強制力には負けないぞ!
そんなこんなで、シナリ通りの運命を回避、ってのは速攻頓挫しました。
うーん、そもそも入学したのが間違いだったのかな。
でもこれなら、むしろ入学してなくても、いつの間にか学園でうろうろしてることになってたかも…。
ただし、今の態度とか不審に思ってるお友達しかり、今までの準備とか、全くの無駄ってことは無かったみたい。
おかげでちょっと糸口は見えてきました。
きっかけは、私、部屋に一人でいると、自由に動けるんですよ。 侍女とかいるとダメですけど。
そして、独り言の振りして何か言うと、一部侍女とはコンタクトとれるんですよ。
私が一方的に言うだけですけど。
会話として、返事されて返そうとすると、フリーズ。
その侍女の報告、いや独り言を、一方的に聞く分にもOK。
一部以外の侍女には、言っても聞こえないか、その指示を反映した行動をとることが出来なかったり。
はて、この違いは… って、わりと簡単かも。
多分だけど、私が、公爵家に来たせいで、新しく雇われた人間ってこと。
本来なら、きっとゲームの舞台には登場しなかった、登場人物。
だったら、私が、部屋の中なら自由に動けてるのって… と見渡すと、そこそこ上等な部屋。
豪華じゃないんだけど、さりげない上質さがしっかりと主張してる、わりとランクの高い部屋。
うん、きっと平民特待生だと、この部屋はナイ。
だから、確認してもらったんだけど、マリーたちは、部屋の中でも自由には動けてない。
うん、仕事さぼったり授業さぼったりしてるの、私みたいに自由に動けるようになったら、取り返そうとすると思ってたんだけど… やってないって。
ああ…。 私ってヒロインだけど、今の環境だと一番のイレギュラーになってるからね…
とはいえ、そうと分かれば、やるべき道筋はある程度。
まず、適当な部屋を空けてもらって、大丈夫な侍女に、マリーをそこに案内してもらう。
おー、動けるって? 泣いてた? ああ…
強制力回避法の説明もしたね?
使える侍女をピックアップして、配置。 とりあえず部屋は交換ね。本来の? 好きにどうぞ。
王子達もだけど、寮って男女は分かれてるからなあ。
でも大丈夫。 保険がいる。
だってねえ。 私達、入学した途端、行動がアレだったでしょう。
侍女たちって、家に報告も仕事だしね。 動けない侍女は無理だったけど、大丈夫なのが公爵家に報告。
で、公爵様が事態を把握。 そこから王城にも話が回って…。
あはは、いつだったか茶番劇やってる時に、妙に気配の薄いのが、うろうろしてましたよ。
公爵様とか王様とか、学園外には強制力かからないのかな。 ありがたい。
それと、こっちは私の立場が変わったから使える人材がいるんだけど、王子達は全員本来のままだから…
うん、誰にも頼れないって、ツラかったね…
強制力かからない人材の条件も、報告させて。
で、そこそこ信頼のできる、本来ならそんな任をしない人材で、こっそり男性寮に隠し部屋増設。
へえ、攻略対象者同士なら同部屋でも動きは阻害されないんだ。
そっちで、放り出してる仕事片づけたり課題やったり。
あ、侍女や侍従も、追加されたり。
ただなあ、基本的な強制力はどうにもなってないんだよね。
どうにかならないかな。それともいっそフォローの方向で考えるべきだろうか。
****
えー、そんなこんなで試行錯誤しつつ。あいかわらず学園では勝手に体が動いていまーす。
そしてイジメも本格化してきてたり。
ああ…、教科書びりびりに。 筆箱も無い。
ん? 上に気配が… バシャッ! 水~
おおぅ、魔法でゴオッツ! と。
マリーが勝ち誇った顔でそれを哄笑い、私は私で王子らに泣き付く~
そんなある日~
ん? なんか警告っていうか焦りの空気が漂ってきてる。
この気配はマリーか。
私はいつものごとく、勝手にふらふらと。
ん~? なんだろな。
えーと、このままの進路だと…
あー! そういやそろそろ階段落ちの季節だった!
それでか。きっと (ちょっとー! 殺人未遂とか嫌よー。回避できるなら来ないでくれる?)ってあたりかな。
ええ、まあ努力は… っていつものごとく無駄か…
(ああ、ジャンナの気配近づいてくる~。ダメ? 駄目だった?)
(うん、ゴメン、無理かも。 やりたくてやってんじゃないの分かってるから気にしないで。まあ、諦めて ドーンっとやっちゃって~)
うーん、ダンスがある卒業パーティには出てたんだから、命に別状はないよね。踊れないほどの怪我もないと思うんだけど…
階段結構高いな… ああ、落とされるの分かってて、落とす人いるの分かってて上ってくの、ドキドキするよぅ…
そして ドーン… って!?
はっ! とうっ! ほっ!
タンッ! … ズベシャッ!?
えーっと、解説いたします。
結構な高さから、ドーン っと付き落とされた途端、強制力OFF。
焦りつつも、冒険者生活で培った運動能力を発揮し、手すりや壁を使って衝撃を緩和。
無事、華麗に着地して… 何の要因も無いのに、急に床とお友達…。
そしてそのまま強制力復活! で動けない…。
床はお友達… ← イマココ
そしてバタバタと王子達が駆け寄って来て
「「どうしたの!」」「大丈夫か」って大騒ぎ。
「ううっ、マリー様に突き落とされて…」
「なに!」「あ、この落ちてるブローチ、確かに妹の!」
あー、さっきマリーがわたわたしてたの、それか~
(あー、ブローチ! 証拠隠滅させろー!)ってことか。
まあ (無事? 確認させろ~)ってのもあったかもはしれないけど。
にしても。
えー? あれそのまま落ちてたら、どうやっても骨折まではいったけど…。
強制力で怪我しないように落ちるのかと思ってたら… まさかの自助努力…
強制力ヒデェ…。 お~ぼ~え~て~ろ~!