表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
第一章:室戸とミサキの事情
25/244

#025:闊達な(あるいは、城吏町氏の華麗なる日常)


「さてと、ここに来た、本題に、入るとするが、ま、簡単に、言うと衣装をだな、つくってもらおうと、そういう、わけだ」


 緩い坂だが、アオナギは息を切らせ気味だ。ま、普段から運動してそうな感は全くないけど。


「そういうのやってる仲間がよぉ、この先に店構えてんのよ」


 丸男は息こそ上がってないが、汗だーだーだ。だから合皮はやめろと。


 東急ハンズの裏手から少し行ったあたり、急激に日が差さなくなった路地裏と言っていいところに、その店舗はあった。いや店舗か?かなり細い雑居ビルの内廊下を突っ切った最奥に、


「berrirlyant」


 黒い光沢のあるプレートに濃いピンクの筆記体が踊る。「ベリルリャン」とでも読むのか、何となくいかがわしさを感じさせる看板が掛かった扉を、アオナギは躊躇せずぐいと奥へと押し開けた。すると、


「あら〜ん、珍しい。アオちゃん、マルちゃん、どしたのよぉ」


 その店らしき所に足を踏み入れた瞬間、きついバラ系の香りがむわりと漂いまくってきた。表からはまるで予想つかなかったけど、かなり天井が高い。5〜6mくらいか? 壁に沿って張り巡らされた何本もの金属のパイプには、これでもかというくらい、色とりどりの服が吊るされていた。壁が布を重ねて出来ているみたいだ。


「やだ、だーれー? このかわいいコはー」


 そしてその吹き抜けの大きな空間の中央、服に取り囲まれてちょこんとあるガラス製のカウンターにしなだれかかっていた人物に、ものすごいつけまつ毛の下からロックオンされた。だがもう僕は数々の超個性人たちに出会っているので、このくらいのビジュアルではもう動じない。


「うちのホープだ。室戸っていう。今日来たのは他でもねえ、『溜王』で着る衣装を誂えてもらいてえのよ」


 アオナギがさくりと用件に入るが、ああ、やっぱりこの人もダメの人ね、と僕も薄々感づいていたことを、改めて頭の中で言語化してみる。


 地毛なのかヅラなのか、透き通るような白いおかっぱ。その下の顔面についてはあまり描写はしたくないが、エラの張った無駄に彫りの深い巨顔にはどぎついメイクが施されている。体は引き締まったかなりの長身。よせばいいのに肩幅をより際立たせるノースリーブのシルクっぽい質感のロングドレスを身につけている。夜会じゃねえんだぞ。


「ムロっちゃんね。よぉーこそ『ブリリアント』に。あたいはジョリー。このファッション最先端砦のオーナーよん」


 「brilliant」な。あと「あたい」は無いだろ。


「ん・で? どんな衣装を考えてるのぉん?作るっつっても、あと三日くらいしか無いんじゃないのよぉ」


 無駄な流し目と尖らせた唇。カワミナミさんのようなナチュラルさは微塵もない。あるのはコテコテの、女性は持ち得ない女性らしさ。つまりまあ、このジョリーという人は何というか、ま、身も蓋もない言い方をすれば、ステレオタイプの昭和のオカマだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