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影武者は本物を超える  作者: まるのり
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第2話 命の恩人

「うわ〜〜っやられちゃいました」


何処からか可愛らしい声が耳に届き、俺は脳を覚ましていく。そして眼を開けるとそこは自分の部屋(寝室)だった。ただ1つ違うとすれば一人暮らしの俺の家に先程の知らない人の声が聞こえてきたことだ。聞いた感じ女性と云うのは分かる。あと若そうなって云うか幼い声だと感じた。俺は声が聞こえてきたであろう部屋リビングを開けて見る。すると、そこにはソファーに座ってテレビゲームをしている人がいた。


・・・・・・・誰だ。


恐る恐るソファーに座る人の前に回り込み顔を確認すると……それはもう美少女だった。髪の毛がロングのピンクで身体には無駄な肉が付いてなく、まあ胸はないが外見的にも丁度合っていて良いし眼もクリッとしていて大きく……もう誰が見ても美少女と言える程だった。と、そんな見た目の事は重要ではなく俺はこんな美少女を知らないということが重要な訳で。と、ゲームに夢中だったのかやっと俺と眼が合う。


「起きましたか拓洲さん」


何で俺の名前知ってるんだ?

ソファーに座る少女が俺の名前を呼んできたのに驚いたが、もしかしたら昔何処かで会った事があるのかもと少女の顔を凝視して頭の中を掘り返して見る………がやはり俺はこの眼の前の少女に出会った覚えも記憶もない。


「ごめんね。失礼かも知れないけど俺と何処かで知り合ってたっけ?」


「はい、知り合いですよ」


マジか…全然記憶にない。憶えてないのはこの少女に対して失礼すぎるだろう。何とか思いださなきゃ。

知り合いだと言われ何とか思い出そうとするが、やはり俺の記憶が蘇る事はなかった。だけどこれは蘇らなくて当然だった。


「私が一方的に」


「……うん。それは知り合いとは言わないね」


マジで何なんだこの美少女は……

一方的に知っているだけで知り合いと云う謎の少女は不思議そうな顔で俺の顔を覗き込んでくる。てか、そんなに覗き込まれるとさすがに恥ずかしい。と、そんな事を考えている場合じゃなかった。


「君は何で俺の家に居るのかな?」


知り合いでもない少女は何故俺の家にいるんだ?それが疑問だった。てか、知り合いでも勝手に入って来たら駄目だけどな。普通に考えたら不法侵入だし。それにどうやって入って来たんだ?


「はい?この家は拓洲さんの家じゃないですよ?」


……この少女何言ってるんだ?

謎の美少女は更に謎な事を言ってきた。この家が「俺の家じゃない」と、そんな筈はない。何故なら先程まで寝ていたベッドもこの部屋の家具も全て俺が買い揃えた物だからだ。


「いやここは俺の家だよ」


「いえ拓洲さんの家じゃないです」


「いやここ–––」


「違います」


このままじゃ埒があかないなと思い俺は手っ取り早く住所を聞く事にする。


「そんなに言うならここのマンション名を言ってくれるかな」


「ビリースマンションの60階です」


「ほら!俺の家と全く一緒だ!君が間違って–––」


「どうしました突然黙って」


 少女が怪訝そうな顔つきで覗き込みながら言う。


「今何て言った?」


「何て、と申しますと?」


「何階って言った?」


「60階です」


「・・・・・・・」


俺は今まで眼を向けていなかった部屋の窓に眼を向ける。窓はカーテンで閉められていて外が見えなかった。勿論このカーテンも俺が買った物だ。そのカーテンを俺は勢い良く開ける。


「マジかよ…」


ついそう声が無意識に出てしまうほどの衝撃だった。

視界に映ったものと云えば今まで家から観てきた景色ではなかったのだから………高さが違う。俺の家はこのマンションなのだが10階に俺は住んでいる。だからこんな上から街を見下ろした景色を見たことがない。

