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ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
最終章:倚界の中心でミサキを叫んだ室戸
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#097:放射な(あるいは、室戸の中心で、室戸を叫ぶ)


 改めて間近で永佐久ちゃんと対峙すると、ほのかなバラ系のいい匂いがふわりと来て、その女の子らしさに、陳腐な言い方ながら、胸がドキドキする。本当に意識できるほど自分の鼓動が脈打ってるのがわかるわけで。顔が、耳が熱い。


「聞いてる? ムロト」


 永佐久ちゃんはさっきの猫田さんのように、僕をからかってる風では無い。何かを……何かを確かめたい? ……そんな感じで僕の答えを待っているようだ。僕は軽く頷くと、とりあえず自分の今までのことを振り返ることにした。


「自分は……自分は小学校の頃はとにかく女の子にモテてたんです。本当に。でも中学になってからは……全然でした。友達としては見てくれても、つきあうとかの話になると、やんわりと断られたり、告白したことをバラされて、周りの女子たちから警戒されたりとか……何か、何かうまくいかなかった。それがいつしかトラウマみたいになって……中高は女の子から意識的に遠ざかってました。はじめは男友達とつるんでたりもしてましたけど、そこでも厄介なことが起きたりと……やっぱり自分、人付き合いというものが根本的に苦手だったんだな、って今思うと、そんな風に客観的に見れますけど、当時はほんと、自分の殻をびっしり体表面に張り巡らせているような……誰からも理解されない、って思い込んでうじうじしている……ほんとのダメな奴だったんです……」


 支離滅裂に吐いた僕の言葉から、永佐久ちゃんは何かを探そうとじっと聞いていてくれる。


「大学に入ったら、東京に行ったら、何かが変わるかも知れない……その思いだけで必死こいて勉強して、東京の私立になんとか受かって……母子家庭の母親に無理言って入学させてもらって上京して! でも結局ダメだった! なりふり構わず、自分が好きかじゃなく、自分を好きになってくれそうな相手ばかり選んで口説いて! でもひとつもうまくいかなかった! 当たり前ですよね? こんな奴、好きになる女なんているわけない!」


 僕はそう当り散らすように言ってから、嗚咽している自分に気づいて、何とかそれを収めようと深呼吸をしてみたりした。と、永佐久ちゃんは僕の瞳を真っ直ぐ見据えたまま、僕の両肩にそっとその小さい手を置いた。


「ムロトの恋愛がうまくいかないのは、ムロトに自信がないだけ」


 そう言ってすこし微笑んだ顔は、ツンでもデレでもない、自然な表情だった。引き込まれそうになる、純粋な表情だった。


「じ、自分……は」


 僕は何かをしゃべろうとするが、


「自分のこと、『自分』って言うのやめなさいよっ、自分に自信が無いからっ、『自分』なんて言葉で逃げんのよっ」


 再びツンの顔に戻った永佐久ちゃんに、肩を揺さぶられながらそう遮られる。自分。自分。


「男なんでしょ!? ムロトミサキは男だっ、て、そう自分に言い聞かせてなきゃ、本当の男になんてなれないんだからっ! 言ってよ! 僕でも俺でもいいからっ!! 『男だ』って腹の底から叫んでみなさいよっ!!」


 永佐久ちゃんの瞳が濡れて光っていた。この人は……僕を分かってくれてるんだ。今分かった。この人の言葉には……応えなくちゃいけないっ……!!


「ぼ、……ぼ、……」


 それでも、今までの悲しい記憶が、僕の喉を圧迫するかのように、それを叫ぶことを阻む。身体が拒否しているのか?


「……」


 僕はDEPを遥か彼方に撃ち放った時の感覚を呼び覚ましてみる。体内から外界へ、管が繋がったかのような感じ。アオナギが言う、分裂して、揮発して、拡散する感じ。そうだ。もう分かってるじゃないか。うおおおおおおおおおおおおっ!!


「……僕は男だっ!! 僕は……男だっ!! 僕はっ! 男なんっだぁぁぁぁぁぁぁっ!!」


 繋がった!! 拡散したっ!! 真夜中の公園に響き渡る大声に、内心僕はひやひやしつつも、僕は溜王の時以上の開放感やら高揚感を味わっていたわけで。目の前の永佐久ちゃんは目を赤くしながらも、可愛らしい笑顔を見せてくれていた。本当に、僕はこの人に感謝する。いくら感謝しても足りないくらい。しかし、


「ぼ、僕はそのっ……! ほ、ほんとうにあ、ありが……」


 感謝の思いを素直に伝えようとした僕の言葉はそこで途切れてしまった。


「!!」


 永佐久ちゃんの唇が僕のそれを塞いだからだ。


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