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自分を自覚しないから めげて自滅するのです☆

 汪真オウマくんが小説投稿サイトを見てうんうんと唸っています。それを妖精まっちーが焼きプリンを食べながら見守っています。


「どうしたのですか? うんうん唸ってウザいですよ。ウザいキャラになるなら、もっと駄目人間にならないとキャラのパンチが弱いですよ。もしも、悩んでいるイコール博識ぶっているつもりでインテリ系のウザいキャラを狙っているなら、わたしとかぶるので即刻にやめてもらえますか? 偉い人(さくしゃ)に頼んで抹消してもらいますよ」


 妖精まっちーはとても心が優しい妖精なので汪真オウマのことを心配して声をかけてあげました。さすが妖精まっちーです。さりげない気配りができるエリート妖精です。


「少しくらい心配してくれてもいいじゃないかよ。お気に入り登録の数で悩んでいるんだよ」

「悩んでも登録数なんて上がらないでしょう。書かないとレベルアップしないのに、何をインテリぶってるんですか? 村人職の人間風情が、ちょっと考えたくらいで勇者も賢者もビックリな大逆転アイディアなんか出せるはずないじゃないですか。幼稚園児でも分かることですよ?」


 お気に入り登録数をあまり気にしないようにと、妖精まっちーほがらかに諭しました。そして、優雅に焼きプリンを食べました。妖精まっちーはお上品ですので、食べているその姿がむさぼり食っているように見えたのはあなたの気のせいです。おそらく……。


「もぐむぐ……。ちなみに何と比べているのですか? 後輩に追い抜かれたとか?」

「そんなのじゃないけど……」

「じゃあ、アレですか? 自分よりも3週間前に早く投稿した、いわば ほぼ同級生の人の作品が気付いたら書籍化していて、さらにいつの間にかアニメ化して、ハマってたソシャゲーとコラボされて驚いて、自分の才能の無さを見せつけられているようでウツになったりしたんですか? しかも、初期の頃は自分の方がお気に入り登録数が上だったのに、いつの間にか追い抜かされた感じですか?」

「そういう訳じゃないけど、というか酷く具体的すぎない?」

「じゃあ、なんですか? ハッキリしてくださいよ、面倒くさいですねぇ」


 妖精は汪真オウマの言葉を優しく促します。


「俺の好きな作家さんのお気に入り登録数が80,000件で、俺の作品のお気に入り登録数が15件なんだ。少な過ぎて泣きたくなる」

「馬鹿なのですか? 阿保あほなのですか? トップランカーと比べたら無理ゲーでしかないですよ。ちょっとその作品を見せてください。あーあ、これアニメ化してるじゃないですか。宣伝力が違うんですから、規模がケタ3つ以上は違いますよ。無名作者の無名作品と、書籍化したとかで面白さが保証されている作品と比べたら明らかに負けるじゃないですか? それすらも分からないのですか?」


 妖精まっちーの愛のある助言に、汪真オウマは憂鬱に答えました。


「こんなに書いているのに、誰も見向きもしないんだよ。自分って何のために書いているのか分からなくなってきたんだ」

「はぁ……? 自分のためじゃないですか?」

「はじめは自分の満足だったけど、お気に入り登録数が増えて楽しくて、みんなに読んでもらえて嬉しかったんだ。だから、自分のために書いていたけど、みんなが読んでくれたらそれだけで嬉しくて、だからみんなが楽しめるように上手になりたいと思ったのに、全然上手になれなくて……」


 汪真オウマがぽつぽつと語りはじめていきました。妖精まっちーは真摯に耳を傾けて、焼きプリンを食べる手を止めました。

 えっ? 妖精まっちーが、汪真オウマの話をテキトーに聞き流しながらプリンを食べる手を止めてないように見えましたか? 違いますよ。そう見えたあなたは、きっと疲れているのでしょう。


