どうしよう、学園生活初日で俺の影武者人生終わったかも……と思っていたが、
「キャアアーーー!」
「新城君が話してくれた!」
「こんな嬉しいことないわ!!」
「今日は私の中で一生の思い出になる」
「こんなに優しい新城君初めて見た!」
女子が黄色い声が俺の周りで鳴り響く。
えっ?!何この状況…返事しただけだぞ俺、それ以外に何か女子が喜ぶ事なんて言ったっけ………言ってないよな。
と云うことは、これが新城拓哉と云う人物の学校での評判なのか…返事をしただけでこの黄色い歓声……一言言わせて貰う……羨ましすぎだろ!!!新城の野郎!!こんなに女子からチヤホヤされて!!俺は前の学校では皆んなに冷やかされていたのにこいつは!!!………ううぅぅぅ。。。もう泣きたいよ。。
「お前らチャイム鳴ってるぞ」
先まで騒いでいた女子たちが一斉に席に戻っていく。
騒ぎの状況から、ひと声で救い出してくれたのは白衣を着た黒髪ロングのボサボサの髪の背の高い永瀬先生だった。学園長室でも咥えていた煙草らしき物を教室にまで咥えて来ていた。マジで大丈夫なのかこの教師…
「今日は先週のおさらいから入るぞ」
永瀬先生は教壇に立ちチョークを持ち、黒板に次々と言葉を書き連ねてく。俺は気持ちを切り替えて、黒板の字をノートにうつすのだが。あれ?黒板には前の学校で見た事がある授業だった。それは、前の学校で既にやり終えていた数学の授業だった。俺はてっきりこの学園ならではの授業だと思っていたから拍子抜けだった。
「じゃあこの問題の答えを」
永瀬先生はクラスを見渡す。
あっ、眼が合った。
「新城黒板に書きに来てくれ」
普通俺を指名しますか永瀬先生。
解かない訳にもいかないので指名を受け俺は立ち上がり黒板に向かう。そして、チョークを受け取り答えを書いていく。自分で言うのも何だが俺は勉強が出来る方なので難なく解いてしまう。
「正解だ」
合格を貰い俺は席に戻って行こうとするのだが、んっ?永瀬先生が俺の手に紙を握らせた。皆んなからは教卓で見えていないようだった。俺が永瀬先生の顔を見てみると早く席に戻れと言うような顔をしていた。
怖いよこの人…
そして席に着いて永瀬先生から受け取った。と言うか受け取らされた紙を開く前に、俺は一つ新城拓哉と云う人物について分かった事があった。
俺の席は一番後ろの窓側だ。皆が望む最高の位置な訳なのだが、黒板に答え書く為には勿論皆の前まで出なければいけない。そして、答えを書き終えたら席に戻らなければいけない訳だが、答えを書き終え席に戻る時にクラスメイト皆の顔が見える訳だ。
その席に戻る時、女子からは「素敵」と云うような好意的な眼差しが送られてきて、男子からは「なんだこいつ」と云うようなドス黒い負の感情の眼差しが送られてきていた。この事から新城拓哉は明らかに男子に嫌われている事が伺えた。そして、女子からは人気が有るのも改めて感じた。
まあそんな事よりも永瀬先生から貰った紙を見よう。
【2限目の授業後の昼休みに一階にある私の教室まで来い】
紙には簡素にそう書かれていた。ラブレターというより脅迫文だなと率直に思った。
それになんで授業終わってから口頭で言わないんだろう。そんな疑問を感じながらも授業は進んでいき、数学の授業は終わった。
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俺は今、先ほど渡された紙に書いていた通り、昼休みに永瀬先生専用の教室に来ていた。永瀬先生専用教室はゴチャゴチャ物が散らかっていて、ホワイトボードには幾何学的な模様や数字が羅列されていたり、何かしらの生物がホルマリン漬けにされてあったり、如何にも実験室のような教室だった。この教室の場所も目立たないような場所だったし。
