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ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
第二章:チャラ男殺し油の室戸
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#056:激烈な(あるいは、愛と欲望のテンプレート)


「『赤青カンで』の説明をするだニャン♪」


 どういう略し方? 抜き出すとまずい単語が含まれている気がするが、つっこんだら負けの世界だ。僕はすんでのところでぴんと伸ばしかけた右手を、左手で揉みほぐして落ち着かせた。


「持ち時間は各対局者『2分』ずつ! 通常と違って一手ごとの交代制ではありません。……だニャ……えーと、持ち時間の分だけDEPを次々と繰り出し、終了時点で『支持者』の一人でも多い方が勝ちとなります」


 だニャンを忘れがちになっている猫田ちゃんの説明だが、指し示した画面には、灰色の長方形がでんと横たわっている。


「灰色のバーはどちらも支持していない審査者の数を表しているだニャン♪ 対局が開始したら、審査者はいいね! と思った時点でその方のボタンにタッチします。その総数がバーの真ん中から左右に伸びていくわけです。こんな感じに……」


 灰色バーの中央から、左に赤、右に青のバーがじわじわと伸びていく。バーの横には「支持者」の数だろうか、赤「2,076」と青「1,890」と示されている。灰色の部分も残っているが、これは「ノーカウント」なんだろう。まあ早い話、一人一票の選挙みたいなもの、ではないかと思う。


「審査者は6,035名!! 灰色が半分以上とかで終わる塩対局だけはほんとに勘弁してね! それじゃあスタンバイ!」


 結構エグい忠告を挟んできた猫田ちゃんが、軽やかに対局開始準備を告げる。僕とパーカー少年はほぼ同時に対局シートに腰かけた。


「……だニャン!」


 それスタートの合図!? わかりにくい所で不足分を補わなくても! とつっこんでいる暇はない。右の肘掛には見慣れた<着手>のボタンとその下に<2:00>と残り時間が。対戦相手を見やると、既に戦闘態勢に入っているようだ。いやな予感がする。


「……俺みたいな高3でダメ張ってる腐れ野郎、他に、いますかっていねーか、はは」


 案の定が始まりやがったーっ。パーカー少年のつぶやきと共に、青色のバーが50、100と伸びていく。意外に展開早いぞ、これ!


「今日のクラスの会話……あの流行りのダメかっこいい とか あのダメさほしい とか ま、それが普通のダメ人間ですわな」


 野郎っテンプレがある分、すっすすっす繰り出してきやがる。青色がついに500まで到達してしまった。僕も何か言わないと! 普通のダメ人間って何だとか疑問に思ってたら、このまま持ってかれてしまう!ここは……


「……かたや自分はダメの砂漠でメイド服のおっさん達を見て 呟くんすわ it’a berrirlyantブリリアント 綴り間違ってる?それ、つっこんだら負けね」


 目には目を、テンプレにはテンプレを。パーカー少年が息を継いだのを見計らい、僕も負けじとぶっ込んでいく。やった、赤のバーも急上昇。パーカー少年の顔が歪む。言ったもん勝ちなのか? このルールは。いや考えている暇はもはや無い。


「「好きな音楽! 溜王国国歌!」」


 パーカー少年と僕の声が綺麗にハモってしまった。いやハモってどうする。


「「尊敬する人間!」」

「アオナギ ヨリヨシ七段!(傍観行為はNO)」

「カワミナミ ジュンさん!(ムエタイ行為はNO)」


 前者:パーカー少年、後者:僕で意見が割れる。後ろでアオナギ本人がどんな顔をしているかは怖くて見れないけど。


「「なんつってる間に2分切れっすよ(笑)あ〜あ、『赤青カンで』の辛いとこね、これ」」


 恐ろしいまでのシンクロ率で、僕とパーカー少年のDEPの打ち合いは終了した。画面を見る。結果は?結果はどうなったんだ?


<赤:2,922:青:3、007>


 !! ……負け……てしまった。やはり……やはり付け焼刃では本家に勝てなかった。呆然自失の体でぐらりと僕は体をシートに預け、放心してしまう。が、


「少年! まだ2秒残ってるぞ!」


 そこにかかるアオナギの声。怒ってはなさそうで良かった。そして僕は自分の残り時間がギリギリ尽きていないことを悟る。どうする? 2秒……2秒……


「……以上、室戸ミサキでしただニャン♪」


 苦し紛れにまたしても人様のネタをパクり、精一杯の可愛いげな声色でそう言った瞬間、赤のバーがズドンと、青も灰も飲み込むが如く、凄まじいスピードで伸びたのを僕は認識した。嗚呼……


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