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7/12

ポイントの増やし方を意識しすぎると残念作品なのです☆

 汪真オウマくんが小説情報のページでむむむっ、と悩んでいます。

 そして妖精まっちーは今日も美しく焼きプリンを食べています。そのひとくちを運ぶ仕草から発せられる雰囲気は、彼女の心の発露のなせるワザなのでしょう。


「ば、馬鹿なっ……!? なめらかな食感の焼きプリンが、存在するだと……!? そんな……ありえないっ……! 焼いているのに、極上のなめらかさっ……! 熱を加えているのに、なめらかさが残っているなど、非常識すぎる……! これがプリンなのか……? 異次元すぎてめまいがする……! すなわち、ごくウマ……! つまり! 圧倒的、極みのプリン……ッッ! だがしかし……! ほろりと口の中でとける固めの食感も捨てがたくっ……! くッ、常識を超えた、非常識な2択……ッ! これはまさに、究極の選択っ……! 天使でありながら、悪魔の素顔を覗かせる……! まさに……プリン好きに対する残酷な布告……ッッ!」


 汪真オウマは、ざわめきながらプリンを食べる妖精まっちーに気をとられて悩むどころではありませんでした。


「何を悩んでいるんだよ」

「2個目のプリンの究極の選択なのですよ。いま食べ終わった新作が半端ハンパねぇー感じでしたので迷っているのです。1日2個と決めているので、最後の1個の選択が、まさにわたしの脳内で天使と悪魔が大戦争なのです☆」

「天使のプリンと悪魔のプリンってなんだよ……?」

「ぅうのぉぉわぁ――ッッ! 今日は黒が勝っちゃいました!?」

「あっ、戦い終わったんだ。悪魔が勝ったってこと?」

胡麻ごまプリンの勝ちです☆」

(天使と悪魔 どこいった!?)


 そそくさと妖精まっちーが冷蔵庫から胡麻ごまプリンを取り出しました。さすが妖精まっちーです。汪真オウマが買った覚えのない胡麻ごまプリンをさりげなく常備していました。準備がデキるイイ女なのです。


「んぐもぐもむ……。で、今日は何を悩んでいるのですか?」

「ポイントがついた。『文章評価:3点』と『ストーリー評価:3点』だってさ」

「へえ、いいんじゃないですか?」

「これって、どうしたら点数が上がるかな? これ、5点満点だから最高で10ポイントだろ? お気に入り登録1件よりも点数が高いから、できれば高得点が欲しい」

「う~ん。上手になるには気にしなくてもいい気がしますが……。まあ、教えましょうか」


 妖精まっちー胡麻ごまプリンを食べるのを止めないでモグモグしながら説明していきます。


「ポイントの付け方を説明しましょう。まずは『文章評価』です。これって、何を指していると思いますか?」

「文章のテクニックじゃないのか? 名文みたいな味のある文章を書けたら5点とか?」

「違います。ぶっちゃけるとここは、テクニックは必要ありません。逆に言うなら、これって上手とか下手とかあまり関係が無い評価なのです。調べてみると、さすがに『1点』なら問題ある文章でしたが、『4点』とか『5点』の作品を見比べてみましたが体感的にテクニックには遜色が無かったりしました」

「じゃあ、なんだよ?」

「誤字脱字です☆」

「それと?」

「誤字脱字 だけ です☆」

「本当?」

「マジです☆」


 汪真オウマは驚きのあまりに言葉を失いました。妖精まっちーが穏やかな顔をしてなだめます。ウソです。ゲス顔をして小馬鹿にしました。


「まあ先ほど言ったテクニック的な意味での美術点で付ける人も勿論いますよ。でも! ここはアマチュアの巣窟だというのを忘れないでください。まっちー的な感覚演算によると99%がアマチュアなのです。だからオレは評価ができるぜ☆ と自信を持っているわけないのですよ。ある程度の上手さは必要ですが、文章の基礎が出来ているなら『5点』で、あとは誤字脱字ごとの減点方式で決まっています」

「えっ、本当に?」

「むしろそれ以外はどうやって決めますか?」

「心に響いた言葉セリフだとか?」

「それ、『ストーリー評価』との違いがありますか? ストーリーの流れで引き立つ部分ですよね?」

「う~ん。分からなくなってきた。どうなんだろう?」

「ここって素人のわたし達も点数が付けられるじゃないですか。崇高すうこうな点数じゃなくて、もっとジャンクな次元のお話なのですよ。もちろん全員じゃありませんよ。感覚的にこういう人が多かったなという話です」


 つまり、文章評価は読み辛さを評価している減点方式だったのです。誤字脱字や、改行、地の文章の文字数が足りなくて目が横滑りする文章などが減点対象になるようでした。


「本当に表現で加点はされないの?」

「ここぞという時に詩的な表現が出来ていたなら加点されそうですが、夢中で読んでいる人はポイント評価する項目がある最終話の頃には忘れているようですね。なので最終話になってもありありと思い出せるような本当に感動する詩的描写を書いてやっと加点対象になるかならないかといった程度みたいです。結局は、読み心地という意味での見やすさの項目なのですよ」

「あー。うん。そうなんだ……」

「では、次はストーリー評価に行きましょう!」


 衝撃的な内容に混乱している汪真オウマを大人の余裕で流しながら、妖精まっちーは続けていきます。


「これは狙って取るのが難しいかもしれませんね。まずは、問題を出しましょう。最後まで書いていないのに『ストーリー評価』をされることがありますよね。じゃあ、基準があるはずです。何でしょうか?」


