#012:円滑な(あるいは、倚界のしくみ教えてよ)
「相棒よぉ、今回の溜王に出てきそうな奴って誰よ? 予選で早々にA級とかB1に当たるのは勘弁って感じだぜぇ」
ひと息でジョッキを飲み干した丸男。少し小ぶりでお洒落なものとは言え、一気にいくなあ。先ほどまでがたがた震えていたくせに。
「倚戦の中では唯一のチーム戦だからな。当然『ミリタリシスターズ』は出てくるだろうが、後は読めねえ。誰と誰が組んでくるか? ま、俺らのようにあえて6組から決勝目指そうっていう酔狂はランク者にはいねえだろ。予選はアップと思えやいい。少年の初陣を俺らがバックアップする感じだ」
アオナギもそう説明しつつ、ぐいとジョッキを傾ける。
バーレストラン「レビーズ」は盛況で、僕ら3人は何とか空いてたカウンター席に並んで腰掛ける形となった。この並びだとお二方と顔を突き合わせなくていいので気楽で良い。
反面、面するかたちとなる厨房で立ち働くスタッフの人はちらちらとこちらを見て来るが、まあ気になりますよね。左隣に丸男、右にアオナギという鉄壁の陣を敷いている僕は、普通の人たちの目にどう写っていることだろう。
「『A級』っていうのはそんなに凄い人たちなんですか?」
何回かこの二人が口にしていた言葉だ。ランクがあるのかな? ダメ人間にも。
「要はこの世界のトップ10だ。毎年、閏位戦っていうガチの総当りリーグ戦があって、A、B1、B2、C1、C2の五つのクラスの上位者が昇級、下位者が降級するっていう、まあサッカーみたいな感じか。A級はその五つのリーグの中の最高峰で、頂点の10人だけがそこに在籍できる」
どうすごいんだ? ダメさが、ってことだろうとは思うけど。
「その上に君臨するのが『酩人』。この座を目指し、毎年一年に渡って幾多の倚士たちがしのぎを削るわけだ」
へぇぇぇぇ、としか言えない。僕は運ばれてきたおいしそうなソーセージにフォークを刺すことに集中する。