#015:平坦な(あるいは、いまひとたびの)
結局。
「………」
ほどよい酔いと、どっと来た疲れを体中に帯びたまま、またも日付が変わる間際に散会となって帰路についた。
結局、「何とか計画」とやらについての詳細な説明はされなかった。されたのは3日後に渋谷のハチ公前に集まる旨のみ。こんなことばっかりで大丈夫だろうか。
「……」
とは言え、今まで何かに打ち込めることなんてまるで無かったこの僕に、何というか目指すものが出来たことは大きい。と思いたい。が、
「……そこの少年」
コンビニでも寄って帰ろうと思っていた矢先のことだった。煌々と灯りが照らす店内に入りかけようとしていた僕の背中に、誰かの声が掛かった。何だ?
「ちょっと話がしたい。そこのベンチででもどうだ?」
声の方に顔を向けると、スーツ姿の女性がいた。かなりの長身だ。160ちょっとの僕の目線よりだいぶ上。ヒール履いているのかも知れないけど、175cmくらいありそうだ。
細身のパンツスーツに包まれた脚はすらりと長い。髪は何というんだ、セミショート? ワイルドな感じに仕上がっている。それにしてもこういう風にいきなり声を掛けられることが最近多いな。
「なんでしょうか? もうちょっと早く帰りたい気分なんですが」
酔って朦朧とした口調の僕に、その女性は一瞬、値踏みするかの視線を投げてきた。
「なるほど? アオナギが入れ込むのもわかる」
男っぽい口調とその外観とが相まって男装の麗人感がするけど、相当きれいなヒトだ。そしてそんな人の口からあの変人の名前が出てきたことに僕は驚く。
「『溜王』に出るんだろう? あの二人と」
ポンとそんな単語が出てきたからには、この人も関係者か、ダメ関連の。はっきり言って、全然ダメと結びつかないぞ。むしろシゴト出来る系な感じだ。
「なぜそれを…」
そう聞くのがやっとな僕は、考える頭もそうだが、足元も覚束無い。
「5分ほど時間をくれないか、少年?そこに座っててくれ、コーヒーでも買って来る」
その長身ワイルドな女性は、僕をコンビニ外のベンチに座らせると、店内に姿を消した。何だ? いったい何が起こってるの最近?




