#182:無感動な(あるいは、最先端天使)
グラウンドに再度出てきた僕らを出迎えたのは、時ならぬ拍手喝采だったわけで。オーディエンスたちには、僕らは結構受け入れられて人気らしきものも出てきたんですねーと、ありきたりな感想しか思い浮かばない。けど、まあ嬉しいは嬉しいです。
「……」
ダッグアウトから向かうのは、またしても内野側。パラマス式の二山トーナメントだと、交互に試合が来るから、おのずとそうなるんだよね……僕は、もはや懐かしさすら感じさせるその対局場へと歩を進める。
「アイアム……ニアン・ネコダ……」
そんな僕らを出迎えたのは、白地に青っぽい妙な色彩の、猫の着ぐるみだった。チェシャ猫のような憎たらしい顔をしている。中に入っているのは……まあ自己紹介通り、実況少女のひとり、猫田さんなんだろう。うん、まあこの辺はもう突っ込むのはやめよう。不毛だ。
「それではっ!! 決勝トーナメント第7試合っ、『チーム19 VS チーム7』! ……の対局を始めたいと思いますっ!!」
中身はやっぱり猫田さんだ。その声が高らかに響き渡り、本対局の開始を告げる。相手は……どんな奴らなんだ……っ!? またしても重低音のBGMが沸き起こり、華々しい紹介が始まる。
「まずは目に来るその眩しさっ!! まばゆさ纏って憎さ100倍っ!! 常時発動太陽拳っ! キサ=オー八段、光臨っだぁぁぁぁあぁっ!!」
猫田さんの煽りと共に、対局場の壇上に、一人の毛髪の乏しい中年が現れる。あまり特徴のない顔。眉毛を八の字に下げた半笑いで手を中途半端に掲げているけど、あれ? 何か弱そうな感じ……これいけるんじゃね?
「……少年、いま感じた油断はうっちゃっとけ。外見はともかく、野郎は痩せても枯れてもA級八段。真っ向からは当たりたくねえ相手が来ちまった」
僕の心を読んだかのように、アオナギ。ええー、あの人そんな猛者なんですかー? 全然そうは見えませんけどー、と思いかける僕だが、そうだ、ことダメ関係ではありえないことでは全然ない。僕は気を引き締めつつ、その光を燦燦と放出する前頭部からは微妙に目線を逸らしつつ、次の対局相手を見やる。
「お次はお次はっ!! これまた自然光を拡散するその前頭部っ!! プリーズギブミーロービームっ!! ギヨ=ヨ七段、であります!!」
今度は横分けと言っていいのか、微妙な一九分けの、頭髪量と反比例するか如く若さを醸した、黒縁メガネのよくわからない容姿の男がへこへこと出てくる。うーん、この人も凄いんだろうか。ダメを極めると、却ってその外見からは分からなくなってくるのだろうか、それすらも分からない(分かりたくもない)。