「新城、いや、ここでは加隈拓洲と呼んだ方がいいか」
永瀬先生が椅子に座りながら言う。
「あまり騒ぎを起こすなよ」
朝の騒ぎの事を言っているんだろうな。
「すいません。でも新城がこの学園の生徒にどう云う認識のされ方をしているのか知らないので、どう対応すれば正解か分からなかったんで」
永瀬先生は考えるそぶりを見せている。
そう云う素ぶりを見せるとマジで医者とか科学者に見える。実際教室の感じから観ても何か実験やら何かをしてるっぽいけどな。教室を見渡しながらそんな事を思っていると、永瀬先生が思慮が終わり話し始めた。
「新城は生徒ととはあまり交流を持ってなかったな。会話もほぼしていなかった。あったとしても、素っ気ない態度と返事をするだけだった。自分から話しかけるなんて事はまずなかった」
なるほどな。だから、俺が普通に返事しただけでちょっとした騒ぎになったのか。
「まあ、お前はそこまで気にせず普通に他の生徒と接すればいいぞ」
「いいんですか?新城みたいにしなくて?」
意外だな…騒ぎを起こすなって言われたから、もっと新城っぽく生徒と接しろって言われると思ってたんだけどな。
「さすがに会話し過ぎて、疑われてバレる何てことになったらあれだけどな」
ですよねー。
「だが、普通の会話ぐらいで新城じゃないなんて疑う奴はまずいないだろ。さっきだって騒ぎにはなったが疑う奴なんて1人もいなかっただろう。それぐらい加隈と新城に似ているからな」
確かに…実際驚かれはしたけど、結局誰も俺が新城じゃないなんて疑う奴なんていなかった。
「まあ最悪の事態が起これば私もそれなりの対処の仕方は考えてるから大丈夫だ」
そうだよな。最悪永瀬先生に頼れば良いか。
「まあ最悪の事態が起こらなければいい話なんだがな」
眼を鋭くして言わないで下さいよ。折角頼ろうとしたのに…
「努力します」
「あと、お前にこれを渡しておく」
永瀬先生はそう言うとデスクの上に置いてある分厚い本を数冊手渡して来た。
「これは?」
「架琉乃学園に通う3年間で勉強するこちら側の世界での色々な知識だ」
こちら側の世界とは悪魔や魔物と戦う世界と云う意味だろう。
「普通の授業の本は要らないんですか?」
「ああ、それは別に要らない。ノートさえあれば大丈夫だ。因みにテストは普通の数学、国語、英語以外に、今渡したこちら側の世界に関する知識のテストもあるからな」
と云う事は、俺は一年ブランクがある訳だから、去年の一年分も勉強しなきゃいけないと云う事か……メンドくせぇー。多少の事は前の学校でも歴史の授業として聞いたことがあるけど、本当に多少だ。だから、詳しい知識などは一つも持っていない。
「因みにですけど、新城はどれぐらいの成績だったんですか?」
一応学力も新城に合わせた方が良いと思ったので聞いておく。
「新城は完全な実践派馬鹿だったから、頭を使うテストはサッパリだった」
じゃあ、俺も勉強しなくていいんじゃないか、新城に似せる為にも。
「じゃあ、俺も勉強しなくていいんじゃないか、とか考えてないよな?」
冷や汗をかいた。
よく分かってらっしゃいますね。流石先生です。
「お前は明らかに新城より弱いんだから、新城が持ってなかった知識で差を縮めておいた方が良い。だから勉強はしておけ。あと、勿論だが桜から渡されたパワーアップメニュー表、だったか。それもちゃんとやっておとけよ」
「分かりました」
桜に「人は簡単に死にません」って、言われてるけど、パワーアップトレーニングと一年間分の勉強……過労死するんじゃないか俺。
そのあとも、永瀬先生から学園の事や神城拓哉の話を聞いていたので、教室に戻った時にはお昼ご飯を食べる時間がなく。俺は午後の授業、空腹のまま授業を受けることを余儀なくされたのだった。
次回新たなキャラ登場します!(女子)