えっ?て言うことは俺が他人の家に居るって事………


「すいませんでした!!」


「どうしました?」


「私が間違っているとも知れず!本当に申し訳ありませんでした!」


俺は最大級の謝罪土下座をする。それぐらいしなければ自分の気が晴れない。いや、土下座するだけでも晴れないけどね。


「いえいえ別に良いですよ誰にでも間違いはありますから」


ピンク髪の美少女は微笑みながらそう言ってくれた。


「それに間違ってはいませんからね」


ん?間違ってはいませんって一体どういう意味だ。


「拓洲さんは別に何も間違っていませんよ」


「間違っていないと言うのは?」


「この家に拓洲さんがいる事がですよ」


「それはどう云う事かな?」


「私が拓洲さんをこの家に連れて来たんですから!」


何言ってんだこの少女は。


「…いやいやいや、俺は君なんかに連れて来られた覚えないよ」


この少女の言うこと全て理解する事が出来ず俺は頭がパンクしかけていた。


「そりゃ覚えてる訳がありませんよー。気を失ってたんですから〜」


気を失ってた?俺が?一体全体どう云う事なんだ。


「あ〜、ショックが大き過ぎて記憶が混濁してるんでしょうね」


記憶が混濁?もうこの少女の言う事全て何が何だか分からない。


「自力で思い出せそうにないので言いますけど、拓洲さん魔物に襲われてたんですよ」


……–––っ!

そうだ!俺は確かに狼型の魔物に襲われた!完全にその部分が記憶から消えてた。確か…学校帰り、買い物帰りの時に運悪く魔物に出くわして、最初は逃げたものの結局逃げるのが無理だと判断して戦って両眼にダメージを与えて今度こそ逃げれると踏んで逃げだしたら、結局逃げられるず魔物が落とした剣を拾いに行き振り返ったら、魔物が眼の前まで迫っていて俺の視界に狼型の魔物の喉仏が………そう言えばその瞬間に誰かの声が聞こえてから気を失ったんだ。でも俺が生きていて少女が俺を連れて来たって事は……その声の主は…俺は少女を真正面から見る。


「君が助けてくれたのか?!」


「記憶が戻ったみたいですね」


その答え方は肯定と受け取っていいんだよな?

少女は今まで手に持っていたゲームのコントローラーを置き立ち上がりる。俺の身体をジロジロ見てくる。何?凄く恥ずかしいんだけど。


「身体の外傷はなかったけど痛い所とかないですかね?」


何だ心配してくれていただけか。こんな美少女に見られるから無駄にドキドキした。


「いや特に痛い所はないな」


「それは良かったです」


俺は眼の前の少女に言わなければいけない事を言う。


「助けてくれて本当にありがとう!」


俺の命の恩人、もしこの眼の前のピンク髪の少女が現れて助けくれなかったら今頃、俺は魔物に喰われて腹の中で溶かされ分解され魔物の栄養となっていたことだろう。そう思うと今更だがゾッとする。それにこの家まで運んでくれて傷も見てくれて感謝しかない。


「何かお礼をさせて欲しいんだけど」


「別にお礼なんていいですよ〜」


少女は苦笑しながら答えるが、


「そこを何とか!掃除とかなんでもするぞ!」


俺は少女に懇願する。少女は顎に手を置き考えるような仕草を見せる。可愛いな…そんな事を考えていると、何か思いついたようでポンと手を叩いた。


「では改めて命の恩人として一つ。私のお願いを聞いてくれる?」


改めて懇願するよに聞いて来るので俺はすぐさま頷いた。

命の恩人の頼みなんだ!どんな頼みだって受け入れる!それ程俺はこの少女に感謝している。


「これから新城さんの影武者になって頂けますか?」


………んっ?一体この少女は何を言ってるんだ?新城さん?影武者?意味が本当に分からない。


「あのー、意味が分からないんですけど」


「取り敢えず、引き受けてくれますか?そんなに大した事ではないので」


上目遣いで頼んでくる少女。

可愛い…上目遣いが可愛すぎる…とそんなこと今はどうでもいい。いやどうでもよくはないが一先ず置いておいて、意味はよく分からないけど命の恩人からの頼みなんだ!どんな頼みが来ようがはたから断る気なんて一切ない!二度思うほど少女に感謝している。命に代えてもそのお願いは果たす!!


「分かった引き受けるよ!」


「ありがとうございます!」


満面の笑みを見せる少女、やっぱり可愛いなぁ。


「いやいや、お礼を言うのは助けて貰った俺の方だ。もう一度言わせてくれ。本当にありがとう」


俺は頭を下げる。


「で、さっき言ってた頼みってのは結局どう云う意味なんだ?」


「意味はそのままですよ新城しんじょうさんの影武者して欲しいと」


影武者って……あれだよな。昔の人がよく自身と似ている人を自身の身代わりとして使ってた人のことを影武者って言うんだよな…今更だけど俺結構やばい頼み聞き入れちゃった?でも少女は「大した事ない」って言ってたし大丈夫……だよな?


