表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
最終章:倚界の中心でミサキを叫んだ室戸
159/244

#159:抽象な(あるいは、パブロ先生ごめんなさい)


「指名……ムロト」


 やはり。薄々予感はしていたものの、いざとなると少し体が反応してしまった。銀色の髪・そして銀色の瞳、表情はそれが正常かのように、抜け落ちている。


 ミリ×タリ×シスターズのミリィの方が、さも当然かのように、僕に戦いを仕掛けてきた。銀色のミリィはほぼ口を開いてなく、首に巻かれたチョーカーのような機械から、抑揚が少し人工的な、しかしほとんど実際の人間が出すのに近い音声が聞こえてくる。気の強そうな、女性の声だ。


「……」


 丸男が不安げに僕の方を見やってくるけど、力強く頷いて、大丈夫との意思表示をした。そう、もうやるしかないんだ。殴り合うしか、ない。


<3rd指名者:ミリィ:着手>


 ミリィは葉風院が被指名されたことにより、繰り上がりで実質は2番手の指名者だけど、便宜上、始めに指定された順番で進行していくようだ。来る。「難解なDEPで評価者を煙に撒く天賦の才」とかアオナギは言っていたけど。どういう使い手だというんだ……っ!?


「……私は子供の頃……ピカソのゲルニカってあるよな……あの壁画……馬の口の中から良くわからない角みたいなのが飛び出ているのを見て……なんていうか、その、下品なんだが……勃起しちまってな……」


 ……またシモ系の使い手だった。何故こうも畳み掛ける?何が「難解なDEP」だよ……っ! 「何が天賦の才」だよ……っ!! そして何でそんなキュビズムファッカーと僕は因縁がありそうなんだよ……っ!! 勘弁してくれよ……っ!!


<ミリィ:78,998pt>


 そして評点高ぃぃぃぃ。何で? これ、わからないよ。まずい、このままじゃ競り負けちゃう……頭の中がぐんぐる回りうねり始めて、収拾つかなくなりかけてしまう僕だけど、ちょっと待った。銀髪の放ったDEPに何かしらの違和感。ま、まあ内容が異質だったのは確かだったんだけど、その異質ゆえに、見過ごしかけていた事がある!


 「勃起」……改めてそうフィーチャーするとアレな単語だけど、これって普通男性に起こる事じゃないか? つまりミリィは……


<3rd被指名者:ムロト:着手>


 そんな事を考えている内に、自分の番手が。20秒の持ち時間のカウントが既に始まっているけど、それどころじゃなかった。


 「ムロトミサキ」という名前を知っていた事。その上でこのメイド服姿でメイクばっちりの僕を、「ムロトミサキ」と初めは認識出来なかった事。背丈・体つきが似ている事。僕が知っている姿かたちとは似ても似つかないけど、その眼光の鋭さだけは、小さい頃からずっと傍で見てきたから隠せない。


「……お前、つばさだろ……? 『宗谷そうや 翼』……」


 思わずぽつりと口をついて言葉が出てしまった。僕の、双子の兄。4年前に離れ離れになった、僕と、血の繋がった、たった一人のきょうだい。


 自分でもまだ半信半疑だったけど、僕がその名前を呼んだのを聞くなり、ミリィの目の下が一瞬、びくついたのを僕は見逃さなかった。そして僕は確信する。それも翼がよくやっていた仕草だったから。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