#114:匹敵な(あるいは、さくれつ!独語厨二技)
「『追っかけてたサッカー部のセンパイに思いっきりオーバーヘッドシュートみぞおちに埋まるくらいに食らったけどー、それが縁で付き合っちゃったっ』、てへっ」
……いやいやいや。相手キーパーかディフェンスくらいしかそんな超絶体験できないでしょ。しかし嘘発見装置は先刻より発動しない。ということは……真実。やらせだったとしても実際にそれをやったと。
そして恐ろしいのは、多分本意ではないだろう相手のセンパイと「付き合った」とこまで一貫して行なっていること。ただこのDEPを撃つだけのためだけに。何なのそのDEP作りにかける執念は。
<リポ=ッニ:20,392点>
そして評点が表示される。が、先のメゴちゃんの評点には届かなかった。舌打ちでもしそうな歪んだ表情のリポちゃん。キャラ忘れてない?いや、気にするな、次は僕の手番だ。どうするここは行くべきなのか?
「……」
……駄目だった。前の二人に勝てそうなDEPは持っていない。左手を掲げてパスを宣告するしかなかった。これであっさり3回分全てを使い切り。そしてこれまで……何も出来ていないじゃないか。何やってんだよ。
「……」
そんな僕をまるで虫がいるくらいの目で見て、親番のカオちゃんは大きく息を吸い込んだ。来る。強烈なDEPが来そうな予感……!!
「『追っかけてたインディアカ部のセンパイに思いっきりズィッヒシャイデンラッセン=スパイク人中に食らったけどー、それが縁で付き合っちゃった』、てへっ」
ど素人の僕だが、このカオちゃんのDEPがG難度であろうことは分かる。「インディアカ部」がまず無いし、技名+「人中」もやばいぞ。もうこの人達はプロフェッショナルだ。ダメのプロ。相対する僕は最早なす術なし。
<チマチ=カオ:28,872点>
そして表示される最高評点。ウィナーはかぶせにかぶせて来てそして前のを飲み込んだ、親のカオちゃんだった。にやり、と凄みすら感じさせる笑みを浮かべている。
「!!」
次の瞬間、4手目の勝者を告げる実況と共に、リポ、メゴの二人が1UPとなった。この両者はパス2でそこも同じ。カオちゃんはパス3使い切りで位置はニュートラル。僕はパス3の1UP状態でいちばん分が悪い。
でもそれより何より参加できてない感の方がきつい。このまま終わったらあの二人に申し訳が立たないよ。でも追い込まれたからには次こそやるしかない状況。何でもいい。DEPを撃つことだけはする。戦うんだ。
「はい第5手目だよ〜!! がんばって〜いっちゃって〜」
セイナちゃんの合図で親番を決めるルーレットが回転を始める。どうせまた僕以外の誰かでしょ、とさほど注目していなかったが、予想外のことが起きた。
<親番:ムロト>
ぼ……僕が親だって〜!? 運営しくじったか?