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ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
最終章:倚界の中心でミサキを叫んだ室戸
145/244

#145:終焉な(あるいは、終焉)


「自分がしでかしちまったダメをダメとして解放したとき、人はまた自分の人生に向かい合うことが出来る。戦うことが出来るようになる。ダメ人間コンテストは、その為の祭典だ」


 アオナギの自然体な、しかし熱を帯びた言葉は続く。


「誰だって勝ち続けることは出来ねえ。誰だって煮え湯を腹パンパンになるほど飲まされてる。そこで戦うことをやめちまうか、立ち上がって再び人生に挑むかは、そいつ次第。それが出来なくて苦しんでいる奴らを後押ししてやるのが、そして先陣切って自らダメの道標となるのが、俺らダメの段位者だと……勝手に思っている。元老のやつらだって元はそういう志があったはずだ。純粋に、ダメ人間達を枷から解放し、再び人生という修羅場に送り出す、その役割を果たしたいだけなんだろ? 俺は知ってる。今は踏み外しちまってるかもしれねえけどよぉ」


 誰に問いかけているのか、アオナギの声は会場の隅々にまで染み渡っていくかのようだ。タメイドは言葉もなく、その肩を、体を震わせている。


「人生が徒労だと? 空虚な時間だと? そうかもしれねえ。でもなあ、だからこそそんな人生をよぉ、馬鹿みてえに全力で燃やし尽くすんだ、自分のクソみたいな体験を、戻らねえ過去を、何もかもを巻き込んで灰も残らねえくらいに燃焼すれば、瞬間、光り輝くのさ。そうした後に残るのが何も無かったとしても、それはそれでいいじゃねえか。何も無いなら、何にも縛られねえ。自由になるってことじゃねえのか? 為井戸新四段」


 言いつつにやりとするアオナギ。そして、


「……ダメをダメとしてダメらしく。人間ひと人間ひととして人間ひとらしく。心にダメを愛する心がなけりゃあ……ダメ人間じゃねえのさ」


 アオナギの眼差しは、あくまで優しくタメイドに注がれていた。


<アオナギ:61489pt:チョキ>


 対局は終結した。いやそう言うと語弊があるかもだけど、とにかく戦いは終わったんだと、僕はそう感じていた。


「7,168ボルティック相当のチョキが、タメイド選手にブースト……」


 静寂が取り囲むような会場の中で、実況の桜田さんが、そう呟くように告げる。


「……貴様の」


 うつむいたタメイドから、呻くような声が漏れ出てくる。


「貴様の説教じみた詭弁など、うんざりだ。そうやって、くだらない、どうしようもないダメを正当化して、貴様は、何様のつもりだ……っ! 私を憐れむな。私を救おうとするな! 私の人生はクソだ。徒労で空虚なクソ人生だ! 貴様などに潔く負けを認めたりはしない。貴様などにあっさりと諭されたりはしない! くそったれたザマを……とくとみさらすがいい」


 その振り向けた顔には、疲労が色濃く浮き出ている。そして次の瞬間、タメイドはしんどそうにバーを両手で掴むと、腰を浮かせた。


「私はこれからもクソのように生き、クソみたいな金や名誉を掴んで、クソのように死ぬ。貴様の思い通りになど、ならんっ!!」


 タメイドを乗せた直方体の装置が滑り出す。自分から……飛び込んで決着をつける気か。


「……」


 アオナギはそれを力無く見送る。体が宙に投げ出される瞬間まで、タメイドは不敵な目つきのまま、その顔をにらみ続けたままだった。


「タメ……イド、戦闘不能! 以上をもって、チーム19の勝利とする」


 桜田さんが告げた瞬間、球場内にやっと音が戻ってきたように、客の歓声やら悲鳴やら怒号やらが降り落ちてきた。長かった戦いが、ようやく。


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