#133:対峙な(あるいは、うぉんちっと)
「第一ピリオドっ、開始するっ!!」
桜田さんの雄々しい掛け声と共に、遂に決勝トーナメント第3試合、VSタメイドチーム戦が始まった。既に6名全員、装置へと着座完了。タメイド達-執事チームは、胸の前に渡されたバーに物憂げに寄っかかったり、片肘を付いて頬杖をついたりと、中腰の妙な姿勢の割にはスタイリッシュなポーズでキメている。対する僕らはきっちりバーを両手で掴んだ踏ん張りポーズだけど、大丈夫?
「各自、『属性カード』ぉぉぉっ……スロットインっ!!」
掴まる用(そして痛みを踏ん張る用)のバーの、その右手側に先ほど説明された「カード」を挿入するスリットの開いた「着手ボックス」が取り付けられている。そこにまずグーチョキパーのどれかを入れなければならないんだけど、どうする?
〔GGGG/CCCC/PP〕
バーに付けられた「カード挿し」には、上記のように僕の手札が並んでいる。迷った挙句、結局バランスよく3種があり、さらに極悪チョキの餌食にならないよう、相性悪のパーは少なめという布陣。
何というか普通というか、平均的に考えるとこうなるだろうというか、これ、逆に読まれやすいかも知れない。不安だ。
初手から仲間にサインを要求することもされることもないと思うので、僕は早々に自分で選んだグーを「ボックス」に挿し入れた。シュッと装置に吸い込まれる。警戒すべきはやっぱりチョキだとは思うけど、いきなり最初に持ってくることはないかな……いやいやその裏をかいて……などと、詮無い思考が頭をよぎるが……
「『属性カード』全員セット、オールグリーンっ!! ではっ、指名権抽選、スタートゥっ!!」
桜田さんが告げ、バックスタンドの特大ディスプレイの方を指し示す。そこには僕らの名前がそれぞれ区切られた四角い枠に収まっており、それらが混ぜ合わされるようにぐるぐると回転する。一瞬後、
「!!」
その渦から飛び出してきた名前がバン、バン、バンと派手に光って前面に表示された。
<PERIOD1:
1st:トウドウ
2nd:タメイド
3rd:ムロト>
あれ? これ指名権ある方が有利だと思ってたけど……僕らチームから二人選出のアドバンテージがいきなり与えられたわけで。何……でだ? 運営が間違ったか、本当に公正なのか、それとも何か罠があるのか。
「本対局のお題はオォゥフリィ……つまりなんでもOK。てめえの持てる最大のDEPでがっぷりの殴り合いを見せてくれよな。それではファースト:トウドウっ!!指名してくれっ」
お題は何でも可、なのか。それもまた公平だよなあ……いつもながら後付けのような細則が追加されていく形式だけど、それもフェアな感じだ。不気味なほどに。そんな逡巡中の僕を尻目に、
「指名……ヤブ=シ」
丸男が重々しい声でそうつぶやく。その相手はチャラ男ことヤブ=シだった。初戦の時も気に入らない風でしたもんねー。バーには手をかけず、ふんぞり返って腕組みをしている茶髪のロン毛が、ふん、と鼻から息を出す。
「指名、アオナギ七段」
!! ……タメイドもやはり因縁のある相手を選んだ。まあ僕にも因縁はおありでしょうが。ならば……
「指名、シバ=ンシ」
僕はまだ何者かわからない、副議長の肩書きを持つ三十男を指名した。シバ=ンシと紹介されたその男は、僕の方を軽く見やると、にやりと不敵な笑みを見せてくる。




