#051:秀逸な(あるいは、聞きたいか?俺の靡憂伝)
「今日の審査者は……元老院5名、各1000ポイント!! 段位者30名、各500ポイント!! それ以外っ、なんと6000人っ! 各5ポイント! だから……えーと全部で50000点満点だよ!!」
実況少女セイナちゃんが審査ポイントの説明を始めているが、僕はもう細かいことは頭に入らなくなっている。落ち着け、50000点ってえらい点数だけど。
「持ち時間はそれぞれ2分! 切れたら負けだからねっ。さあ、ナンバー6っ、先手だよっ。対局ぅぅぅぅ、開始っ!!」
セイナちゃんがマイクを手に、対面のチャラ男にもう一方の手を勢いよく差し出す。瞬間、本物っぽいゴングの音がブース内に鳴り響いた。……始まったっ!もうやるしかない!
「ちょwww いきなりオレっすかwww えーと、ダメ話をすればいんだよね?」
チャラ男は長い脚をぞんざいに組んだまま、ふんぞり返って余裕の体だ。しかしその後ろの画面に表示された持ち時間は「1:45」を切ってるぞ。
「ま、一発でキメてやりますってのwww ではでは……『つきあってたコとこないだ道玄坂で飲んでたら、何か酒がやけに回って気づいたらホテルで爆睡してたwww しかも一緒にいたの知らない別の女のコだった』って、マジうけね?」
……相変わらずの、このDEPの難解さよ。このしょうもない武勇伝じみたものがどれだけの評価を得るのか? まったくもって分からない。チャラ男の残り時間が「1:32」でカウントを止め、その下に評価値が「集計中……」と表示されている。そして、
<先手、22,569pt>
どうなんだこの点数は? こちらの面々は渋い顔。周りからは良いのか悪いのか判断しづらい観客たちのどよめきが。カラフルな円グラフもその横に提示されるが、これは評価ポイントの内訳かな? ピンクがほとんど……90%くらい以上を占めていて、「一般」とその上に表示がある。
「先手スマッシュヒットぉぉっ!! 観客のみんなの点をうまく集めたって感じだねっ! 初手にしては結構秀逸ぅ、やるなお主っ」
セイナちゃんが黄色いベレー帽を揺らし、勢いある身振りでチャラ男を指差す。ピンク=一般観客の評価ってことか。赤と青の部分も細くあるはあるが、こちらが元老院と段位者の評価ということになるのだろう。元老院が何者なのかはさておき。
「てへwww ほめられちったー、いや、このくらい当然です、ってかwww」
チャラ男は片目を瞑って、実況少女に両手の指差しを返す。野郎っ! 調子くれてんじゃあないぞっ!!
「少年、熱くなるなよぉ。お前さんのその朴訥した喋りがよぉ、玄人衆には刺さるんだ。淡々といけ、淡々とフォーメーションアルファだ」
腕組みしたままのアオナギが、そうアドバイスめいた声を掛けてくるが、もうフォーメーション言うのはやめで良くない?
「後手番ナンバー19っ!! どう受ける? 手番だよ!!」
今度は僕の方に手のひらを向けて合図してくるセイナちゃん。ぐううう、どのDEPでいく?