「影武者するのはいいけど、その新城さんって人はどんな人なんだ?影武者するからには背格好とかも似てるだろ?」


「はい似てますね!それはもう瓜二つです!私もビックリしましたよ!」


 へ〜、このリアクションからして相当似てるんだろうな。


「写真見ますか?」


俺は少女が取り出したスマホ画面を覗く。正直自分の顔とスマホに映る人の顔が自分で似ているか判断するのは難しいが、そんな事よりも一つ気になることがある。


「なあ、この黒パーカーに架琉乃かるの学校の制服……まさかだと思うけどこの新城さんって人…」


「はい!拓洲さんが思っている通り新城拓哉しんじょうたくやさんですよ!」


………マジかよ。新城さんって言うからテッキリ年上の俺に似ている人かと思っていたんだけど。

新城拓哉、庶民の俺でも知っている最近話題の有名人だ。1年前にソロモン72柱の1悪魔を1人で倒しその名を世間に轟かせた。ソロモン72柱の悪魔を1人倒すのがどれ程凄いのかと云うとソロモン72柱を1人倒すのに悪魔を倒してきた実力と実績がある大人が5人がかりでやっと倒せるかどうかと云うところだ。それをこの新城拓哉と云う悪魔対策機関学園、学園名、架琉乃かるの学園に通う当時16歳のルーキーが1人で倒したというのだ。それにこの幹部悪魔を倒した3ヶ月後にも幹部悪魔を1人倒して、今では学園に入学してから一年で計12人と云う月1人のペースを1人で悪魔を倒し続けている。


「マジかよ〜。新城さんってあの新城拓哉の事だったのかよ〜」


「どうしたんですか?何だが嫌そうですね」


そりゃそうだよ!考えてもみろ、自分で言うのもなんだが俺は新城拓哉にソックリと言われ続けていた!顔に背格好に声、髪型だって黒髮で全てが一緒なんだ。俺の両親でさえ初めてテレビのニュースで新城拓哉を観た時、俺と勘違いして大騒ぎになったからな!両親でも俺と間違うほどなんだ!そんな俺が外に出歩いてみろ、道行く人に「新城拓哉さんですよね?」「写真撮っていいですか?」「サインください!」と、声を掛けられては俺は新城拓哉じゃないと説明しては「そんなわけない」と1ヶ月もそんなやり取り続けていた。そんな事が毎日続き俺は外に出る時は顔を隠すように本物の新城拓哉のようにパーカーのフードを被って目も悪くないのに眼鏡を付けて行動するようになった。

それに高校でも同級生から新城拓哉に似ていると云うだけで冷やかされ、教師からは新城拓哉と比べられると云う訳が分からない始末を受けた。新城拓哉には悪いが俺は新城拓哉を勝手に恨んでいた。


「で、その俺が影武者する新城拓哉は何処にいるんだ」


俺は嫌な思い出を振り返って少し不機嫌になりながらも新城の所在地を聞く。


「新城拓哉さんは死にました」


なっ!?

これ又衝撃過ぎる事実を知らされ俺は開いた口が塞がらなかった。

だってそうだろう…1年前に突如として現れた最強ルーキーが死んだなんて…でも待てよ、そんな情報俺たち庶民の耳に入って来てないぞ。新城拓哉が死んだなんて情報が入れば瞬く間に世間に広がる筈なのに…


「本当に新城拓哉は死んだのか?俺たち庶民の耳にそんな情報入ってないし、テレビニュースにもなってないんだが」


「それそうです。死んだのここ最近で、それにこの情報は極秘事項なので世間には発表されていません」


新城拓哉が死んだ事が極秘事項ってどういうことだ?今までの悪魔を倒して実績・地位・名誉を与えられた人物はもれなく死んだ時テレビニュースなっていた。この新城拓哉にもそれが言えるだろう。史上最年少で悪魔の幹部クラスを倒したと云う事実は。


「疑問に感じているようですね。何故世間に公表されないのかと」


そりゃそうだろ。


「3年前に亡くなった。当時55歳でありながら現役の悪魔退治のスペシャリストとして名を馳せていた葛城宗かつらぎそうと云う人物は知ってますよね」


それは勿論知っている。

葛城宗かつらぎそう、当時架琉乃学園に通う17歳にして幹部悪魔を1人で倒した新城拓哉が現れる前までの最年少記録の持ち主。この葛城宗は少女が言う通り3年前に亡くなった。理由は悪魔退治に出た際の戦死。このニュースを国は公表し俺たち庶民の耳にも入ってきた。その時の衝撃は世間を騒がし、悪魔たちの行動も活発になり国にダメージを与えた。


