三日坊主になるからゴミ人間から成長できないのです☆
汪真くんは気合いを込めて小説を書いています。
「へぇ、スラスラ書けているじゃないですか。今日はいつまで書き続ける気ですか?」
「眠くなるまで書き続けるつもり」
「ありゃま。それは大変ですねえ。気合いを込めて三日坊主に全速前進していて、笑い死にそうなんですけど。あははははっ!」
妖精は笑って汪真のことを見守っています。嘲笑っているわけではありません。きっと……。
「そんなに笑うなよ。一生懸命頑張ることがおかしいことなのか?」
「それを答える前に、もしかして朝も書いちゃうんですか?」
「ああ、朝はいつもよりも20分早く起きて、執筆の時間についやすつもりだ」
「きゃっほぅ! 三日坊主シナリオのフラグが確定なのです☆ それで身につかなかったことは何度ありましたか? いっぱいあるのに次こそはって信じているんですか? 根拠が無い自信がこっけいで仕方ないですね! いい加減に目を覚ましてくださいよぉ。ボクは自分を信じるんだゼ☆ とか、いつまでアニメちっくな幻想を見ているつもりですか?」
「うるさいな! アレか? 最初からそんなに全力だと三日坊主になるとか言うつもりなのか?」
「最初から全力じゃなくても三日坊主になりそうだから笑っているのですよ☆」
妖精は心の底からの笑顔で祝福しながら汪真を諭します。それがニタニタした笑顔に見えるのはあなたの錯覚です。
「最初から新しい習慣をいきなり身につけるなんて大事でも小事でも無理なんですよ、お馬鹿さんっ☆ 人間には恒常性維持機能という機能がありまして、一定の習慣を続けるオート機能があるのです。これは人間が野生動物だった頃の名残りでして、血圧だったり、体温だったりの生理作用が有名ですが、いつもと違う状態イコール危険な状態だと体が反応して元に戻ろうとする作用があるのです。だから新しいものが習慣になるのは難しいのですよ☆」
「だから、維持して習慣になるように今から始めたんじゃないか。いきなり否定するなよな」
妖精はニッコリと笑ってあやすように言いました。
「新しい習慣はとても大変なのですよ。今やっている週間に早起きとか、夜更かしとかをプラスした習慣を行うとガタが来ます。体が大変になってきたときに恒常性維持機能が発動でこれが3日目くらいなのです。その恒常性維持機能によって、ガタがきた原因で、なおかつまだ定着していない執筆の習慣が削れることになるのです。これが三日坊主に繋がるわけなのですよ」
「慣れていなくて大変なものからやらなくなっていくから三日坊主になると言うわけか」
汪真は心当たりがあり、妖精の言葉を心のうちで反芻しました。例えば歯磨きや風呂などの習慣は面倒だと思うことがあっても習慣化しているのでなんとなく続けていけます。しかし、筋トレだったり、勉強だったり、新しい習慣を取り入れるのは何度も失敗してきたからです。
「ちゃんと理解できるじゃないですか。ぶっちゃけ、条件さえ整えばなんて言ってるようじゃ基本的にクズ人間の仲間入りなのです☆ 自分は習慣づけすらできないゴミ人間だと自覚した上で、どうやって習慣づけようかと悩まないと永遠にクズ人間のループにはまってしまうのですよ」
妖精は、習慣化を簡単だと思う人と、習慣化を難しいと思う人の違いを力説しました。
「じゃあ、肝心の習慣づけるのはどうするんだよ? 永遠にループして人間は変わらないとか言い出すのか?」
「いいえ。逆に言えば、恒常性維持機能に小説の習慣を乗せることができれば解決するのです。つまり、1ヶ月くらい根性で頑張って習慣化するといいのですよ☆」
「よっしゃ、期限が決まっているなら頑張れるぞ! 俺ならできる!」
やる気を燃え上がらせる汪真ですが、妖精はヤレヤレと頬をほころばせました。
「まったく、ここまで言っても分かりませんか? 頭にゆとりがある人ですね。やる気なんて次元で解決できない人が多いから三日坊主なんて言葉があるんですよ。自分だけが違うとか本気で思ってるんですか? 選ばれし者だとか? プププッ!」
妖精は笑顔でそう言いました。
「どういう意味なんだよ」
「あなたの例をそのまま挙げると、夜更かしで執筆するのは新しく『夜更かしする』と『執筆する』の2つの習慣を今までの習慣に追加することになっちゃいます。もともと持っていた24時間を使うペースの変更を、体で無理をすることで補っているわけですから習慣づかないのは当然なのです」
「でも……そこは、気合いで!」
「うわー。また選ばれし者な発言ですね☆ 根性論で最強になれるのは漫画のキャラだけですよ。一般の人はできないから困っているのに、困っていること自体に気付いていないなんて呆れ返って何も言えませんね。だからクズ人間から抜け出せないんですよ」
「そこまで言うなら何か方法はあるのか?」
汪真は妖精にアドバイスをお願いしました。わりと真剣に言いました。
「好きな物の時間を削ってみると効果的です」
「……ストレスがたまらないか?」
妖精は汪真に無茶振りをしました。
「びっくりするかもしれませんが、むしろスッキリするものなのですよ。例えば、惰性で見ているテレビ番組はありませんか? なんとなくで見ているユーチューバーの番組はありませんか? ニコニコする動画をなんとなく見ていませんか? 飽きてきたソーシャルゲームはありませんか? ダラダラとメールをしていませんか? 意外と時間を削っている習慣がありますので、それを執筆と置き換えるとスムーズに習慣入りできるわけです」
元々ある習慣を利用して、手取り早く習慣づける方法を妖精が教授していきました。
「でも、周りとの会話で遅れたくないし……」
「優先順位を決めろと言っているのですよ。たとえばテレビなんかそうで、チラリとテレビ欄を見て面白そうだと思ったら見ても良いと思います。でも、なんだかなぁと惰性で見そうなら、きっとそれはつまらないので見ないで執筆してしまえばいいのです。今までの習慣と、新しい習慣の執筆と比べあって、執筆を優先していけば解決する問題なのです。そういった流れを何度も行っていけば習慣性の中に執筆も入っていくのです」
「どこまで昔の習慣を削れるかは置いといて、執筆する時間のスペースを作っていくということなんだな」
「いらない習慣はポイッと捨ててしまうのが正義なのです☆ 自分の時間を整理して『断捨離』をしていきましょう!」
自分の持っている時間を見直していくことの大切さを妖精は語りました。
「もちろん、これ以外にも方法はありますよ。他には『一緒にやる』という方法があります。車での移動中にアイディアを練ったり、電車での移動中もそうですね。今の世の中ではスマホがありますので、その気になればどこでも執筆も出来ます。頭の考えるスペースが空いている時間を見つけてやってみると良いかもしれませんね」
「そうやって、無理なく習慣化させる意識が大事なんだな」
◇◇◇
『まっちーの助言③』
習慣にする工夫を考えてみよう。