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ダメ×人×間×コン×テス×ト  作者: gaction9969
第一章:室戸とミサキの事情
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#011:意外な(あるいは、アオナギの過去)

 その後もDEPのネタになりそうなことをひと通りやってみた。けど、本当に意味あるかは不明。


 そうこうする内に、辺りは薄闇に包まれようとしていた。やってみて初めてわかったことだけど、ここ井の頭公園には様々なパフォーマーのみなさんがいて、我々が突飛なことをやっていても案外目立たない。どころか、ほぼ無視されていた。おそるべし。


「ま、やるだけのことはやったってことでよう、そろそろ飲みに繰り出すとしねえかい、相棒、室戸ちゃん」


 大して動いていないが汗だくの丸男が、地べたにぺたりと尻をつけながら言う。


「そうだな、今日は『レビーズ』に行くかね」


 アオナギが駅前のバーレストランの名前を挙げる。そしてしゃがみこんで煙草に火をつけると、そのままの姿勢でふかし始めた。


「ちょっと気になっていたんですけど」


 僕も結構疲れたので、その隣に腰を下ろす。下は土がむき出しだが、まあ構わない。この人らに付き合っていると、細かいことがどうでもよく感じられてくる。そしてこの際聞いてみることにした。


「お二方は、何でこの業界に入ろうと思ったんですか?」


 まあ聞くだけ無駄&野暮かも知れないけど。と思っていたら、意外なことをアオナギは語り始めた。


「入ろうと思って入ったわけじゃねえよーう」


 池の方に目をやりながら、ため息をつくようにアオナギはつぶやく。


「今でこそ自由を謳歌する一介の倚士きしだが、その昔は小さい商社で営業をやってた。金属系に強い……まあもう大手に吸収されちまったようだが」


 意外。ちなみに倚士きしとは、ダメを生業にする者のことだそうです。いらん知識とは思いますが。


「……どうやってもソリが合わなかった。客とも、上司とも。そして一回ダメのレッテルを貼られたら、もうそいつは会社人としてはおしまいよ。どうでもいい部署に回されたが、1年経つ前にやめちまった。その後も色々勤めてはみたものの、ダメだった。決定的に社会人として俺はダメだったんだ」


 言いつつアオナギはジャージのポケットから携帯灰皿を取り出すと、そこに吸殻を押し付け収めた。そういうとこは妙に常識人ですね。


「そんな時、この相棒に誘われたんだ。『天下を獲りやせんか』ってな」


 丸男がこちらを向いてウインクしつつ親指を立ててくる。ダメキャリアはアオナギが上かと思ってた。そして口調は昔から定まっていないな。


「最初の対局で俺は震えた。クソみたいな自分の過去をさらけ出しただけで、万雷の拍手が振って来やがった。金も名誉も振って来たんだ。そんなの信じられるか?予選を通過する勝ちが決まった時、俺は恥ずかしい話だが号泣しちまったよ。こんな世界も、こんな俺を受け入れてくれる世界もあるんだってな」


 何だろう、ちょっとグッと来る話だ。「恥ずかしい」「号泣」というワードで脳内検索すると、先だってのボイヤスでの丸男がヒットしてしまうけど。


「そろそろ行こうぜ、体冷えてきちまあよぅ」


 その丸男がぶるぶる体を震わせる仕草で立ち上がる。じゃあ着るもの持ってこいよ、とは思うが、何だろう、妙な間を避けようと気を遣った体なのかいやそんなこともないか!


 僕らはほうほうと駅前のレビーズに向かうのだった。

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