「葛城宗さんが亡くなった時の衝撃は今でも忘れません。そして、その葛城宗に代わるこれからを担う若者が死んだと世間が知ったらどうなりますか?」


それはまた騒ぎになり悪魔の動きが活発化して3年前のように国にダメージを与えるだろう。そこで俺は理解した。


「どうやら理解してくれたみたいですね」


「でも待ってくれ、世間には騒がれないにしても悪魔側にはバレているんだからどっちにしろヤバいんじゃないのか?」


世間の騒ぎはなくなるが悪魔に情報が渡れば国のダメージは免れない。


「それは大丈夫です。新城さんを殺した悪魔は直ぐさま捕縛しましたから悪魔側に情報が入っている事もないです」


なるほど、確かにそれなら世間に新城拓哉が死んだ事を公表しなければ国にダメージがいく事もないだろう。


「そう言う経緯があり、新城拓哉さんに似ていた加隈拓洲かぐまたくすさんが襲われていたので助けて恩を着せて影武者を演って頂こうかと!」


あ…もう恩を着せるとか言っちゃうんだ、まあ助けて貰った事実は変わらないからいいんだけどね。


「でも、そんな似てるだけの俺が影武者になるなんていつか化けの皮が剥がれるじゃないのか」


「その辺は大丈夫です!こちらも色々対策を取ってますから」


なら良いんだけど、話を聞いたら凄い重要な役割だからもし誰かにバレて死刑なんて言われたらたまったもんじゃないからな。流石に死刑はないにしろ、何かしら罰が来そう…正直今からでもいいからこの恩着せのお願い断りたい……


「あっ!言い忘れてましたけど、もし誰かに正体がバレたら死刑ですからね!」


あっ、今直ぐ辞めたい………よし、一度ダメ元で頼んでみよう。


「あの、このお願い辞退–––」


「ダメです」


ですよねー、ニッコリ笑って言う少女がこの時だけは凄く怖かった。


「それでは明後日から学園に行きますので心の準備だけしておいて下さいね!」


学園って事は俺が今まで通っていた普通の公立高校の事を言ってる訳じゃないだろう。


「新城が通っていた架琉乃学園の事だよな?」


「はいその通りです」


悪魔対策機関学園の一つ架琉乃学園。100年前に設立した対悪魔の為だけに創られた学園で授業内容ややっている事は一切情報が外に流れない学校。ただ唯一そこで外に流れる情報は悪魔を倒したり活躍した人の名前と顔だけ、それ以外は一切流れないので有名な学校だ。 そして入学も厳正な審査が必要だと聞く。その辺大丈夫なのだろうか。あっ、それに…


「俺が今通っている学校ってどうするだ?」


そう。新城拓哉が通っている学園に影武者として通うのは分かったが俺が今現在通っている学校はどうなるのかが不安だ。


「それは大丈夫です!こちらが色々手配して転校という事にしますから」


何その裏工作みたいなの…


「でも俺の両親が納得するかどうか知らないぞ」


「そちらも大丈夫です!こちらがちょちょちょいとすれば」


ちょちょちょいって部分何!?笑顔も相まって怖過ぎるんだけど…でも国ぐるみの話っぽいしどうとでもなるんだろうな……

はあ〜、これからどうなるんだろうな。


「あっ!あと言い忘れていた重要な事が一つ」


「まだ何かあるのか…俺の頭はショート寸前だぞ」


俺は呆れながら長い溜め息を吐く。


「とっても重要な事です」


「何だよ」


神妙な面持ちなので俺も身構えてしまう。


「私の名前は加美乃桜かみのさくらって言います!桜って呼んで下さい!これからよろしくお願いしますね!」


「自己紹介かよ!?」


まさか自己紹介と云うくだらない事が重要な事だったのか。


「そうです!初めてこうしてお会いしてこれから一緒に頑張るんですから重要な事でしょう」


笑顔で自己紹介をする桜の言い分を聞き俺も自己紹介をしておく事にする。


「俺の名前は…まあ知ってるだろうが加隈拓洲かぐまたくすだ。よろしくしたくないけど、これからよろしく」


「よろしくお願いしますね拓洲さん!」


これから如何なるんだ…



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