#187:不使用な(あるいは、故障か?)
「……」
一通り、そのロボ達の外観を鑑賞したあとで、僕は自分が乗ることになる「小」ロボの方へとアクリル足場の上(透けて5mくらい下の人工芝が見える。結構怖い)をおっかなびっくり向かう。
「小」は「四角形」をモチーフにしたロボットのようだ。全高1mちょっとくらい。立方体の体に一回り小さな立方体が雪だるま式に乗っかったスタイル……胴体部からは鉄製のパイプのような「腕」が「く」の字に曲がって前方に構えられていて、その先には柔らかそうなスポンジっぽい質感の「拳」がくっつけられている。あまり攻撃力は高くなさそうだけど……そのロボットの背中側に付けられている「操縦席」と書かれた、上から倒れてくる形状のハッチを開けてみると、中には電動車椅子のような座席と、何本かのレバーが壁面から生えていた。
これで動かすのか? 正面はちょうど座った目の位置の部分が長方形にくりぬかれているだけだけど、その下には何やらそれらしきレーダーのようなものを映し出しているモニターまで完備されている。アニメでよく見るような正に操縦席といった趣きだった。これ絶対丸男とか喜びそう。
「……」
座席とその周辺にみっしり詰まった装置群たちで、操縦席は正に足の踏み場なし、のため、僕は座席の背もたれを乗り越えて、シートへと腰を下ろした。よく見ると床は無い。車椅子型の席に付けられた二つの車輪が、そのまま足場に接地している。そして車椅子部分に上から被さるようにして、鳥かごのような形の金属製の黒いフレームが覆い、これが車椅子の何か所かに固定されている。そのフレームの上から張りぼてのようなロボットのボディがさらに被せられていると、そういう構造のようだ。
「各自、『グリーンアイズ・スカウティング・グラシアス』を左耳に装着してください」
猫田さんがそう言ってくるけど、前の対局でほぼほぼ使わなかったあれね。フレームに無造作に引っかけられていたその緑色のレンズの片目だけの眼鏡のような……これまた描写に苦労する装置を言われた通り左耳にかける。キュインという音と共に、直角に自動で折れ曲がると、そのグリーン何とかという装置により、僕の視界は左だけ緑色に変わった。この自動さは正直要らない気もするけど、まあ逆らっても埒があかないので従うこととする。
<ムロト隊員、応答せよ>
と、左耳から丸男の声が。なるほどインカムみたいな機能もあるのね。はいはい感度良好です、と応えると、今度はアオナギの声が聞こえてくる。
<……チーム3人はお互い同時通話が出来るみてえだな。まだ全体は見えてこねえが、各自の位置取りが重要になってくるんじゃねえか?頼むぜ二人とも>
うーん、どうだろう。またしてもうまく活用されないとなったら、この大掛かりなセット自体、次戦からはオミットされてしまうような予感……この世界を司る者の為にも、出来る限りのことはしてみよう、と珍しく殊勝に思う僕だった。