「んぐむぐ……。ふぅ……。 ん? 自分語りはもう終わりましたか? 意外と短かったので、むしろ中身の無さに驚きました☆」

「おい、真面目に話したんだぞ……!」


 胸の内を語った汪真オウマは激怒しました。それに対して妖精まっちーは悟ったように助言を言いました。


「めげるのは上を見過ぎているからです。ぶっちゃけると、本当の自分を見ることを拒否しているからなのですよ、この駄目人間めっ☆」


 妖精まっちーは心からの優しい言葉を汪真に投げかけておさめました。


「駄目人間って言うなよ。それが真実なのかは置いて、いや、まあ……辛いから嫌なんだよ。お気に入り登録数100件くらいはいけると思っていたからすごく悲しい」

「100件以上はジャンルによりますが、ファンタジーだとだいたい中堅ランクの内で上位くらいだと思いますよ。初心者で15件ってかなり良い方なのです」


 妖精まっちーがちょっと真面目な顔つきになりました。汪真オウマは知っています。この顔をするときは、本当にちゃんと教えてくれる時なのです。


「ちょっと調べると分かりますが、お気に入り登録数が0件の小説って全体の中のどれくらいあると思いますか?」

「さぁ、いくつだろう? 調べた事はないや。1割くらいか?」

「違います。5~6割らしいのですよ。なので1件以上あれば偏差値的には50を超えています。あっ、偏差値って分かりますか?」

「なんとなく分かるけど、できれば正確に教えてほしい。ここで変な間違えをして勘違いをしたら元も無いから」

「良い心がけですね。じゃあ、教えましょう」


 偏差値について妖精まっちーが説明していきます。偏差値とは試験テストで例えるなら全体の中の立ち位置(ポジション)を表しています。例えばあなたの偏差値が60なら、100点満点のテストで平均点が50点の時に、あなたは60点を取れる立ち位置というわけです。


「お気に入りユーザー同士の互助でかろうじて0件じゃない人もいることを考えると、コネ無しで0件以上は平均よりも上手だと思った方が良いですよ」

「う~ん。それを聞くと このお気に入り登録数でもいいかと思えるけど、でも、なんだかなぁ……」


 やれやれと妖精まっちーが肩を上げました。妖精まっちーが実例を出すと言いました。


「まずは本当の才能の立ち位置の探し方を教えましょうか。このサイトの正しい使い方を教えますよ」


 妖精まっちーは、とある小説にアクセスしました。


「例えばコレがいいですね。『種なる正義が咲かせるもの』って作品です。うちの義姉あねが出演している作品なのですよ☆ セルフでコラボってやりましょう!」

「おまえ、いったい何を言ってるんだ……?」

「気にしたら負けなのです☆」


 妖精まっちーは、混乱している汪真オウマをなだめながら話を続けます。


「では、実例の話です。この小説のお気に入り登録の数は何件でしょうか?」

「294件 だな。悪くはないけど、少ないな。1000件は欲しい。たぶん、つまらない小説かもしれない」

「他人の事だから刺すように言いますね。さて、『ファンタジー』のジャンルだと探すには量が多いので面倒です。ダンジョンモノの小説ですので『ダンジョン』で検索しましょう。ダンジョンモノの小説の中で、お気に入り登録数は上から何番目でしょうか?」

「え~と、お気に入り登録数の順番で検索すると上から466番目に出たから、466位だ。ダンジョンの小説は今は3700件あるから……あれ? けっこう順位は高いのか?」

「上位から10%~15%の間です。簡易に計算してみると偏差値80くらいなので、勉強で例えるなら東大に挑戦できるレベルですよ。特徴のある書き方をする作家なので好みの差が出やすいタイプですが、ハマる人にとってはクソ面白いレベルです」


 お気に入り登録数が294件でこのレベルなのかと汪真オウマ戦慄せんりつしました。本気ガチで驚いて本当に言葉を失いました。


「順位とお気に入り登録数の関係をグラフにすると、お気に入り登録数の序列はガケ状態でインフレをしています。なので、あまり気にしない方が良いのです。ぶっちゃけ、0件よりも多いなら、半分よりも上なので誇りを持っていいと思うのですよ。ユーザー同士の互助のコネ無しで10件以上あったなら、もう小説を書くのが上手だとひっそりと思っても良いレベルですね」

「分かったけど、実際に数字で出ていると心にくるよなぁ……」

「それは、プロと数字を見ているからなのです。最終的に上手になりたいと思っているなら、大事にしなければいけないのは自分の成長速度なのですよ☆」


 妖精が優雅に言葉を結びました。


「いま目標ラスボスを倒せるのかじゃなくて、将来的に目標ラスボス達成できるかたおせるのかが重要なのです。なので、大事なのは成長速度。成長速度を速めていくために何をするべきかを考えていれば、だんだんとお気に入り登録数は気にならなくなりますよ。だって、お気に入り登録数はがけなので、参考ならないですからね☆」



◇◇◇



 『まっちーの助言④』

 お気に入り登録数でなく、自分の成長速度を気にしよう。



※この資料は2016年 12月5日に書いたもので、時期によっては細かい数字が変化している可能性があります。数字の部分は目安として参考にしてください。

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