#060:形骸な(あるいは、かくも臆面もなく繰り出されるコピペ展開)
「フォヌカぁっっ✩フォギカぁぁぁぁぁっっっ!!」
諸々あったが、第三戦は<青:平常心乖離率409%>にて終局した。
「……このルールでの400%はやばいぜ! 『10,000ボルティック』超級が来ちまうよっゴアヘっ!」
切羽詰った桜田ちゃんのネイティブ忠告も聞かず、
「しかしてこれは真に平常心からの乖離なのか? そう問いたい思いで頭の中が埋め尽くされるワタクシであって、そもそも平常なる心理状態とは何か、その辺りから突き詰めていかないことには……あれあれあれwww おかしいですね、もしやワタクシ負けてない? 逆頓死? えー、アヤ・ハツマがこう、裸で。こう来てこうで、ひゃー」
ぶつぶつと何事かをつぶやいている内に、根津氏は相当きつめの折檻電流に貫かれ、冒頭のちょっと形容しにくい叫び声を上げて、果てた。
「き、棄権で」
そしてそのチームメイトの内ひとりがその惨状を見てすぐさま降伏の意思を告げたのだが、いきなりもう一人が激昂すると、その相方の首を掴んで揺さぶり始めたわけで。
「甚野氏〜、だから貴様はダメクエでも馬鹿にされると言うのだ〜」
「は、八田氏〜、一歩千金、二歩厳禁!」
何やらコントみたいなやり取りが始まったけど、何これ。
「『棄権』なんて誰も言わんのだこの神聖な場では〜! よく見さらせ〜」
と、首を絞めていた側、ガリガリの長髪メガネ、八田がリングにおもむろに上がってきた。やるつもりか。自陣営からは続けて行けとの無言の合図。あなたがた楽したいだけでしょ。抗議したところで聞く耳持たないと思うので僕はこのまま続投を決意する。が、
「あ、負けました」
八田は僕と対峙するやいなや、そう聞こえるか聞こえないかくらいの小声で言うと、頭を下げた。
「投了!出た投了!出た!得意技!これ!投了出たよ〜!」
瞬間、息を吹き返したかのように、絞められていた特徴の無い方、甚野がまくしたてる。もういいよ、もういい。
そんなこんなで僕らチームはスコンと三連勝。準々決勝へと駒を進めたのであった。これで十五万。チャリチャリーンという音が僕の脳内で弾ける。そんな僕にまたしても声が。
「おう! ムロト」
桜田さんだった。さっきもその前も実況少女たちに労われたけど、このやりとりがテンプレ化してるかのように、僕のもとにモテが訪れている。
「やるな、DEPの出し方も、その内容も」
にやりとしつつ、桜田さんは僕の肩に手を置く。意外と熱っぽい、華奢な指先だ……あえてワイルドな風貌にしているのだろうが、そしてそれが非常にハマっているのだが、間近で見る桜田さんの顔は、シャープながらも女性の繊細さも醸し出しているわけで。
「あと親近感感じるんだぜ。オレの名前も……ミリア=ファ・桜田だしな」
言いつつ、かわいく、たはっとされても! ハーフなんですね。僕は精一杯クールに手を差し伸べるのが限界だった。室戸岬に、その名に喝采だ。
「……応援してるぜ。決勝まで突き進めよ!」
小麦色の顔を赤らめ、熱っぽい視線を送られても! その温かく柔らかな手に手を取られ、僕のテンションはオーバーヒート気味なわけで。オーバーヒート……オバヒト……オバヒぃぃぃぃ!