#134:友民な(あるいは、時を駆ける)
「着手順は、ファースト指名者→ファースト指名された者→セカンド指名者→……といったように進む!! かぶったら、より先の順に従ってくれ!! ちなみに、ご指名を貰えなかった哀れな売れ残り達は一回休みだ!!」
売れ残り……まあ売れ残りの方がいい側面もあるかも。マイナスが無いわけだし、DEPも温存出来るし。
いや待てよ、そんな悠長なことも言ってられない。ふと思い浮かんだことだけど、これチームのひとりでも欠けたら途端に厳しくなるんじゃないか? 「指名権」を得られる確率が50%から40%になるわけだし、集中攻撃を受ける可能性も高くなる。つまりこの初っ端がいちばん重要だったりするわけでは。
「一回休みでも、『属性カード』は消費される。そこらへんも駆け引きなところだ。留意してくれ」
桜田さんの例による後付けルールが付け加えられたところで、ディスプレイに丸男の名前と、それに付随するようにして「1st指名者」のタグが吹き出しの形で浮き出る。
「着手時間は最大20秒っ!! それを過ぎたら強制終了する。それでは着手開始っ!!」
遂に始まった。先手は丸男。お題は自由だそうだが、どう出る?
「ぼ、僕は女に『ゲランドの塩』を撒かれたことがあるんだな」
また塩シリーズかよ。「ゲランド」って何だ? と思ってこそっと調べてみたら、フランスにある塩田のことらしい。実在するのか。結構希少そうで、まあよく手に入れたね。そしてそれをよく撒かせたね。これ伝わる?
<トウドウ:32,301pt:グー>
まあまあ、半分くらい。普通人から見たら徒労とも愚行とも思える行為が、ここの客たちには割と評価されるのね。いや、そういや忘れてた、ここに観客として来ている時点で、普通人とは言えないだろうということを。そして属性もこのタイミングで明かされるわけね。それの説明も無かったけど、まあそれも平常運転だ、気にしない。それより次のチャラ男はどう出る?
<1st被指名者:ヤブ=シ:着手>
ディスプレイに二番手のチャラ男の元老ネームが表示された。組んでいた長い腕を解くと、長い髪をかきあげながら、チャラ男は口を開いた。
「付き合ってる女が多すぎてー、名前間違わねえか心配だよ、しかも最近の女どもはユナとかユウナとかユキナとか似すぎてて何だよ、徳川歴代の将軍かよ、とか思ってしまう貴方……俺はみんなを『子猫ちゃん』って呼んでるぜ?」
20世紀青年なのか、昭和から時を駆けてきたのか、その正体が定かで無くなってきたチャラ男の一手だったが、
<ヤブ=シ:35,247pt:グー>
上回られたっ……!! 属性は同じ、だから威力3,000くらいのグー(棒による打撃)が丸男に来るっ……!! 背後の阿修羅像くんの右手がしなり、丸男の臀部に何製かはわからない棒を打ち付けた。しかし丸男は余裕の表情。さすが。伊達に皮下脂肪という名のアーマーを身につけてはいない。
「もいっちょ来いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
そして甲高い声で威嚇。もう一丁食らったらあかんでしょ。でもこれくらいの評点差なら何とかいなせるってことかな?少しづつだけど状況は把握できてきた。そして次はタメイドだけど……どう来る?