 汪真オウマは考えます。そもそもエンディングが分からないのにどうして『ストーリー評価』ができるのでしょうか。終わりが分からないなら、何が伏線になっているのかも分からず正常に判断できないはずでしょう。どうしてなのかさっぱりでした。


「降参だ。答えは?」

「正解は……『ストーリー評価』は竜頭蛇尾なのです」

「最初の印象が左右するってことか?」

「だって終わりが分からないのに物語を評価するんですよね。となると、最初のインパクトくらいしか強く残るシーンって無いのですよ。なので、竜頭蛇尾が最適なのです」

「でも、最後に評価のボタンがあるだろ? なら、最後のページの印象も強いはずだ」

「良いところに目がいきましたね。実はストーリー評価はどれだけ心に響いたかで判断されているようなのです。気付いたとおりで、あとをひく余韻というものも大事です」

「なかなか難しい話だな……」

「いわゆる印象の話ですので、第一印象であるスタートのインパクトと、最後の印象である最新話の質がかなり関わっているようですね。読める程度なら3で、続きが読みたくなるものだったなら5を付けているみたいです」

「じゃあ、逆に言うなら、評価をされた最新話の印象が分かるのかも」

「その通りです☆ その最新話をワクワクさせるためには、前の話で伏線を掘り起されている形にしないといけないので、設定が大切になるわけです。人情を訴えるものでしたら、ライバルとの因縁だとか、ラブコメディ形式でしたら好きなキャラとイチャイチャする甘い話だとか、最新話が何をアピールしたかったのかをどれだけ評価されたかが分かるわけですね」


 汪真オウマ妖精まっちーの言葉を噛み締めるように考えます。


「疑問に思ったけど、これって面白い小説の指標になるの? 各話の終わりを余韻がでるような書き方をして……でも、続きが読みたいなら名作なのか? でも、評価されたいなら伏線をすぐに掘り返す必要があるわけで。余韻もつくりながらとなると、あれ……?」

「何を混乱しているのでしょう? 伏線はちゃんとしたタイミングでやるからキマってステキなのですよ。あと、変なタイミングに変な余韻を持たせても、小説の面白さはアップするはず無いじゃないですか☆ スピード感が必要なシーンなのに文字量的に次話にする必要があるなら、余韻が無いほうが面白いシーンになるはずです。そもそも、物語の起承転結で全部が余韻を出せますか? 1話ごとずつですよ?」

「じゃあ、ここの点数って……」

「最低限の指標くらいにしかなりませんね。さすがに1点がたくさんなら残念作品っぽいですが」

「4点とか5点の差は?」

「読んだ人の感性の差と、終わりの余韻なので運の要素が絡んでいますね」

「じゃあ意識できるはずないじゃないか! 無理じゃないか! とにかく、良作を探すなら4以上みたいな感じで探せばいいのかな?」

「ところがドッコイ! 人間は甘くないのですよ☆」


 妖精まっちーがプラスチックスプーンを持ってピシッと決めます。さすが妖精まっちーです。カッコイイポーズに威厳があってイケイケ☆です。


「自身にとって唯一無二の最高傑作はありませんか? こだわりが強い人なら、最高点の5点は最高傑作専用の永久欠番の点数なのです。なので、実質的に4点満点なヤツもいるのです☆」

「じゃあ、4点満点で逆算して考えればいいのか」

「さらに! 市販の作品もとい、プロの本も見てる方もこのサイトは利用できます。なら、永久欠番を5点で、プロの傑作を4点満点で基準にして人間もいるのです! そんなの相手にされたら、ちょっと書いている系の人の点数は皆まで言わずもがなですよね」

「平等にひとつの作品として見てるタイプか。人によって基準がバラバラなんだな」

「さらに さらに! ストレス解消に とりあえず1点を付けまくる愉快犯もいます!」

「うわ……。こっちは命がけで書いているのに……」

「捨てアカウントのペンネームなんて、あって無いようなものですからね。消されるのを覚悟でガンガン攻撃してくるときもありますよ☆」

「なんだか分からなくなってきた。点数って何だろう……」

「もちろん、こうした攻撃は少数派です。平均点って言うのは誤差も含めた点数ですので、アブノーマルな点数はそのうち埋もれていきます。なので、目安としては複数の点数が付いていて、平均が3点以上ならあなたの作品は良作だと感じられているってことなのですよ」


 汪真オウマはあまりの生々しい内容に唖然としました。


「こうして考えてみると、点数って気にしすぎると創作の邪魔になったり、毒にもなりそうだな……」

「面白い作品を書くのが目的なら、その場だけの点数を狙わないほうが良いってことです。点数が高ければ面白がられたという証拠ですので、意味はありますよ」

「でも、運が絡むんだよな?」

「構成要素の100パーセントが偶然的でもないのですよ。とりあえず、誤字脱字と、最初のインパクトをしっかりとしてみてください。それで3点以上が入ったら、ちゃんと書けていると評価されている指標だからラッキーくらいの気楽さが良いと思いますね☆」



◇◇◇



 『まっちーの助言⑦』

 誤字脱字で文章評価がそこそこ決まる。最初のインパクトでストーリー評価がけっこう決まる。




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