#188:未開拓な(あるいは、テンパリンガーエックス)
そんな微妙な空気の中、
「皆様、ロボティック=マシーンに搭乗いたしましたねっ!! 先ほども申し上げましたが、その機械の動力は『DEP』……その評点になります。つまり、より評価を受けられたDEPを放てた対局者が! そのロボティックをより動かせる……つまり走らせたり、殴らせたり、が出来るというわけです。単純ですねっ!!」
猫田さんの説明が入るのだが、ことはそう単純ではないであろうことは、何回も身に染みて分かっているわけで。でもとりあえずはDEP。その評点が高いことに越したことはないだろう。
相手チームの黒いロボ達を見やる。「大」には背の高い方の薄毛、キサ=オーが搭乗、「中」には眼鏡をかけた若々しさを醸し出している横分けの薄毛、ギヨ=ヨの顔がその長方形の覗き窓みたいな隙間から、その妙に二度見をしたくなる特徴的な顔を晒している。
「……」
そして「小」のロボには、要注意とアオナギから念を押された14歳の少女、ミロちゃんが乗っている。おどおどしながらも精一杯自分に与えられた仕事をしようという決意がほの見えるその表情……健気さが半端ないだけに、相対する僕ら……いや、他の二人は特に気にしてないか……相対する僕は非常にやりにくいわけで。
「……今回の評価者も、一般のお客様10,000名様にお願いいたしますっ!! 各自『10pt』の持ち点がございますので、お好きに評価してくださいねっ」
つまりまた満点が「100,000pt」という分かりやすい評点というわけで、うん、それは分かりやすかったから、本戦でも採用されたんだろうなあ、と僕は一歩引いた感でそう思うわけで。
何だろう、この疲労感。さっき翼とやり合ってから、また急激に疲れが覆い被さってきたかのようだ。気合いを……気合いを入れなければならないのに!
「ではでは、早速対局開始と参りますよっ!! みなさん! 準備はいいですかぁーっ!!」
猫田さんの煽りに、球場を埋め尽くさんばかりの観客のみなさんのボルテージも上がってきたようだ。うおおおおおん、という歓声が場を満たす。
「着手順は、完全ランダム! それでは着手順スロットルぅぅぅぅ、スタート!!」
またもや説明なかったルールが後付けのように、それもさも普通に出されてくるけど、まあその辺はもはや慣れっこになってるから。僕はあくまで平常心を保ったまま、猫田さんが指し示したバックスタンドの巨大ディスプレイに目を向ける。
<1:キサ=オー
2:ギヨ=ヨ
3:トウドウ
4:アオナギ
5:ムロト
6:ミズマイ >
……なるほど、あまり作為は感じられないけど、まあ順番云々はあまり関係ないよね。ここは策もへったくれもなく、自分のマキシマムをぶっ込むのみ! 僕は目の前の事に集中することで、疲労を感じている全身の感覚を無理やりシャットアウトしようと試みる。よおし、やるぞ!!